画面にまず映し出されるのは、こんな手書きの文章。
〈僕の悪い予感が当たった。
「ぼん」こと、ねえさんが初めて描いたボーイズラブ(BL)の同人誌がネットにさらされ、嘲笑の対象になっているのを僕が発見してから、約一か月が過ぎた。
その間ねえさんはひどく落ちこんでいたのだが、突然、「肉便器と連絡がとれない! おかしい!」と発奮し、とてもやっかいなことを思いついてしまった。
肉便器救出作戦──東京で彼氏と同棲中の親友「肉便器」の家を突撃し、彼女を連れて帰るというのだ〉
つらい。
「ぼんとリンちゃん」は、美少女ゲーム&アニメ、ボーカロイド、それからBL(腐女子)などのオタク文化をリアルに切り取った作品だ。茶化すでもなく肯定するでもなく否定するでもない、そのままその辺のオタクをぽんっと出してきたような描写が続く。本当につらい。
上京してきたぼんとリンちゃんは、作戦に協力してくれるネット友達「ベビちゃん」(モンハンで知り合った42歳男性)にお土産を持っていこうとして、アニメイトの同人誌コーナーを物色する。