みなさん女子高生の制服が好きですか。
好きですよね。
では話を始めましょう。

そもそも「なぜ好きか」という哲学的な問いがあります。
私服の女子高生じゃなく、なぜ「制服」に惹かれるのか。
ヒントになる二冊の本をご紹介します。

上月さつき『制服嗜好』
あらゆる制服の構造について、イラストで詳細に解説している本です。
セーラー、ブレザー、セーラーブレザー(ブレザーのえりがセーラーのものです)などを分類し、さらにセーラーの種類を形状で分別しています。


例えば、最近のオシャレ嗜好のセーラー服には、脇の当たりでキュッと引き上げて縫い止める「ダーツ」がついているものがあります。
胸元が大きく開いて胸当てがついている「関西襟」、開きが小さい「関東襟」、襟に白いカバーをつけた「名古屋襟」と地域によって襟の開きが異なっています。
その他セーラーのライン、前開きなのか横開きなのか、ボタンがついているのかいないのか、リボン部分はどうなっているのか……セーラー服でここまでバリエーションがある、というのがずらり。壮観。

男性だと分からないパーツに、タイとスカートがあります。
『マリア様がみてる』では「タイが曲がっていてよ」なんてセリフもあります。
でもそれってどう結ぶのかさっぱりわからない。
三角タイ、リボンタイ、ネクタイ、紐ネクタイ、クロスタイなど各種タイの着け方がしっかり図解されていて、わかりやすい。

スカートはどれも同じに見えそうです。違うよ、そんなことないよ。
明確に違うのがプリーツの形状。左まわりにひだが入っている車ひだ、前と後ろから両サイドに進む箱ひだ、内側に折り込まれている内ひだ、と形状はバラバラ。
これを知るだけで、制服の見え方がガラッと変わります。

その他、制服のチェックパターン、アウターの着こなし、ローファーの構造、ソックス・ストッキングの種類など、制服だけでなくあわせて着こなす女子高生スタイルを網羅。
とにかく奥が深い。知識が深まるほどに新しい発見があるので、飽きません。

セクシャルな内容として扱っていないのも好感触。あくまでも制服の解説本です。

読んでいくと、制服ひとつひとつにこだわりの構造があることに気付かされます。
世界中から注目を集める日本の制服が、「kawaii」を追求しているのがよくわかる一冊です。

蚩尤『制服至上』
台湾の実際にある制服を着た少女たちを、54校100枚超えで描いたイラスト集です。
実に2年の歳月をかけ徹底的に調べただけあって、制服の縫い目、プリーツの形状、タイの特徴、チェック柄などが正確。
もうこれ資料集だよね。

最も目を引くのは、ほとんどの学校の左胸に、数字や文字が入っていること。

これは学校名、学年、クラス、座席番号と名前の刺繍。名札のようなものです。
学校によっては数字だけのものもあります。日本にはほとんどありませんので、調べてみるのも面白いでしょう。

学校データが載っているのも特徴。学校名、住所、創立年、旧名などが掲載されています。

制服に関しての情報は徹底的。イラストの補足として校則も載っています。これどうやって調べたの?
例えば国立蘭陽女子高級中学の解説。

「黒のプリーツスカートは二十四本ひだで、丈は膝上膝下五センチ以内。シャツはスカートの外に出して良い。靴下は白黒地のコットン素材で、くるぶし以上膝までの長さ。靴は黒のシンプルな先の丸い革靴で、メッシュやスタッズなどの装飾のあるものやブーツは不可」

調べすぎ。すごい。
愛を通り越して、「制服学」になっています。

この本で是非読んでおきたいポイントの一つが、台湾の日本統治時代の部分。
当時あった制服でかわいいものは、現在の制服と並べて描かれています。
創立年月日が日本統治時代の場合「一九四〇(昭和十五年)」と、記録されているのも興味深い。

1920年ごろは、台湾籍の女学生は漢族の伝統服に日本の袴を合わせたものを着ており、日本籍の女学生は小振り袖に袴をあわせていた制服を着ている……など、日本の統治があった頃、日本と台湾の制服が混じっていた頃、現在の台湾と、時代ごとの制服が見られる貴重な資料になっています。
別に政治的な考えは一切入っておらず、制服を着ている女の子たちはみんな楽しそうにしているのが、この本最大の特徴でしょう。
制服の女の子はかわいいのです。

その他、台湾独特の儀隊(マーチングバンド)や、看護科の制服なども描かれており、ボリューム満点。
驚くのは、これがまだ台湾の北だけで、中部、南部の女子高生制服図鑑の刊行を予定している、ということ。
ポップでかわいいイラスト集であると同時に、台湾を網羅した制服解説書の決定版になりそうです。
日本でもこういうの無いですかね!?


女学生の制服は、海外では「seifuku」で通じるくらい、男女ともに惹かれる不思議な服。
日本と台湾の制服の、仕組みや構造、歴史を追っていけば、その魅力が見えてくるはずです。


上月さつき『制服嗜好』
蚩尤『制服至上』

(たまごまご)