細田アニメがどうしても描きたいもの
細田守監督作品は、辻褄が合わない。
わざとあざといカットを入れてくる。
説明不足な部分も多い。
それでも多少のムリは押し通してしまう。
なぜなら、どうしても描きたい理想があるから。
ムリしただけの映像を、ちゃんと見せてくれる。
「バケモノの子」で監督が描きたかったのは、父と子。
イメージイラスト通りです。

めっちゃたくさんの「父」
熊徹だけが父かと思いきや。
あっちもこっちも父性のオンパレードでした。
まず画面にいる熊徹。粗雑で、一人ぼっちで、乱暴で。連れてきた人間の九太とは本音で喧嘩ばかりして。
だけど、ついてきて「強くなりたい」という九太を、ちょっとずつ気に入って、仲良く喧嘩を繰り返す。
父性の中の「本音」と「共に育つ」部分、そしてとある重要な部分を担います。
彼と一緒にいるブタの百秋坊は、父性の中のにある冷静な「良心」。
皮肉屋の猿の多々良は「現実」を突きつける役割。

途中から出てくるヒロインの楓。彼女にも「父」が宿っています。
父性の中の「知識」「未来を考えること」「約束」。
男に置き換えても十二分に成立するキャラ(でもやっぱ女っ気ないからここは女の子がいいな!)。
後半の押しの強さには、まいったね。
そして、本当の父との出会い。
もう父だらけ。
たくさんの父の中には「これはどうなんだろう?」という部分も、多分ある。
ぼくはあった。でもあくまでも「細田守の理想」がこの作品。
パンフレットによると、『おおかみこどもの雨と雪』のあと細田守家には、男の子が生まれたそうです。
「その子が生まれてきて考えたのは、現代において子どもは誰が育てていくんだろう、どうやって大きくなっていくのだろうということです」
「本当の父親だけでなくいろいろな形の父親や師匠が世の中にいて、そんなたくさんの人たちとの関わりが、ひとりの子どもを大きく育てていくのではないかと思いました」
(パンフレットより)
見守り続ける存在
なんせ父の一人である熊徹は、九太が「強くなる」ための父です。
アクションに次ぐアクション。『ベストキッド』を思い出します。
熊徹の格闘シーンは、さすが獣のバケモノだけあって戦い方が特殊。
ある程度落ち着いてきたなーと思ったら派手なシーン、また落ち着いてきたなーと思ったらよく動くアクション、という繰り返しなので、飽きない。
ぼくが見た回では、子どもたちの笑い声がしばしば聞こえました。
たくさんの「父」の間を行ったり来たりする九太。
彼をずっと見守る存在がいます。
それが、チコ。まっくろくろすけを白くしたような存在で、九太の髪の中にずっといます。
何年も。
全ての父を見ているこの存在も、また「父」です。
しっかし、宮崎あおいの演技は、感情的な少年の爆発を出しきっていて、見事。
ショタ(少年好き)とケモナー(ケモノ型人間好き)に目覚めても、仕方ないね!
(たまごまご)