パリ市内エッフェル塔の近くにあるパリ日本文化会館で『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展』が開かれている。2012年から日本全国を巡回していた同展が、ついにパリへ渡った。


同展では映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に登場する「ロンギヌスの槍」「プログレッシブナイフ」などの武器を、日本の現代の刀匠たちが再現している。作品の世界観や、登場キャラクターからインスピレーションを受け制作された刀剣類に加え、鎌倉時代から江戸時代までの日本古来の名刀や刀装具、エヴァンゲリオン初号機や登場キャラクターのフィギュア、原画パネルも展示されている。会期中は備前長船刀剣博物館学芸員によるレクチャーや、刀剣職人による作品制作のデモンストレーションも行われる。

アニメと日本刀……今回の展示は、日本好きのフランス人にとって、琴線に触れる内容がてんこ盛りだと言っていい。そもそも彼らは刀が好きだ。ジャパンエキスポなどのイベントでは、模造刀などを扱う小売店に多くの日本好きフランス人が集まり、その買い物を目的の1つに訪れる人も多い。
アニメや漫画をきっかけに日本の伝統文化に興味を持つ人も多いので、日本を代表する人気アニメ『エヴァンゲリオン』と刀剣の組み合わせは、そんなフランス人たちにとっては気にならないわけがないのだ。

実際、会場はどのような様子だったのだろうか。パリで行われる日本イベントは、「パリでやりました」とはくを付けたいがために行う人も多く、行ってみたら現地在住の日本人とその周囲のフランス人が集まっているだけで、一般的なフランス人には全く関心を持たれていないということもある(実際そういう状況でも、日本で報じられる際には「現地で好評」と書かれていたりもするのだけれど……)。
しかし今回のエヴァ展は、そのような、なんちゃってパリイベントではなく、訪れた時に展示会場内にいた日本人は私だけ。会場の係の人にそれとなくうかがっても、「来場者はフランス人がほとんどです」とのことだった。年齢層も10代中盤〜20代前半の若者が多いのかと思ったが、ファミリーや年配客も訪れていた。
エヴァのアニメ描写は、少々エグいと思われる箇所も多いので、幼稚園や小学校低学年くらいの子供を連れて来ている来場者がいたのは、個人的には意外だった。

若者はエヴァの刀槍類に興味を示す人が多く、年配者はアニメというより刀やよろい・かぶとといった伝統文化そのものに関心が高い様子。実際の展示も、アニメ色よりアニメをきっかけにした刀剣などの伝統文化の紹介が主なので、ファミリー層にとっても、異文化に触れるよい社会科学習の一環になるのかもしれない。総じてエヴァというアニメとして捉えるというより、日本刀の刀身の美しさなど、伝統工芸の匠の技術に見入っている人が多い印象だ。

今回のパリ(4月30日から6月21日)での会期が終われば、次はスペイン・マドリードABCミュージアム(7月5日から9月28日)で日本スペイン交流400周年記念事情の1つとして催される。パリに続きスペインではどのような反応を受けるのか。
今後の巡回にも注目だ。
(加藤亨延)