銀行ATMでお金を降ろした後に機械から発せられる「ありがとうございました」は、「り」の部分にアクセントがある。

一方で、先日知人といった居酒屋で店長をしていた威勢のいい兄ちゃんの「ありがとうございました」は、「た」にアクセントがある感じの、原音に忠実に表記すると「ありがとうございましたぁー!」といった感じのものであった。


このように、「ありがとうございました」には様々なイントネーションがありそうなのだが、アクセントの位置により、「ありがとうございました」の印象はどのように変わるのだろうか?

企業向けの話し方セミナー等を主催するフリーアナウンサーの倉島麻帆さんによると、「『ありがとうございました』の正しい発音は、『り』にアクセントがくるものです。このようなイントネーションだと、相手に元気な印象を与えます」とのこと。銀行ATMの画面に出てくるお姉さんは、正しく「ありがとうございました」を発音していることになる。

ちなみに、倉島さんによると、「ありがとうございました」に限らず、「おはようございます」「ごきげんよう」「こんにちは」など、挨拶は一般に二文字目(厳密には第二音節という)にアクセントがくるのが正しい発音なのだそうだ。ただ、「こんにちは」の場合は第二音節が「ん」であり、どうしても音が弱くなるので「こ」にアクセントがくるようにも聞こえるとのこと。

しかしながら、先に述べた居酒屋の店長のように、必ずしも正しくない「ありがとうございました」が印象に残ることもある。
そこで、知人に「ありがとうございました」を様々なイントネーションで発してみて、そこから受ける印象を語ってもらった。以下はその中で得られた主要なイントネーションについてまとめてある。なお、以下では、アクセントが来る文字を【】カッコで括っている。

●ありがとうご【ざ】いました
【ざ】にアクセントが来ると、通常よりも若干テンションが高い印象を与えるらしい。「思いがけないことが起こったときの『ありがとう』はこのイントネーションになるのでは」との意見が聞かれ、例えば商談が思いがけず上手くいったときや、落としたハンカチを後ろの人が拾って渡してくれたときなど、ちょっとびっくりしたけどうれしい! みたいな心理状態で発せられるイントネーションである可能性があるようだ。ただ、やりすぎると「若干いやみったらしく聞こえる」こともあるらしいので注意が必要である。


●ありがとうございまし【た】
これは冒頭で紹介した居酒屋店長のイントネーションだが、やはり【ざ】にアクセントがくるよりもより強力なインパクトを与えるようである。居酒屋以外にも、「ガソリンスタンドで聞いた覚えがあるような……」といった目撃情報(?)も得られた。ここぞというときに一度は使ってみたいイントネーションである。

●あり【が】とうございました
このイントネーションは外国人風に聞こえるらしい。「長野オリンピック閉会式におけるサマランチ会長の『ありがとう』はこのイントネーションだった」というマニアックすぎる情報も提供されたが、「日本人でこのイントネーションはない」という意見もあり、日本語が母国語でない人々にのみ許された特権的イントネーションであるようだ。

調査の結果、結局分かったのは、「イントネーションがどんなんであっても、『ありがとう』と言われるとやっぱり嬉しい」という当たり前の事実。
相手への感謝の気持ちをこめて、さあ大きな声で、ありがとうございまし【た】ぁー!
(エクソシスト太郎)