総合書店は誰向けとかはない
9月11日にオープンしたウェブサービス「cakes」。ランキングを見ていると、「この国で結婚をするということ」(山本一郎)、「外国で働くには【第1回】仕事が嫌ならやめちゃえば?」(May_Roma)、「【第1回】ハーバード大学って、どうやって入るの?」(茂木健一郎・北川拓也)などが強い。
さまざまなコンテンツがあるcakesが、一番届けたい層はどこなのだろうか。
加藤 一番最初の想定読者は20、30代の人たちですかね。でも、最終的には全方位に対応できるようにしたいなと思っています。これからコンテンツの量も増えていきますし、cakesは自分がよく読む記事と、それに近い記事が自動的にソートされるシステムになっている。
――誰に読ませようとしているのかが少しわかりにくい感じがしたんですけど。
加藤 総合書店は誰向けとかはないですよね。紀伊國屋書店に行ったときに「誰向けなんだろう?」って思わないでしょう? パーソナルソーティングを組み合わせることで、総合書店と専門書店がミックスした感じのサイトなんですよ。
――サイトはスマフォでも見られるんですよね。
加藤 はい。コンテンツの並び替えは、スマートフォンのほうが威力を発揮するんです。PCに比べると画面が小さいので、コンテンツも一度に5個くらいしか表示できない。それが、すぐ見ることができるようになります。
――会社の昼休みとか、電車に乗っているときにちょろっと見たり。
加藤 そうそう。好きなコンテンツは探し回らずにすぐに見たいじゃないですか。
米光 おそらく、そこが僕がやろうとしている電書カプセルとcakesの違いですね。僕は探したいと思っているんですよ。探すのも楽しい。でも、最初からオススメされていたほうがよかったりもするので、どっちがいいとか悪いではないんですけど。でも、電書カプセルは、自分で探せるようにする!
数字で表されて、お互い意識する
cakesで書く魅力のひとつに、60パーセントの配分をチームで振り分けられることがあると思う。基本的に、出版社が売り上げに応じた印税を払うのは、著者に対する10パーセントだけ。カメラマンや編集者は買い切りだ。cakesはそこを突破した。
米光 いま、編集の仕事が大きく変わっていると思っています。
加藤 そうですね。数字は自由に決められるようになってるんですが、20パーセントというのは、なかなかちょうど良い数字かもしれませんね。編集者が、5個くらいのプロジェクトを進行していたら、全部合わせたら100%で、キリがいい。感覚的に、ちょうどいい数字ってそのあたりのような気がします。もちろん、誰と組むかや、仕事量によって全然変わってくると思いますが。
ツイッターのフォロワー数がそのまま戦闘力に
なんでもタダで見られるネットの世界で、課金前提のcakesはかなりハードルが高いんじゃないだろうか。
米光 有料メルマガにちゃんとお金を払う人もたくさんいますね。ちょっと前はネットで通販なんて信じられなかったのに、いつからか抵抗なくなったなー。
――Amazonでじゃがりこを箱買いしてますもんね。
米光 ……うん、だって、Amazonで箱で買ったほうが安いし。でも、コンビニで見かけて買うより、たくさん買っちゃってる。
加藤 賞味期限は大丈夫ですか(笑)?
米光 多分……。気付いたら俺どんだけネット通販使ってるんだーって状態。靴ももうネットで買ってるし。
加藤 僕もですよ、(足を上げて)これ。
米光 じゃば……? いや、Amazonで。
加藤 Javari、すごくいいですよ! 返品し放題なのが画期的です。靴って実際に履いてみるまでわからないですよね。たとえばひとつの靴を3サイズくらい注文して、合わなかったら返品できる。郵送代だけはかかるけど、めちゃくちゃ便利ですよ。
――えっと、cakesですけど、目標ユーザー数はどのくらいですか?
加藤 なるべく早く1万人にしたいですね。次は10万人にしたいですね。cakesは週150円の定額で月だと600円。これが10万ユーザーだと、全コンテンツの収入はひと月に6000万円になります。クリエーターに還元されるのは6割なので、3600万円。
――10万って大変ですよねえ。
米光 まあ、課金モデルではないので単純な比較はできないけどね。
――まずはツイッターで更新告知、一周年でエキレビちゃんというマスコットキャラクターを公募したり……知ってもらう段階が一番しんどかった。
加藤 cakesに関しては、こういう取材とかインタビューも大事なんですけど、書き手のみなさんがそれぞれ自分のお客さんを持っている人たちですよね。それぞれのコンテンツのマーケティングについては、それぞれのクリエイターさんが一番わかっていると思いますし、仕組みとしてもそこをサポートしていくように作っています。
――ツイッターや、ブログで固定の読者がいる人が多いですよね。
加藤 いまの時代、ツイッターのフォロワー数はドラゴンボールにおける「戦闘力」みたいなものだと思うんですよ。
――なるほど。たしかに、フォロー数10で、フォロワー数が1万とかだと、すげー! って思います。
加藤 雑誌や書籍を作っているときにも感じていましたけど、もう、作り手が売るしかない時代になってきたなと思います。コンテンツ単位で、クリエーターチームのメンバーが売っていくしかない。cakesは、ログインしていない状況で記事を読むと、「この記事の続きをお読みになるには購読手続きをしていただく必要があります」というボックスが出る。
米光 読めないのか! って。
加藤 でしょう。で、そのために、クリエーターがツイートするときに、一定時間内だったら、無料で読めるように設定できるんです。そして、そのクリエーターのツイートから購読手続きをすると、少しですけど、そのクリエーターに還元される。
――おお、すごい。宣伝しまくりますよそれは。
加藤 自分がした宣伝がちゃんとお金に振り替わる。無料で見せる仕組みがあれば、クリエーターもツイートしやすいし、読者もリツイートもしやすくなる。バイラルマーケティングを成立させるために、クリエイターが気持よく宣伝できるサービスにしたいと思っています。
cakesの自分の記事から購読手続きをしてもらうと、その記事のチームに還元される。やってみるとわかるけど、これはかなりツイートで宣伝したくなる。宣伝した数だけご褒美がもらえる感じがする。ゲーミフィケーションだ。
でも、現状、どのくらいの人が、自分の記事から登録したかはわからない。怖いけど、知ることでモチベーションにもなるんじゃないだろうか。おれの新連載「このPに訊け!」、いったいどのくらいアクセスがあるのかなー(チラッチラッ)。
デイリーランキング、ウィークリーランキング、マンスリーランキングも、数字で、「1位 なんとかかんとか。2位 なんたーらかんたらー」とかにしたら、ランキング伸ばしたい! と思うのですが、いかがでしょうか?
(加藤レイズナ)