TOHO animation・武井プロデューサーも同席のうえ、アニメ制作の裏話を聞いてきました。
「アオハライド」はストレートな少女マンガ
───「アオハライド」アニメ化のお話を聞いたのはいつ頃ですか?
吉村 去年の5月か6月、前の作品「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」をやっていた頃です。とりあえず、お話をさせてもらえませんか、みたいな感じで連絡をいただいて、新宿の喫茶店で「やってみませんか?」とお話をいただいたのを覚えています。
───原作はご存知だったんでしょうか。
吉村 知っていて前から気になってはいたんですが、読んだことはなくて。お話をいただいてから読みました。もともと少女マンガは大好きなんです。読んでみたら、すごくまっすぐなお話で、「これぞ少女マンガ!!」という感じでした。ぐいぐい惹きこまれて一気に読んじゃいました。
───好きなキャラはいますか?
吉村 やっぱり一番は(馬渕)洸くんです。ああいう子がいたらいいなあと思うんですけどね(笑)。見た目もいいし、影のある感じもかっこよくて、一番魅力を感じますね。
原作には忠実に、誤差のないように作りたい
───人気の作品をアニメ化するときの心境ってどうですか?
吉村 原作があるものをアニメ化するときは、どの作品でも原作ファンの方がたくさんいらっしゃって、必ずしも全員に受け入れられるものではないと思っているんです。
───咲坂先生とお会いしたのはいつ頃ですか?
吉村 先生のご意見も聞きたかったので、ぜひお会いさせてくださいとお願いしていました。現場の熱量を伝えたいという気持ちもありました。シナリオづくりの結構早い段階でお会いさせていただくタイミングがあったので、ありがたかったですね。
───どんなことを話されましたか?
吉村 原作の世界観をそのまま大事にしたいというスタンスをお伝えしました。先生からいただいたお話で特に印象的だったのが、双葉と洸の関係性は、双葉がヒーローで洸がヒロインだと思って描いているので、そこは大事にしてもらえれば、というお話ですね。目からウロコというか、たしかに読み返してみると双葉はヒーローでした。
武井 あれはなるほどという感じでしたね。最近の連載でも洸が小湊に、「双葉はヒーローだ」って言っていましたね。
吉村 少女マンガ作品は、やっぱり男の子がかっこよくて、女の子がかわいくて、見ていてキュンキュンするというのが大きな魅力の一つだと思います。
制作スタッフには女性が多い
───スタッフはどのように決まったのでしょう? 監督含め、女性が多い印象です。
武井 そこは多少意識していたかもしれません。監督は女性にお願いしたいと思っていました。シリーズ構成も女性で金春(智子)さん。逆にプロデューサー陣はプロダクション・アイジーのラインプロデューサー、僕と集英社さんのプロデューサーも男性です。そのあたりで男性からの意見も入れつつバランスをとるようにしています。でもキャラクターデザインも女性、井川麗奈さんですもんね。
吉村 キャラクターデザインのコンペの中には男性が描かれた画もあったんで、気がついたら女性が多くなっていたというのが実際のところですね。井川さんが最初に描かれた画って、原作に一番近くて、世界観が合っている気がしたんです。
───キャラクターデザインはとても原作に忠実だなと思います。そのへんは細かくやりとりされたとお伺いしました。
吉村 そうですね。井川さんに画を描きおこしてもらって、先生のチェックを受けていく中で練り込んでいった感じですね。どの作品でもそうですが、マンガで描いている絵と動かせる画はまた別なので、デザインして整える作業はやりとりを必要とします。結果、うまく絵に落とし込めたんじゃないかと思っています。
アニメの中に、映画やドラマっぽさを取り入れる
───少女マンガのアニメ化について、どこにやりがいを感じますか?
吉村 私はずっと、少女マンガ原作のアニメをやってみたかったんです。でも、こんなにストレートな少女マンガやアニメって実は少ないんじゃないかなと。たとえば絶世のイケメンが出てくるとか、メガネをとったら美少女みたいな、わかりやすい特徴のあるキャラクター設定があるものも多い中で、「アオハライド」はとにかくストレートで等身大の高校生が描かれている。だからこそ、ドラマとか映画とか、実写っぽい雰囲気、リアリティを意識してやりたいと思っています。あとはやっぱり「画が動く」ことがアニメの強みだと思うので、映画やドラマのようにリアリティのある客観性を持たせつつも、原作の世界観をまっすぐ届けていければいいなと思います。
───少女マンガの雰囲気をアニメで表現するのは難しいのかなと思うのですが、どのように取り組んでいますか?
吉村 アニメって本編は20分しか尺がないので、そこで1話数の起承転結を見せるのはなかなかタイトな作業なんですよ。
───ドラマや映画づくりと、アニメづくりを両方されている感じなんですね
武井 監督がわりと早い段階からおっしゃっていたのが、挿入歌を入れたいということでした。まさにドラマっぽいつくりですよね。
吉村 そうですね。さっきも少し尺の話をしましたが、20分の中でオープニングとエンディング以外に曲をかけるのって、結構大変な尺を使わないといけないので、これもなかなか難しくて。でも今回は恋愛ものなので、月9みたいなといいますか、ドラマのラブストーリーということを意識して作りたくて、挿入歌のお話をしました。トレンディドラマ(笑)っぽく、分かりやすく盛り上げる演出を入れたかったんです。
武井 挿入歌を仮ではめてみたときに、実際すごく盛り上がるシーンになっていました。
吉村 双葉が洸と神社で出会って、また昔のように戻れるんじゃないかと思うシーンで、挿入歌をかけたんですね。1話としてはそこが一番盛り上げどころだと思うので、一番分かりやすく目立たせる感じにしたのですが、思った以上に挿入歌が効果的で、すごくドラマっぽい感じになりました。
違和感のないようにオリジナルシーンを入れていく
───1話のコンテを拝見しました。
吉村 基本的には原作どおりで、オリジナルシーンも見ていて違和感がないものにしたいと思っています。ドラマを追って行く中で自然にシーンを入れ込んだり、逆に原作どおりにやっても違和感があるようであれば少し遠回りしてでも自然な流れに持っていったりするという作り方を意識しています。
───二人が再会する神社を、最初に登場させていますよね。
吉村 そうです。コミックスでは「unwritten」(アオハライドの序章的な位置づけの話)が1話の前に収録されていますが、アニメは原作の1話から始まります。「unwritten」の内容はもちろんその後、回想シーンなどで出てくるんですが、神社の位置関係や場所はより分かりやすくしておこうと。後半に二人が再会するドラマを見せる場所でもあるので、自然に入りやすくするために前半に持ってきて組み立てた感じです。
───セリフも原作に忠実だと感じました。
吉村 少女マンガって心の声が多いんですよね。それをどこまでやるか、という話になって。基本的にその部分は少し客観的に、芝居で見せるとか、状況で見せるという間を作って、心の声よりはしゃべっているセリフで空気感を作っていくことにしました。
(小林美姫)
後編に続く