東京都庭園美術館をご存じでしょうか? 目黒駅と白金台駅の間ぐらいにあるこの美術館は、朝香宮邸として1933年(昭和8年)に建てられた建物をそのまま美術館として公開したものになります。美術館としては1983年から公開されています。
広大な庭園(洋式も和式もあります)に囲まれているので、庭園美術館という名前がつけられました。

この朝香宮邸は、建てられた当時にヨーロッパの装飾美術を席巻していたアール・デコ様式で造られていて、美術館の展示物だけではなく建物を見ても非常に楽しい造りになっています。そのため、毎年展示物ではなく、この建物を公開する展示を行っているのです。

今年は「アール・デコの館」と題して普段は公開していない部分も公開しています。なぜなら、平成23年11月1日から改修工事に入り、全面休館してしまうからなのです。休館前の最後の大公開というわけなのですね。


このイベント、何がいいかっていうと、写真撮り放題なのです。普段は撮影禁止なのに、この期間だけは建物のどこを撮っても大丈夫。正確には階段などの立ち止まると危ないところでは撮っちゃ駄目なのですけれど、それでも踊り場だったらOK。もうありとあらゆるものを写真に撮りまくれるのです。これはもうカメラ好き、アール・デコ好き、洋館好き、お金持ちの建物好き、美術品好きは行かねばなりません!

撮った写真はアール・デコ Photo Gallery応募することができます。携帯写真でもOKなので、どんどん撮って応募しましょう。


ちょっとここで「アール・デコ」について簡単に説明をば。アール・デコはもともと1925年にパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称がアール・デコ博覧会)」がその名前の由来となっています。つまり、その当時の欧米の装飾や産業などで採用されていたデザインで、いわば当時の生活スタイル様式なのですね。すっきりとした幾何学的な線と、パターン化された模様が特徴になります。これはアメリカでは大流行して、ニューヨークの摩天楼なんかがその代表例だったりします。

というわけで、アール・デコの館は当たり前なのですが、いたるところがアール・デコだらけなのです。
ラジエーターカバーや、通気口に至るまで装飾が施されています。照明も各部屋専用にデザインされていたりするのです。

デザインを行っているのはフランス人の花形デザイナーや、宮内省内匠寮工務課の人達、さらには朝香宮妃殿下まで多岐にわたります。とくに妃殿下はこの宮邸を建てるのに尽力された方で、アール・デコに造詣が深く、自身の寝室や居間のデザインを行っていたりします。

わからないことがあったら各部屋にいる美術員さんに尋ねると色々と教えてくれたりもします。例えば妃殿下居間にある照明は、妃殿下がデザインされたもので、そのモチーフは「ゴルフボール」からきているという裏話的なことも教えてもらえちゃいます。
当時はモダンなスポーツで、妃殿下はいち早くはまられていたのですね。さらには飾られている美術品について質問をすると「もっとあったんだけど、戦後間もない頃にお米に変わっちゃってね……」なんて生々しいお話も教えてもらえました。

ちなみにそこで聞いたお話ですと、どうやら今回の工事期間は一応3年間と予定しているのですが、いつ再開するということは告知されていません。何故かというと、今回の改修工事では一回管理棟のある部分を更地にして建て直す予定なのですが、そこのあたりで遺跡がでてきたからです。その調査などに1年間が当てられているものの、もしかしたら長引くことになるかもしれないとのこと。なので再開日時があいまいな表現になっているそうです。
工事が完了したら管理棟にあたる部分への通路もしっかりとしたものになるし、そちらにも一般客が入れて色々快適な施設になっているので是非また来てくださいと言われました。

最後の金土日にあたる10月28日(金)から30日(日)は夜間開館も行っています。ライトアップもされるので、これは見に行かなければなりません。今を逃すと、次に見られるのは(おそらく)3年後になってしまうので、この機会に庭園美術館をたっぷり堪能しましょう!(杉村啓)