原作は池井戸潤の同名小説。倒産寸前に追い込まれた中堅精密機器メーカー・青島製作所と、廃部の危機にさらされた同社の社会人野球部それぞれの「逆転劇」を描く。原作をはじめ、演出・脚本・プロデュースからナレーションに至るまで、ドラマ「半沢直樹」と同じスタッフが再集結したことでも話題の作品だ。
「香川(照之)さんがすごかったですね。あのアップ! コモドオオトカゲかと思いました」(立川談春)
こう語った談春は連ドラ初出演。青島製作所を危機に追い込むライバル企業の社長を演じる。「こんな難しい役だと思わなかったよ。せいぜい出前を届ける役ぐらいだと思ったから引き受けたのにいきなり、怖い役だもん」と続け、笑わせた。今作でも「半沢直樹」でおなじみのドアップでの“顔芸”は健在。巨大スクリーンいっぱいに香川の顔が映し出され、「じきにわかります」と言い放つシーンは目をそらしたくても、そらせない。
ベテランの唐沢に「撮り方が特殊。初体験です」と言わしめた、「半沢」チームの撮影スタイル。シーンごとに細切れに撮影するのではなく、舞台のようにずっと演じ続けることが求められる。カメラの角度を変えながら、「自分でも何をしゃべってるかわからなくなるぐらい」(唐沢寿明)まで繰り返し同じシーンを撮影するという。
「戸惑ったのはカメラとの距離です。驚くほど目の前にあるカメラに向かって、『カメラ目線しゃべってくれ』と言われることもあれば、複数のカメラが寄ってくることもある。(演技に)集中するのが大変でした」(唐沢寿明)
本作品では「半沢」を彷彿とさせる演出が随所にちりばめられている。「半沢」で主人公を陥れる支店長を演じた石丸幹二が、総務部長兼野球部長・三上文夫役を演じるなど、懐かしい顔ぶれも次々と登場。その一方で、企業と野球部それぞれの闘いを同時進行で見せるという、新たな要素もふんだんに盛り込まれている。名投手として名を馳せた元プロ野球選手の工藤公康投手の長男、工藤阿須加がピッチャー役で出演するのも見どころの一つだ。
「野球未経験なのに、130kmのストレートを投げる」(唐沢寿明)という工藤が演じるのは、青島製作所の製造部に勤務する契約社員・沖原和也役。ずば抜けた野球の才能を持ちながらも暗い過去を持ち、野球を遠ざけてきた。
「野球部の連中はホントに、野球がうまいんですよ。そこに惹きつけられる。どんどんそういうプレーがでてきます」(石丸幹二)
企業の存続をめぐる攻防では会議室や料亭といった、密室での緊迫感あふれる闘いが描かれる。一方、野球部のほうは青空の下でのぶつかりあい。手に汗握る展開はありつつも、どこかのんきなムードも漂う。ポーカーフェースで水面下のバトルを繰り広げるスーツ組と、泣いて笑って泥まみれになって走り回るユニフォーム組という対比も鮮やか。
「え? と思うような、とんでもない展開が次々に起こります」(唐沢寿明)
「(試写を)改めて見て、この作品はすごいぞ、と思いました」(檀れい)
「時代ともリンクしていて、この後の展開が楽しみ」(江口洋介)
「池井戸潤さんの作品は作り手側も、見る側もグイグイ引き寄せて離さない」(石丸幹二)
「『伝えたいことがあって、まっとうに作っている』というのが伝わってくる」(立川談春)
出演者たちのコメントに、会場からは賛同の拍手が起こる。女心もがっちりつかんだ「ルーズヴェルト・ゲーム」は4月27日(日)21時より放送スタート。日曜の夜が待ち遠しい。
(島影真奈美)