フランスで食される代表的なジビエといえばキジ、シカ、ウサギなど。なかには日本では珍しい動物もある。その一つが雷鳥。日本で雷鳥は天然記念物に指定されているので、こっそり食べない限り(こっそりもダメです)捕まってしまう。中国の四川省では闇でパンダを食べることができるという噂を聞いたことがあるが、それに準じたことをフランスではできるというのか! 一体どんな食感なのだろう……食べてきた。
訪れたのはジビエ料理で有名なパリ市内のレストラン。「ジビエやってます」の張り紙には今扱っている野生動物のリストが書いてあった。本日入荷しているのはシカと雷鳥。早速、前菜に鴨のテリーヌ、メインに雷鳥と、味を比べるため普通の鳥(鴨)も注文して、鳥づくしで料理が運ばれるのを待った。
まず鴨がテーブルに並んだ。
鴨を食べ終え前菜の余韻に浸るなか、いよいよメインの雷鳥がやってきた。効果的に焦げ目がついた焼き加減に食欲がそそられる。 もっとも大きな部位には扇のように切れ目が入れられていた。肉質は硬いのだろうか? ナイフを肉へ差し込むと、思ったとおりの感触。ナイフで切った一片を口へ運んだ。
独特な風味が舌を襲う。どこかで食べたことある味……そう、レバーだ。
ところで雷鳥(フランス語でGrouse)はどこで獲られたものなのだろうか。レストランに聞くと主な産地は英スコットランドとのこと。日本の雷鳥とは種類が違うため、厳密には天然記念物を食べているわけではない。さらにジビエにも種類があり、本来は狩猟した野生動物を指すが、捕らえてから餌付けしたものや、育ててから野に放ったものもジビエと見なされる、また広い意味で牛、豚、鳥、羊、馬など家畜以外の畜産品で飼育されたものを指す。
ジビエは遠いフランスの食文化かと思われがちだが、日本でもジビエに積極的に取り組んでいる地方がある。長野県や和歌山県では、県内で急増し農林業被害対策として駆除したニホンジカやイノシシを、ジビエとして広める取り組みを県内のレストランとともに進めているのだ。 じつは日本でも身近になりつつあるジビエ。一度ご賞味あれ。
(加藤亨延)