幼い少年だったぼくは、100円玉を汗で濡れるほど握りしめていたね。
わかりますか、子どもの100円の価値が。
下手したら一週間のお小遣いとかですよ。お菓子買って食べる、コレクションに費やす、貯金する……色々できる貴重すぎる100円玉です。
その100円玉をですね、「ドルアーガの塔」の筐体に入れる瞬間の興奮。

未来を感じさせる機械音、心踊るカラーの画面、自分の思ったように操作が出来るという快感。
興奮しすぎて操作間違えてすぐ死ぬし、さっぱり攻略方法もわからないんだ。けれど、あえて100円玉の使い道として「ドルアーガの塔」を選択した自分は、間違ってなかったと思う。

縦型の筐体で、子供用にビールケースひっくり返したのがあって、そこに登って遊んだんだよ、背が小さいから。テーブル型のはなんかおっかないお兄さん(今思うとあれはハイスコア狙いで必死だったんだよ。「ギャラガ」とか「マッピー」とか)がいたので近寄れませんでしたが、それもいい思い出。そもそもゲーセンが特別に入りづらい空間で、筐体は触れるのが怖いくらい特別な存在だった。
今ならがんばって稼げばゲーセンで遊ぶなんて簡単なわけですが、違うよ重みが。
こういう経験をしている人ってだいたい今三十路から四十路だと思うんだ。


そんな、大人になったゲーム少年・少女におすすめしたいのが「僕らのナムコ80‘sトリビュートコミック」です。題名だけでワクワクするでしょう!?
えっ、ナムコだけ?アイレムは?タイトーは? はい、ナムコだけです。しかも鉄拳とかテイルズとかアイマスの今のナムコじゃなく、80年代から90年初頭のナムコ。

改めて思い出すと、ゲームセンターや駄菓子屋やスーパー、喫茶店に置いてあった80年代アーケードゲームってナムコめちゃくちゃ多いんですよね。「パックマン」「ゼビウス」「ディグダグ」「ドラゴンバスター」「ワルキューレの伝説」「妖怪道中記」……すべてナムコです。
これらを、リアルタイムで経験した作家さん達が情念こめてマンガにしているんだもの。
開いた瞬間溢れ出る「オレの握った100円玉が火を噴くぜ」感。少年時代が蘇ってきて血が沸騰しそうだよ!
ナムコのゲームの中身をネタにした作品、プレイしていた当時を回顧する作品、プレイしながらゲームのキャラと一体化している作品と、様々な角度からナムコゲーム愛を描き上げたマンガがぎっちり詰まっています。
描いている作家ラインナップを聞けば、納得していただけるはず。『大東京トイボックス』でゲーム作りに魂をかける人々を熱く描いているうめ(参考記事)が巻頭を飾っています。
他にも、ゲームにかけた青春マンガ『ピコピコ少年』を描いた押切蓮介、今はなき「ゲーメスト」で連載をしていた道満晴明に雑君保プ。わかる人ならわかるこのラインナップ。
わからない人にはさっぱりわからないかもしれないけど、80年代の空気は伝わるはず!多分!
今となってはすっかりおしゃれなアミューズメントスポット化していますが、かつてゲーセンは不良のたまり場というイメージが強かったのです。入るのも勇気がいるし、プレイするお金もそんなにないし。薄暗くて、なんかみんなギラギラしていて。
だけど近未来的ピコピコ音と、命を懸けるかのごとく画面に集中しながら神経を尖らせ戦うかっこよさにぼくは憧れていました。
このノスタルジックな世界を味合わせてくれて本当にありがとう。今となってはゆるいゲームをコンティニューしまくって遊んでいますが、あの頃まさに「極める」ために必死になっていたんだったよ。


30年経った今。
画面は3Dになったり、声もふんだんに使われるようになったり、なめらかで親切設計が当たり前だったりする時代になりました。いいことです。昔のように超難易度のゲームを何度もやって極める必要もなくなりました。
しかし、やりこみゲーでハイスコアを狙うのは、全く別の楽しさがあるんだな。
たしかにおっさんの郷愁かもしれない。
でも郷愁、味わいたいんだよ。80年代なんて知らないよ!という若い人も、このトリビュートコミックを読んで、wiiのバーチャルコンソールなどでレトロナムコゲーをプレイしてみて欲しいんだ。
(たまごまご)