有名な観光地のかつての姿でもよし、「今立派なビルがあるこの場所は以前こんなのが建ってた」とかでもよし、別に何の場所でもないけど大昔に記念撮影したときの写真でもよし。とにかく古い写真をみんなでがんがん投稿しまくって、地図上に並べていくアプリだ。
「Historypin」という名前のこのアプリでは、1840年から現在までの写真を投稿・閲覧できる。投稿時には場所と撮影日を入力。閲覧時は、その入力されたデータを元に「1902年から1905年の間にイタリアで撮影された写真」というふうに検索したりできる。もちろん、撮影日も場所も指定せず、地図上を自由にうろうろして写真を見ていくことも可能だ。
「GPSと写真共有」という、twitterに連動した写真投稿サービスなんかでも当たり前のように使われている機能だけを使ってシンプルに組み立てられたアプリだが、投稿されている写真そのものが面白いので、こういうサービスは楽しい。
世界遺産になるような場所、大都会の完成途中を物語る景色、そういうものも言うまでもなく見ていてわくわくするが、歴史に残りにくい個人個人の生活や庶民の文化、果ては「こんな時代にもこういうバカがいたんだなあ」と呆れるような写真が見れるのが面白い。
当たり前だけど、歴史に写真機が誕生した瞬間から、バカ写真を撮ろうというやつは存在した。ヘンな顔、おどけたポーズ、「なんで魚の骨を持ってるの?」みたいな写真などなど。ずいぶん昔の人だけど、僕らと同じようにネタに興じ、生活を楽しむ姿がそこに展開していることに、ちょっと感動する。
「テーマ別コレクション」という閲覧モードもあり、文字通り1つのテーマに沿ってコレクションされたアルバムを見られる機能だ。
国内ではまだユーザーが少ないが、それでも僕の住んでいる近所に高度経済成長の頃の写真が投稿されていたり、有名なボクシングの試合があった時の写真が投稿され、その時の出来事についての説明コメントが添えられていた。投稿された写真はどれも半透明にする機能がついていて、現地に行って今の様子と重ねて写真を撮ることも出来る。
twitterなんかのおかげで、「現在を共有すること」は、もう十分すぎるほどできてる。雨が降っただけでも秒単位でみんながそれぞれの状況を確認し合える。そういうことを可能にしたインターネットを使って、便利に楽しく、過去もみんなで共有する。ご先祖様には悪いけど、これは現代じゃなきゃできないよなあ、と、地図を無目的にぐりぐり動かしながら思った。
iPhone向けにはこちら、Android版もこちらにあります。どちらも無料です。
(香山哲)