「明日美さん…父があなたのお父さんを殺したんですね……でも、よかった。約束守れて…あなたを守れて…約束してたから……」

5月30日放送のTBS「アリスの棘」第八話で、研修医・磐台悠真(中村蒼)は主人公・水野明日美(上野樹里)の代わりに、伊達理沙(藤原紀香)に刺される。
「何があっても、明日美さんを守れる男になります」(第六話)という言葉通り、好きな女を守り抜いた。そして、命を落とす。九死に一生を得るものだと信じて疑ってなかったのに、序盤で早々に「モニター、フラットです」。えー! である。

悪役然としていた磐台教授(岩城滉一)は息子の危機に取り乱し、人間らしい一面をのぞかせる。一方、温厚な人格者だったはずの有馬教授(國村隼)は残虐性をあらわにする。人生経験があるだけに、ちょっとやそっとでは腹のうちは見せないのが、おじさんという生き物。磐台と有馬両教授の言動から、厄介なおじさんとうまくつきあう方法を探ってみたい。


■「君の今後について話しあいたい。わかっているだろうが、研究だけでは教授にはなれんよ」(磐台教授/第二話)

かわいがっていた伊達理沙が病院を辞めたとき、磐台教授がとった行動は、千原淳一(田中直樹)にチャンスを与えるというものだった。でも、千原はVIP患者を激怒させてしまう。その様子を目撃した磐台教授の行動は迅速そのもの。
「このたびはうちの医師が申し訳ありません。会長の信頼を取り戻せるよう、全力でがんばりますので、今一度チャンスをいただけないでしょうか」と懇願する。さらに「彼はもう、うちのスタッフではありませんので」と千原を切り捨てる。この手の断捨離おじさんは情に訴えても、ほぼ響かない。“切られるときは一瞬”を念頭に置きつつ、割り切った関係をとり結びたい。


■「証拠が無ければ、事実が無いのと同じだ」(磐台教授/第四話) 

西門優介(オダギリジョー)に、主人公の父親である小山内孝夫の死因は医療ミスではなかったかと問いただすが、「証拠がなければ、事実はないのと同じだ」とはぐらかす。このセリフはその後もたびたび出てくる。開き直りフレーズなだけに、まともに受け止めるとイラッとするが、そこにある“今の俺、かっこいい”感に着目すると、楽しくなってくる。正体がバレたときの明日美のように「どこに証拠があるんです? 証明できなければ、事実は無いのと同じです」と同じセリフをつきつけ、相手をイラつかさせるという手もある。ただし、事態と人間関係が悪化する恐れもあるため、通常は気心が知れた同僚同士で、ドヤ顔モノマネを楽しむぐらいにとどめておくほうが良さそうだ。

■「偉そうなことを言ってしまったが、自分の事には迷ってばかりだ。身内に病人が2人いてね」(有馬教授/第五話)

伊達理沙、千原淳一に続いて、顧問弁護士の日向誠(尾美としのり)が失脚。
15年前の医療ミスの関係者が次々に病院を去るなか、有馬教授は明日美を呼び出す。明日美が有馬教授の元・愛人と会っている写真などを突きつけるが、明日美はウソの事情をでっちあげ、なんとか切り抜ける。すると、有馬教授は「良かれと思ってやったことでも、誤解を生むことがある。今度、何かあった時は私に相談しなさい」と親身めいた説教をしつつ、「と偉そうな事を言ってしまったが……」と妻と娘が病気だということを伝える。おじさんに限った話ではないが、さほど親しくないのに、いきなりディープな打ち明け話をしてくる人は地雷率が高い。いつでも逃げられるよう、半身の構えでつきあいたい。

■「彼女が息子にまとわりついていると聞いた。息子に相応しい相手かどうか、見極めたい」(磐台教授/第六話)

15年前の医療ミスの証拠が隠してある別荘に行きたがるなど、不審な行動が目立つ明日美が気になって仕方がない磐台教授。看護師・星野美羽(栗山千明)を通じて、その正体を探ろうとする。「彼女が息子にまとわりついていると聞いた。息子に相応しい相手かどうか、見極めたい」というセリフで、美羽の明日美に対する嫉妬心や対抗心に火をつける。女心がわかってらっしゃるモテおじさんの手練手管に乗せられると、もめなくてもいい相手ともめて疲弊することに。
女子の立場からすると、もっとも乗せられてはいけない相手である。


■「君を信じている。私を失望させる様なことだけはしないと約束してくれ」(有馬教授/第七話)

「病院の人間を簡単に信用するな」という西門の忠告を無視し、明日美は有馬教授に15年前の手術記録を渡す。そして、磐台教授に殺人の証拠であるSDカードを処分されたと打ち明ける。有馬教授が復元してくれたデータをもとに、明日美は磐台教授に詰め寄る。しかし、それは明日美が伊達や千原を追い出したという言質をとるための、有馬と磐台の罠だった。「信じている」発言は前述の打ち明け話と並ぶ、要注意フレーズ。勝手に期待し、その期待が裏切られるとぶち切れることも多々あるので、油断は禁物。一歩引いてつきあいたい。

そうこうしているうちに、黒幕の一人であったはずの磐台教授はあっさり変死。一体何がどうやっているやら、混沌のうちに、いよいよ第九話。最終回目前にして、さらなるどんでん返しが待っているのか、それとも……! 

(島影真奈美)

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