早稲田大学。
言わずと知れた日本を代表する私立大学であり、受験では難関校としてもおなじみだ。
そこに在籍する学生は、学歴コンプレックスとは無縁……と多くの人が思うだろうが、そんなことはない。早稲田のなかには、「本キャンコンプレックス」というのものが存在するのだ。

何のことだか分からない人も多いと思うので、順を追って説明しよう。「本キャン」とは、早稲田大学のメインのキャンパスである早稲田キャンパスのこと。なお、そのすぐ近くには戸山キャンパスがあり、西早稲田キャンパスも徒歩圏内と、早大の主要キャンパスはこの付近に密集している。そして「本キャンコンプレックス」とは、所沢キャンパス(以下、所キャン)に通う学生が持つコンプレックスのことだ。


「僕の在籍する『人間科学部』と『スポーツ科学部』がある所キャンだけが、移動に1時間以上かかる離れた場所にあるんですよ。でも所キャンの学生も本キャンに憧れが強いから、全学部生が履修できる『オープン科目』で本キャンの授業を選択することが多い。あと所キャンのサークルの大半は、なぜか新歓コンパも本キャンの近くで開催します(笑)。僕も本キャンで授業を受けてはじめて、『ああ、自分は早大生なんだ』と実感できましたね」
早大生の「本キャンコンプレックス」とは?  現役学生に直撃!
話を聞いた人間科学部 人間環境科学科6年生のふみくん。ブードゥー教をテーマにした卒論を書き上げ、今年3月に卒業予定。真冬でも半ズボンがポリシー。

そう話すのは人間科学部人間環境科学科の6年生・ふみくん。ネットで話題を呼んだ「所沢キャンパスを高田馬場に近づける会」というサークルの考案者でもある。今回は、その彼に所キャン生の本キャンコンプレックスの根深さについて聞いてみた。

早大生の「本キャンコンプレックス」とは?  現役学生に直撃!
ふみくんが考案した「所沢キャンパスを高田馬場に近づける会」。フリーペーパー内の記事として考案したダミーサークルで活動実態はないが、ウェブ上で拡散された結果、入部希望者も現れた。

「もちろん、明確な目的を持って所キャンの学部、学科を選んだ人はコンプレックスは少ないでしょうけど、僕みたいに本キャンの学部に受からず、“早稲田ブランド”欲しさに入学した人はコンプレックスの塊です。僕なんて、早大生だと人に言って『早稲田ってスゴいね!』と褒められても、『いやいや、オレ人科(人間科学部)だし』と卑屈になるし、『人科なんでしょ?』と下に見られたら見られたで『いやいや、でも早稲田だから!』と怒りますから」

複雑すぎる自意識だ……。そして所キャンの学生には、本キャンのサークルに入る人も多いのだそうだ。

「所キャンは早大生の中で『所沢体育大学』とも言われていて、文化系のサークルがあまりない……という理由もあるんですけどね。もちろん所キャンの学生だとしても、本キャンのサークルは温かく迎えてくれますよ。『ああ、はるばる所沢から……』くらいにイジってもらえる方が僕は嬉しいんですが、上から目線で『通うの大変じゃない?』とか言われるとカチンと来ます」

しかし本キャンでの活動にのめり込みすぎると、所キャンでの孤立が深まるというジレンマも。


「所キャンは最寄駅にもバス移動が必要だし、近くのコンビニまでも徒歩15分。外に出ると戻ってくるのが面倒なので、授業の空き時間も中で過ごさなきゃいけないんです。本キャンなら近くに色んな店があるし、ぼっち飯も余裕ですけど、所キャンで友達がいないのは相当辛い。僕みたいに食堂の端っこで、1人寂しく『どうぶつの森』で遊ぶはめになります」

ふみくんは所キャンでの孤独に耐えつつ、本キャンでのサークル活動に生きる道を見出したそうだ。

「『秘密結社笑い飯』というサークルに所属して、所キャンの学生なのに1~2年くらいは早稲田のアパートに住んでました。そのサークルで、早稲田祭で童貞王を決める企画とか、人間のケツを叩く『人間太鼓の達人』という企画を考えて、それが本キャンで話題になったことで、本キャンコンプレックスが少し解消された感じがします」
早大生の「本キャンコンプレックス」とは?  現役学生に直撃!
ふみくんが考案し、早稲田祭で披露した『人間太鼓の達人』。本キャン内で話題となったが、「人科の人から『あいつ人科のくせに!』って言われた」とのこと。根深いコンプレックス!

もちろん所キャンには所キャンの良いところがあるという。


「キャンパスは森に囲まれていて、のんびりした雰囲気はやっぱり心地いいです。スポーツ系のサークルに入れば、体育館、プール、グラウンドなどの豪華な施設も存分に使えます。学生が本キャンより少ない分、一度仲の良い友達ができれば、高校のクラスの延長のような感じで楽しく過ごせると思いますよ。僕ですらもゼミに入った後は少し友達も増えましたから」

実際、スポーツや福祉、コンピューター関連の勉強をしたい人には、専門の学部・学科が用意された所キャンは人気だそう。早稲田ブランド欲しさに通うのでなければ、勉学やキャンパスライフに思いっきり打ち込めるいい場所なのかも!
(古澤誠一郎)