2015年1月8日からスタートした新ドラマ「美しき罠〜残花繚乱」(TBS)。原作はエロティックホラーの名手・岡部えつの小説『残花繚乱』
《優しい、女らしい、陽気などと男から言われているような女ほど、抜け目がない。世間知らずの箱入り娘のような女こそ、背中に計算しつくした策略を隠している》といった、女のこわさがサラリとした筆致で描かれていて、ドキリとする作品だ。脚本は「ラストフレンズ」(2008)や「八日目の蝉」(2010)をはじめ、数々のヒット作を手がけてきた浅野妙子が担当。

田中麗奈演じる主人公・西田りかは、勤務先の常務・柏木荘太(村上弘明)と3年越しの不倫関係にある。二人の関係に気づいた柏木の妻・美津子(若村麻由美)は、旧知の間柄である青年である落合圭一(青柳翔)をりかに紹介。その結果、美津子の目論見どおり、荘太とりかは別れることになる。“終わりのない恋”と思い込んでいた関係があっさり終了したことにショックを受けつつも、新しい恋に踏み出そうとするりか。しかし、その行く手にはさまざまな罠が仕掛けられていて−−。いやはや、女の人生には落とし穴がいっぱいあるんですね。根はマジメというキャラなだけにすぐ罠にかかる田中麗奈がかわいいやら、切ないやら。

1話・2話に登場した7つの「罠」をもとに、ドラマの見どころを探っていきます。

●罠その1 恋敵がいると“愛され”認定のハードルが下がる

りかと美津子の初遭遇は、従業員の家族を職場に招いて親睦を深めようというイベント「ファミリーデー」。
仲睦まじげな柏木夫婦の姿にショックを受けるりかに、荘太はメモを握らせる。いまどき、まさかの逢引メモ! さすが20歳年上の男です。傍目には“ヤンチャな俺”を楽しんでるようにしか見えない男の行動も、現在進行形の女には「本当に愛されているのは私だと、あのとき思った」と響いちゃうんですな。妻というわかりやすい敵がいると、“愛され”認定のハードルがダダ下がり。

●罠その2 純愛と「都合のいい女」は紙一重

荘太とつきあっていた頃のりかは、とことんけなげ。狭いワンルームのキッチンで、手作りおでんを仕込み、荘太をもてなす。「いい嫁さんになるな」「じゃあもらってくれる?」という会話までとことん昭和。“「日曜日に会って」と言わない。「次ぎはいつ?」と聞かない。彼の未来を欲しがらない”というのが女の矜持。でも、その矜持のおかげで男は安上がりに情事を楽しめちゃうわけです。でも、“家で高いワインを飲んでいる彼が、ここでは安酒と手作りのおでんをおいしいと言ってくれる。
たったそれだけでこんなにも幸せだ”と、りかちゃん幸せそうで胸が痛い。

●罠その3 欲望に忠実な男はかわいく見える

1話・2話を観て驚いたのが荘太の言動。いちいち無神経だし、ろくでもない。得意げに「(誕生日は)9日だろ」と言った後、カレンダーを見て「あ、日曜か……」とトーンダウン。「じゃ、会えないね」「別にいいよ」と、りかに言わせるし、次いつ会えるのかも明言しない。でも、妻が実家に泊りがけで出かけると知った途端、「今度の日曜日、予定が空いた。映画でも観に行こうか」。なんてずうずうしい! でも、ちょっとかわいい。なんてほだされてると痛い目にあうのが、このタイプ。別れた後の態度も、どうかと思うぐらい身勝手だった。でも、こういう男に限って、予想もしないタイミングでとてつもない優しさを見せて、リバウンドを誘発しかねない。りかちゃん、どうかご武運を!

●罠その4 男は朗らかな女の悪意に気づかない

若村真由美演じる美津子は、したたかを絵に描いたようなセレブ妻。
ひとめ会ったその日に夫とりかの関係をかぎつけ、興信所を雇って裏をとり、自分に好意を寄せている圭一(青柳翔)を使って、二人の仲を引き裂く。その策略もさることながら、朗らかな妻ぶりがすごい。愛人宅から帰ってきた夫を「おかえりなさぁい!」と明るく出迎え、夫の目を盗んでキーホルダーを開き、合鍵チェックする。「あの女、許さない」と憎悪がほとばしらせるのは一人でいるときだけ。夫はもちろん、圭一にもそちら側の顔は隠している。

●罠その5 ライバルを完璧に叩きのめしたくなる
美津子の思惑通り、りかは荘太と別れる。しかも、別れ方がひどいのだ。「断ったら疑われる。……と思わないか」と、無理やり美津子の誘いに応じさせた挙句、「別れよう、しおどきだ」だもん。しかも、「誠実ないい男だよ。結婚するにはもってこいだ」「俺はこれ以上、君を振り回したくない」と畳みかける。マジか。
落ち込み、仕事も手につかないりかのもとに現れたのは天敵・美津子。「(見合いの)お返事をうかがいに来たの。どうかしら?」と、りかを楽しそうになぶる。でも、これが余計だった。りかは美津子と圭一との関係に気づき、美津子に一矢報いたい一心で「結婚を前提に圭一さんとおつきあいさせてください」と宣言する。

●罠その6 一方的に想われるのはうっとり蜜の味
りかは美津子に復讐するため、圭一は美津子への思いを断ち切るため、交際をスタートする。美津子は面白くない。「やっぱり女は、いくつになっても男の人にあがめられていたいじゃない」とエステで愚痴り、「きっと何か魂胆があると思うの」と、りかに敵意を燃やす。「私は不倫が大嫌いなの。不倫するような女には成り下がりたくない。そうなったら荘太さんと寝て、私を苦しめてきたあの女たちと同列になっちゃう」というのが、美津子の持論。しかし、同時に若い男に「僕の気持ちはわかってるはずだ」と口説かれるお楽しみも手放したくない。
なんせ、“圭ちゃん”といるときの美津子は女子力全開。夫といるときよりもかわいらしい。

●罠その7 罠を仕掛けているうちに目的を見失う
おもしろいように罠にかかっていく、りか。一方、美津子の罠はどんどん手が込んでいく。「圭ちゃんにおねだりするなんて最後の最後」と圭一に互いのイニシャルが入ったブレスレットを買わせ、りかに見せつける。もう、何がしたいのかさっぱりわからない。荘太を吹っ切り、圭一との恋に踏み出すつもりだったりかは再び大ショック。会社から帰る道すがら、泣きながら歩いていると、一台の車が路肩に止まる。運転席から下りてきたのは、荘太だった。ほらー! 焼けぼっくいフラグ立っちゃったじゃん!!
女としての戦闘力の高さと、詰めの甘さのアンバランスさがたまらない美津子。第三話では何をしでかしてくれるのか。今夜9時から!
(島影真奈美)
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