知らないうちに増えているものの一つが大仏である。『巨大仏巡礼』(扶桑社刊)の著者で既に400体以上の大仏を訪問している大仏ハンター・クロスケ氏によると、年間に約15~20体のペースで増えていて、500体を超えるのも遠くない話だそうだ。
中には変わった大仏もあるそうで、クロスケ氏に聞いてみた。

●そもそも、大仏とは?
本題に入る前に、大仏の定義を伺った。クロスケ氏によると、仏像の身長が4.82メートル以上(座った状態『坐像』だと半分の2.41メートル以上)が大仏と呼ばれるそうだ。この数値は尺貫法による「一寸六尺」で、お釈迦様の身長と言われている。“お釈迦様より大きい仏様”ということで「大仏」と呼ばれるようになった。ひとつ知識が増えたところで、変わった大仏のお話を。


●秩父のハンドメイド大仏~空滝大不動尊~
秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

なんとも個性あふれる表情の不動明王だ。
「名勝である秩父華厳の滝の上に鎮座しています。どうやら、地元の左官職人が観光地の目玉にと建立したようですが、技術はあっても仏像の知識というかセンスがいまひとつなかったのか……。見たことない形のイヤリングらしきものもついてますから」
秩父華厳の滝に訪れた観光客が見上げると、滝のさらに上方にこの不動尊が視界に入るため、写真を撮る時に不動明王が映らないようにする人もいるとか、いないとか。

●名古屋大仏はアジアンテイスト
秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

大都市には必ずといってもいいほど大仏があるという。中でも愛知県は個性派ぞろいと言われるほど変わり種が多い。
しかも、すぐそばにマンションがあるような都会の真ん中に鎮座している。
「千種区にある『名古屋大仏』は台座を含めると15メートルもの高さがあります。1987年に建立された大仏で、全身は緑色、唇や目は金色で、アジアンテイストです」
本堂には未成年には見せられないような神仏もあり、成人しか拝観できない場所もあり、拝観時に頂けるお守りにはとんでもない秘密が入っています。

●こちらもインパクト大
秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

茨城県大子町にある大子地蔵尊は、昭和39年につくられたコンクリート製の地蔵尊だ。高さは10メートル。
「周辺にあるアパートや民家と比べると、違和感がすごいです(笑)。
しかも、地蔵尊というと普通は坊主頭ですが、こちらはベレー帽をかぶったようになってます。頭巾だと思うのですが、これ帽子ですよね……」

●仙台にある、日本唯一の外骨格大仏
秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

「大本山成田山仙台分院」に鎮座する「成田山大仏」。高さは8.4メートル。仙台の街が一望できる建物の屋上にあるが、注目は裏側にある。
「鉄骨が組まれているのが見られます。表からは全く見えない位置に組まれているところが設計努力とデザインの情熱が伝わってきて凄いです。
建築技術の推移を集めたものといえるでしょう。2003年に建立された大仏で、東日本大震災においても、損傷はなかったそうです」

●こちらの大仏が珍しい訳
秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

珍しいといえば、こちらは神戸にある鵯越(ひよどりごえ)大仏。一見、普通の大仏に見えるが、は非常に珍しいものだとか。
「市の公共事業で建立された珍しい“公共事業大仏”なんです。昭和7年に、市立鵯越霊園に建立されました。ひび割れが目立ちますが、青銅に見えても実はコンクリート製であることからして、当時の左官技術の高さが分かります」

●「大仏」にハマった訳
今や「大仏ハンター」として全国を飛び回っているクロスケ氏だが、なぜ大仏にハマったのだろうか?
「もともと、ダムや工場や滝といったような大きなものが好きだったんです。
会社勤めからフリーランスになる時に、キャンピングカーを使って夫婦で日本中を旅行していると、色々なところで大仏を見つけまして。しかも、僕が生まれた後に建てられたものが多いことに気づいて、一気にハマりました」
遥か昔に建てられたのなら分かるが、現代に新たに大仏を建てられた理由は確かに謎である。この件について、クロスケ氏は分析する。
「一つは、分譲墓地のシンボルとして建立されたもの。牛久大仏や神戸の鵯越大仏はまさにその例です。もう一つは、これは僕の推測ですがある程度お金を持った方が、あることがきっかけで建てたものです」
“あること”とは、夢枕に先祖が現れて「大仏を建てなさい」と言われたような例。

「おそらく、お金持ちにしか聞こえない“周波数”のようなものがあると思うんです。それを『お告げ』というんじゃないかと」
なるほど。なんと贅沢なお告げなんだ。ちなみに、それなりの大きさの大仏を造ろうとすると、安く見積もっても一千万はかかるのではないかと、クロスケ氏は遠くを見ながら言っていた。

●空から牛久大仏をみてみよう
秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

大仏が好きすぎるクロスケ氏は、小型機を自らチャーターして牛久大仏の上空に行ってみることを決意した。
「率直な感想は『空から見ても大きい!』です(笑)。大仏の顔の角度が思った以上に下を向いていることも驚きました。まっすぐに前を向いていると思っていたですが違ってましたね。足元にいる人々を慈悲の眼差しでも守っているようでした。頭の上には避雷針や航空機衝突防止灯が設置してあるのにも驚きです」

●ますます増える大仏ファン
大仏や仏像が好きな女性も多い。中でも“仏像界のアイドル”と名高いTBSの小林悠アナウンサーは、一人で各地の大仏(仏像)を見に行くほどだ。玉袋筋太郎氏(浅草キッド)と共に出演しているラジオ番組『たまむすび』(平日13時)でもマニアックな大仏トークをすることもあり、出演する金曜日は大仏ファンも多く聴いている。日本にラジオの放送局は100局以上あるが、これほど大仏が好きな人が喋っている情報番組は他にないだろう。クロスケ氏も聴いているそうで、大仏ファンはラジオの電波の波にのってますます増えていきそうである
(取材・文/やきそばかおる)

●イベントも開催
『巨大仏ナイト! ~大人気巨大仏ハンター達が集めた全国の巨大仏・秘仏・ヤバ仏すべて見せます!』
3月1日(日)17時開場、17時半開演
東京カルチャーカルチャー(お台場観覧車のすぐそば)
大仏ハンター大集合。巨大仏の秘蔵写真を見て、語り、愛でまくるイベント緊急決定!

出演者
・“巨大仏ハンター”クロスケ(『巨大仏巡礼』著者)、
・“巨大仏像写真家”半田カメラ(『恋する巨大仏』、『日本ワタシ遺産』)
・“サラリーマン大仏ハンター”島谷達也
・“高野山真言宗西禅院徒弟尼僧で漫画家” 悟東あすか
・“アプリ仏像でGO!制作スタッフ”前島慶太(SCアライアンス)

『巨大仏巡礼』(クロスケ著:扶桑社刊)発売中
秩父の不動明王の顔がちょっと変だ~大仏ハンター・クロスケ推薦 珍大仏

クロスケ氏が足を運んで集めた巨大仏・秘仏65仏をオールカラーで収録。数々の巨大仏を世に送り出した「翠雲堂・松戸工場見学」特集も掲載。滅多に公開されることのない“仏像工場”の様子は必見。小林悠アナウンサーとのマニアック対談も収録。