完成披露試写会レポでお伝えしたように、いよいよ明日10月29日(土)から「映画 スイートプリキュア♪とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪」が全国ロードショー!
公開を記念して、テレビシリーズ「スイートプリキュア♪」と映画のプロデューサー、梅澤淳稔さんに聞いてきた!
ここで予習をして備えよう!


子どもたちに向けて強く伝えたい

――「映画 スイートプリキュア♪とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪」のストーリーはテレビシリーズと地続き。「プリキュア」でテレビと映画を連動させたのははじめてですね。

梅澤 テレビシリーズで4人目のプリキュア、キュアミューズの正体がアコちゃんだとわかるタイミングと、映画公開時期が重なってしまった。それなら連動させて盛り上げようというのが発想の発端です。
――映画って毎年、10月から11月ころに上映ですよね。重なってしまったというのは?
梅澤 テレビシリーズの放映スケジュールが東日本大震災の影響でズレてしまったんですよ。
――ああー……。
梅澤 映画の企画も「スイート」がはじまった2月ころには立ち上がっていて、シナリオも組み上がっていた。
でも、ぜんぶ白紙にしました。
――今年3月公開の歴代プリキュア集合映画「プリキュアオールスターズDX3」では、津波のシーンがあったので、急遽そこをカットして上映していました。
梅澤 被災された方たちのなかにも「プリキュア」を好きな人はたくさんいると思います。「プリキュア」としてなにができるのかを含めて一からストーリーを考えたんです。
――公式サイトにもプリキュアたちからのメッセージ動画が上がっていました。
梅澤 プリキュアのもともとのメッセージである「絶対にあきらめない!」。
この映画ではそこを子どもたちに向けてもっと強く伝えたいと思いました。


楽しい雰囲気をつくりながら、重いテーマを浮き彫りに

――ポスターにも出ている黄色いプリキュアがキュアミューズだったんですね。映画で正体を明かすのかと思ったんですけど、テレビで先に出ていて驚きました。
梅澤 テレビシリーズと時間はつながっているんですが、ストーリーは独立しているんです。
――映画を観ていないとテレビのストーリーがわからなくなることはない。
梅澤 ないですないです! いつも映していないプリキュアたちの物語、日曜日と日曜日の間。
水曜日くらいの話を映画にしてみたんです。
――いままでの「プリキュア」の映画は連休中のできごとのイメージがありましたけど、こんどは平日(笑)。「鏡の国」(「映画 Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」)とか「お菓子の国」(「映画 Yes! プリキュア5 Go Go! お菓子の国のハッピーバースディ♪」)「おもちゃの国」(「映画 フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?」)、パリ(「映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」)にまで旅行に行っていたけど、こんどの舞台はテレビシリーズでも出ているメイジャーランド。
梅澤 いままでと変わらないんですよ。私が手がけてきた映画は、子どもにとってわかりやすい、あこがれの世界に行くというコンセプトで進めてきたんです。次はどうしようかなーって思っていたら、「スイート」の世界には音楽の国メイジャーランドがあるじゃないですか! こんなメルヘンチックな世界があった。
テレビシリーズでもあまり紹介していないし、詳しくやれるんじゃないかと思ったんです。
――映画スタッフの人選も梅澤さんですか?
梅澤 そうです。池田(洋子)を監督に起用したのも、映画の雰囲気が彼女にぴったりだったから。
――というと?
梅澤 楽しい雰囲気をつくりながら、重いテーマを浮き彫りにできる人なんですよ。まだまだ震災の影響も深刻なところに、あんまり暗いものを出したくはなかった。
――エキレビ!では、池田さんにもインタビューをするので、そのへんじっくりうかがいたいところです(11/2公開予定)。
脚本はテレビシリーズと同じ大野敏哉さんなんですね。
梅澤 映画のシナリオって遅くとも3月には完成させないといけないんです。
――かなり前ですよね。10月公開だから、えーっと、7ヶ月も前。
梅澤 そして映画とテレビシリーズはつながっている。ということは、3月の段階で10月末のテレビシリーズがどうなっているかを踏まえた上でシナリオを書かなければいけない。
だからきちんと流れがわかっている人がやらないとおかしくなってしまうんです。なので大野さんに引き続きお願いしました。
――大野さんってアニメの脚本はぜんぜんやっていないかたですよね。
梅澤 「ハートキャッチプリキュア!」の次の(テレビ版の)「プリキュア」の脚本は誰にお願いしようと考えていたときに、私のなかで引っかかってきたのが大野さん。経歴が面白いですよね。
――あ、「中学生日記」。
梅澤 そう。プリキュアたちと同じ年代。「武士道シックスティーン」「シムソンズ」という女の子たちが中心の映画もいくつかやっているので、中学生の生の気持ちはよくわかる人だろうなと思った。「私の優しくない先輩」を観たらギャグもできるし、「世にも奇妙な物語」で奇想天外な話も得意。こんな素晴らしい人はいないだろう! とお話をしにいったんです。
――いきなり「プリキュア」をやってくれと言われて戸惑ったりは?
梅澤 そこで私がつくった劇場版「プリキュア」を3本(「鏡の国」「お菓子の国」「おもちゃの国」)観てもらったんです。すると「女の子女の子しているかと思ったら熱い話なんですね」って。
――お、いきなりハマった?
梅澤 どうだったのかな(笑)。それでやっていただけることになったんです。
――よく思い切りましたよね。いままでアニメをやったことがないんですよ。
梅澤 できるだけいろいろな人と仕事をしたいと思っているので、そこはあまり関係ないんです。


ミラクルライトはやめようと思っていた

――劇中でプリキュアたちがピンチになったときに、観ている子どもたちがライトを振るとプリキュアがパワーアップする参加型のアイテム、ミラクルライト。「鏡の国」から使われています。これは梅澤さんのアイデアなんですよね。
梅澤 当時私がプロデューサーをやっていた「デジモンセイバーズ THE MOVIE 究極パワー! バーストモード発動!!」の同時上映「映画ふたりはプリキュア SplashStar チクタク危機一髪!」ではじめて映画の「プリキュア」を観たんです。試写会や初日、劇場に来ていたお客さんは、私が想像していたよりもだいぶ低年齢。未就学児ばかりだった。このときはまだ客観的に「『プリキュア』ってこんなに低いんだ-」って。まさか次回作をやるとは思わなかった(笑)。
――そのときに思いついた?
梅澤 はい。幼い子どもたちに70分の映画はちょっと耐えられないんでしょうね。途中でザワザワしたり、遊びだしちゃう。ちょうど、その次の映画「鏡の国」のプロデューサーをやることになったので、どうせだったらいままでと違うことをやりたかった。劇場で子どもたちの遊ぶ場をつくろうと思ったんです。
――それが大人気となって、いまも続いています。「プリキュア」の映画には毎回登場して、欠かせない存在になった。「スイート」の映画にもミラクルライトーンとして出ますね。
梅澤 だけど、最初は大反対されたんですよ。
――え、なぜ?
梅澤 費用がかかりすぎるから(笑)。いままでの入場者プレゼントはせいぜいシールくらいだったのに、いきなり光るおもちゃになった。
――ああー、開発費が一気に……。設計にも関わっているんですか?
梅澤 私が手がけている映画のミラクルライトは設計までいろいろ考えます。「鏡の国」のときは投射型にして前の席に光の蝶を浮かび上がらせる。「お菓子の国」ではライト自体を光らせたり、「おもちゃの国」ではペンダントにしてぶらさげる形にしたり。
――「スイート」の映画では音符型のミラクルライトーン。映画が発表されるたびに、次はどんなライトかなあって楽しみです。
梅澤 うーん。実は今回はミラクルライトはやめようと思っていたんです。
――ええええ!? な、なんで?
梅澤 「スイート」は音楽をテーマにしているから、これでなにかできないかな、ライトよりすごいものを考えてやるぞ! と意気込んでいたんですけど……映画館で音を出すのはなあってことで、けっきょくライトに(笑)。
――安心したような残念なような。いつかは変わってしまうんですかねえ。
梅澤 子どもたちは「次のライトはどんなのだろう?」と期待しながら、そろそろ飽きはじめてもいるんじゃないかなあと。私が始めたので、私が終わらせないと誰もやめられない。いつかあっと驚くものをつくりたいですね。
――期待しています。あと、できれば大人にもライトがホシイナーなんて……。
梅澤 ……うーん。
――あー、えっと。げ、劇場版の見所は?
梅澤 テーマが「親子」なので、親子愛やつながりをしっかり描ければと思っています。あと、子どもがはじめて見る父親の涙、という裏コンセプトもあるんです。映画館はどうしても親といっしょじゃないと来られないですよね。「連れってって~!」と言われて付き合って、映画を見終わった子どもがパッと横を観るとパパが泣いていた。映画を観たあとにお父さんと娘が手をつないで出てきて欲しいです。
(加藤レイズナ)

次回は監督の池田洋子さんにインタビュー!(11/2(火)更新)。
梅澤さん後編は11/4日(金)更新