最近、再び起業がブームになっているという。不況においては起業って、本当のところトクなのか?
『【新版】フリーランス、個人事業、副業サラリーマンのための 「個人か? 会社か?」から申告・節税まで、「ソン・トク」の本音ぶっちゃけます。
という本を出している税理士の岩松正記さんにそのへんの本音を聞いてみた。

――起業って最近、増えてませんか?
「たしかに増えている気がしますね。今年はノマドがブームになったと騒がれたり『ワーク・シフト』(プレジデント社)など将来の働き方を考える本が売れた関係で、起業が注目されているのは間違いないと思います。ただ起業といっても必ずしも法人化している人ばかりではなく、法人にしないで個人でやっているような方、いわゆるフリーランスの個人事業主なども増えています。会社にするにしても、社員が一人から多くても数人という規模が多いですね。

――起業して会社を作るって、結局トクなんですか?
「ちまたではいろいろな説がささやかれていて、売上が1000万円を超えたら会社にしたほうがいいとか言われていますが、物販で仕入れのある業種の売上1000万円と、コンサルタントなど仕入れのない業種の1000万円とはまったく違うんですね。
節税効果があるのは当然に後者の方。会社にしてしまうと法人申告の手間とか費用がかかってしまいますので、フリーランスの個人事業主だったら課税所得が400万円を超えてこないとあまりメリットは出ないような気がします」

――結局、トクでもソンでもない?
「一定規模以上では間違いなくトクします。それと、実は独立起業する人以上に独立起業させた会社のほうにメリットがあるんです。社員の給与には消費税がかからないので、人件費の多い会社というのは消費税が社内留保する形になる。よって最終的に支払う消費税の額が多くなるんです。ところが、たとえば社員を独立させて外注先扱いにし、仕事を出すと給料が外注費に変わります。
外注費には消費税がかかるので課税仕入になり、支払う側にすると消費税を先払いする形になるため、最終的な納税額が減ることになるんです」

――えーっと、よくわかりませんが会社側の節税になるってことですか?
「そうですね。消費税率が上がると会社も支払う消費税が増えていくので、上のようなことを実施すると納税はラクになります。もちろん消費税だけが起業化をうながす要因ではないですけど、最近の起業ブームに乗って、この先、会社に勤めていて本人が独立する気がなくても本人の意志とは無関係に独立を求められたり、フリーランス化させられたりする時代になるかもしれません。そうすると嫌でも、みんな独立起業を意識せざるを得ないでしょうね」

――会社の中にいてもフリーランスのようになる?
「複数の会社と契約するようなフリーランス社員も出てくるかもしれませんね。これからはミニ起業家の時代になると言われています。できる人にとってはいい時代です。
同じ500万円の収入でもフリーランスだと自由に使えるし、自由にできる時間が増える。それに経費が使えるので、仕事に使うのならパソコンや旅費などでも経費にできますし」

――誰もがやりやすい独立起業の時代が来るってことでしょうか?
「一見そうですね。でも誰でも彼れでも独立すりゃいいってもんじゃない。良く見てみると、結局はサラリーマン時代にちゃんと実績のあった人や優秀な学校を出た人が独立しても活躍しているんですよね。世の中、そんなもんです(笑)」

ぶっちゃけ税理士と呼ばれる岩松さんならではの、きつ~い本音が炸裂。やっぱりそんなに現実は甘くない!独立してみたところで、オイシイ水はどこにいってもないってことですかね……。

(カシハラ@姐御)