ラジオの深夜放送や雜誌のネタの投稿コーナーがあるところにハガキ職人あり。コーナーが盛り上がるかどうかのカギを握っているといっても過言ではない。
しかし、その実態は謎に包まれている。そこで、ハガキ職人としてネタを書いている(書いていた)有名ハガキ職人4人(大村彩子、概念覆す、田村R、たまに大阪)に根掘り葉掘り聞いてみた。

●まずは、気になるラジオネームの由来から
・田村Rさん ※よく投稿していたのは『西川貴教のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)、現在は『水曜JUNK:南海キャンディーズ山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)ほか。
名前の由来は、下の名前のイニシャルがRだから。

・概念覆すさん (以下『概念』)※よく投稿するのは『ファミ通町内会』(KADOKAWA)、『水曜JUNK:南海キャンディーズ山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)、『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)、和田ラジヲ先生のラジオ番組ほか。
名前の由来は、新聞に「概念覆す技術」と書いてあって、「これにしよう」とあっさり決めた。
「画数が多いので、一度『辻』っていう名前にしたんです。ちょうど、テレビに辻よしなりさんが出てたので。でも、しっくりこないので元に戻しました」

・大村彩子さん (以下、『彩子』) ※よく投稿していたのは『月曜JUNK 伊集院光の深夜のバカ力』(TBSラジオ)
「彩子」といっても男である。名前の由来は、高校の課題で『パラサイトイブ』を読むことになったが、本を読むのが面倒くさいので映画版を観ることにした。「ラジオネームを考えないといけないな~」と思っている時に、ふと画面に映っていたのが大村彩子(当時子役)で、可愛かったのでこの名前に。
「大村彩子さんの名前をそのままラジオネームにして投稿し続けたら、大村彩子さんは有名になるんじゃないかと思って(笑)。
初めて『伊集院光・深夜のバカ力』(TBSラジオ)で読まれた時は、ラジオネームを読んだあと、小さな声で『男だけどね』って言ってくれました」
※彩子さん(男だけどね)は、現在、大村綾人として活躍中。アイドル、情報番組からアニメ、ゲーム、落語の番組まで幅広く構成する放送作家。ニックネームは「ミラッキ」 ※元近鉄の選手名から。

・たまに大阪 ※投稿していた番組『aikoのオールナイトニッポン.com』(ニッポン放送)ほか。
出身は東京都町田市。阪神や近鉄好きで、本名の「大沢」と「大阪」の響きが似ていて、時々「大阪」と呼ばれるから「たまに大阪」に。

――大阪に行ったことは?
「一度もありません」
――ちなみに、何とお呼びしたらいいですか?「たまにさん?」「大阪さん?」
「『たまにさん』で」

●ラジオ愛を感じるパーソナリティーは?

概念:南海キャンディーズの山里さんですね。ハガキ職人の鬱屈した感じの波長が合っていて、ラジオリスナーにとっては、非常に共感するところがあります。リスナーの名前を覚えてくださっているところも嬉しいです。
田村R:山里さんも良いし、僕は加藤浩次さんの『吠え魂』(TBSラジオ)も好きでした。面白いし、男気がありました。
彩子(男だけどね):伊集院さんは、自分が送ったハガキの内容を広げてもっと面白くしてくれるから、なによりの楽しみでした。
僕も、伊集院さんに笑ってもらいたいという一心でハガキを書いてました。

――ネタはどんな時に考えてますか?
彩子(男だけどね):よく高校や大学の授業中に考えてましたね。ネタを考えてる姿って、まわりから見るといかにも勉強してるっぽく見られるし。
概念:大学の授業では前の方の席で考えると、出席点はつくし、真面目に取り組んでいるように見られるし。
彩子(男だけどね):僕は一番後ろの方の席でネタを考えてたけど、ある日、ネタを書いてたら、後ろに座っていた人から「ひょっとして、大村彩子さんですか?」って声をかけられて。
一同:すげ~~~~~~!
彩子(男だけどね):その人も『深夜のバカ力』のリスナーで、それで仲良くなりました。

●ネタハガキを書く時のこだわり

田村R:住所や名前を書く時に、パーソナリティーがうっかり本名を読んでしまわないように、「長野県 田村R」という感じで、パーソナリティーが読む順番に書いてました。
彩子(男だけどね):住所、ラジオネーム、本名を書く時に、住所の最後に全く意味のないことを書いて、ペンネームと本名を書いてました。例えば、住所のところに何の意味もなく『ビックパソコン館』と書いておくと、そこを拾ってもらえて「パソコン館に住んでんのかよ!」とか言ってもらえたりして(笑)。
概念:効果があったと言えるかどうかは分からないけど、僕は住所や名前を赤ペンで書いてました。

田村R:そういえば、僕は、縦書きに書いていたのを、ある時期から横書きに変えました。2000年に入った頃に、よく読まれているハガキ職人の方が、ネットでハガキの書き方を公開するようになったんです。
その方が、裏も表も横書きで書いているということを知って、僕も横書きにしようと思いました。
彩子(男だけどね):ラジオ投稿のオープンソース化が2000年の頃から起きていたなんて!
概念:それまでは、どういう書式でハガキを書いたらいいのかなんて、誰も教えてくれませんし、知る方法もありませんでしたからね。
彩子(男だけどね):僕は仕事柄、どういう形式でネタを書いたらいいのか、聞かれますが、極端な話をすると、面白かったら採用されます。名前が書いてなくても「こんなに面白いネタを考えてくるなんて、男なのか女なのか」といったことで、パーソナリティーが盛り上がったりしますよ。

――では、ネタハガキを投函する時のこだわりはありますか?
概念:僕は和歌山にいた頃は、初めて採用された時に投函したポストに投函してました。家からはかなり遠かったけど…。
田村R:そういえば、ポストの収集時間って、覚えますよね。
彩子(男だけどね):土曜と日曜は平日と収集時間が違うから注意しないと。
概念:京都に引っ越してからは、郵便局の窓口に直接出しに行くようになりました。毎日行ったら顔を覚えられちゃうので、その日によって行く郵便局を変えますね。別に、やましいことをしてるわけじゃないのに(笑)。

今はメールで受け付ける番組がほとんどだが、以前はいつまでに投函すればその週の放送に間に合うのか分からず、探っていた人も多い。


概念:あと、ハガキにイラストを描いているので、雨の日に投函するのがイヤですね。
田村R:回収する時に、雨粒がハガキについてにじんだりしないかと…。
概念:投函した拍子にハガキが折れたら嫌だから、投函する時は、そ~~~っと入れますよ(笑)。
彩子(男だけどね):漫画でいえば、原画ですからね。原画をそのままポストに入れるなんて、考えられませんからね。

●パーソナリティーにお会いした時の話

――憧れのパーソナリティーにはお会いしましたか?
田村R:西川貴教さんにお会いしました。『西川貴教のオーナイトニッポン』(ニッポン放送)で「ハガキ職人レース」を開催していて、10位に入ったら、スタジオご招待という特典があったんです。憧れの西川さんにご挨拶させて頂いて、長野の田舎の出身の僕にとっては、全てが夢のようでした。しかも、ニッポン放送の局内を見学させていただいた上、スタッフの皆さんも優しい方々ばかりで、「こんなに素敵なスタッフさんが番組を支えてるのか」と感激しました。
概念:ライブの出待ちをして、山里さんにお会いしました。しかも、ラジオ番組でいじってもらえて、本当に嬉しかったです。

たまに:aikoさんに直接お会いしたことはありません。
いつもライブで遠くから見ているだけです。aikoさんに対する思いが強すぎて、恐れ多くて近づけません。でもいつか、ほんの少しでも良いので、お会いしてご挨拶をさせていただきたいです。
彩子(男だけどね):伊集院さんが『日曜大将軍』(TBSラジオ)を担当されていた時に出待ちをしました。プロ野球選手だった小宮山悟の超拡大写真と、高校の事務員さんの顔が面白かったので、その写真などを袋に入れて渡しました。そしたら、次の日の『深夜のバカ力』の放送で触れてくれたんです。『最近、嫌なことが続いてたんだけど、よくハガキを送ってくれる大村彩子が来てくれて、袋をくれたから中身を見たら、小宮山の拡大写真と、知らないおじいちゃんの写真が入ってて、その写真の下に『福生』って書いてあって、こういうダメなヤツもいるんだと思うと元気が出てきました』って(笑)」
※ちなみに、大村彩子さんご本人にもお会いしたそうだ。
「『すみません、勝手に名前を使って…』とお詫びしたら、『嬉しいです』と言ってくださいました」

●心に残るノベルティーグッズは?

概念:『オオギリの研究』(月刊ビッグガンガン:スクウェア・エニックス)でもらったTシャツ(写真参照)と、『ファミ通町内会』で殿堂入りした時にもらったトロフィーです(写真参照)。3つあって、家に飾ってます。結構、重くて…。
一同:おお~~~~!!
田村R:『SPA!』(扶桑社)の『バカサイ』で優勝した時にもらったジャージです(写真参照)。毎年、『バカサイ』は、誰でも参加できる忘年会があって、そこで今年のチャンピオンということで、ジャージを頂きました。
天久聖一さん、せきしろさん、椎名基樹さんに祝って頂いて嬉しかったです。

●あまり知られていないけど、自分にとっては名番組

――「隠れた名番組」というべき番組を、教えてください。
彩子(男だけどね):『Pierrot BRAINSTORM』(1999.1 - 1999.9)。TBSラジオ『UP'S〜Ultra Performer'S radio~』の木曜日の枠で放送されていました。ヴォーカルのキリトさんと潤さんのトークがとにかく面白かった。キリトさんは、落ち着いた声で喋るけど、潤さんは爆笑問題の田中さんのような喋り方で、とてもヴィジュアル系バンドとは思えませんでした。キリトさんが落ち着いた声で「僕はファンの人や、スタッフの方が何と言おうと、ジャッキー・チェンのコーナーをやります」と言ってて、潤さんがハガキやFAXが一枚もこなかったらどうするんだっていう話をしていたので、僕が「ジャッキー・チェンは毎日『暴暴茶』を“ぬんでます"」と書いてFAXを送ったら、キリトさんが「そうなんだよ、ジャッキーはぬむんだよ」とのってくれました(笑)。

概念:『本村康祐・西岡隼基のオールナイトニッポン0(ZERO)』(2012.4-2013.3)金曜深夜3時から放送されていました。オーディションで選ばれた大阪の一般の大学生2人が、ホントにゼロから面白くさせようとした番組で、初めは1~2週で聴くのをやめようと思ったけど、どんどんキャラクターや内容が面白くなってきて、リスナーと一緒に盛り上がっていった番組でした。
田村R:『いしのだなつよのオールナイトニッポンR』(1999.9-2000.4)こちらも金曜深夜3時からの放送でした。いしのださんが、まだ新人の頃で、全力で放送していた感じが良かったです。ハガキやメールを紹介する度に「ありがとう」って言ってくれたりして。
たまに:『角田龍平のオールナイトニッポンポッドキャスト』(2010.10-)元々「オールナイトニッポン」を1年間担当されていて、その時は聴いてなかったけど、ポッドキャストを聴いたら法律を交えた時事ネタのトークがとにかく面白くて。今、この番組のイベントの企画を僕がやっています。ちなみに、もう一度、ラジオで復活しないかな~と思ってます!

あぁ、これぞラジオ愛!

実は、かくいう私も昔はハガキ職人だったわけで、東京の放送局からノベルティーの入った封筒が届いたり、スタジオ見学をするだけでも大興奮なのでした。今回、ハガキ職人の皆さんの話を聞いていて、あの頃の自分にタイムスリップした気分。ちなみに、私は高校の授業中にネタばっかり考えていて、うっかり一浪してしまったので、高校生の皆さんは私みたいにならないように。お父さん、お母さん、予備校に行かせてくれてありがとう(涙)。
(取材・文/やきそばかおる)

●ハガキ職人が集まるイベントが開催されます!
『ハガキ職人ナイト16』
現役・ベテランのハガキ職人に大喜利イベントの猛者を加えた半年ぶりの祭典!
2013年 12月1日 (日)
開場:17:30 開演:18:00 (終了予定20:30)
会場:東京カルチャーカルチャー(お台場の観覧車があるところ)
出演:アリクイ親子と墓とひろし、エリンギ、概念覆す、ガラスのハート、シーブックたけのり、ジャーゲジョージ、政府にとって危険な思想の持ち主
ぜいたく王子、田村R、鳥獣戯画ジャクソン、冬の鬼、ポスティング失敗、館長(特別出演)ほか
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