
東京都現代美術館の会田誠作品に対する「撤去要請」の論点を整理した前編に続き、尖った表現活動に寄せられるクレーム問題などについて、ライター・編集者の飯田一史さんとSF・文芸評論家の藤田直哉さんが語り合います。
「子どもしか入れない」おかざき乾じろの展示に藤田突入!?

飯田 僕は今回問題になった会田家の展示よりも、同じ企画展で展示されている、おかざき乾じろ(岡崎乾二郎)作品のほうが、上から目線で子どもに語っていて、むかつきましたね。
藤田 おかざき乾じろさんの展示は「大人しか入れない場所はいっぱいあるのに、子どもしか入れない場所は少ないから」という理由で、子どもしか入れない部屋をつくって作品の展示をしているものですね。
ながーい説明書きがあって、「おとな」はピカソを「わからない」と言い合って世間に合わせて、自分の眼で観たり楽しんだりしないんだ、と書かれてありましたよね。で、ぼくは気づいたんですよ、これはとんちだって。
飯田 とんち?
藤田 しっかりあの文章を読んで自分で考えた観客は、「自分の眼で作品を観ている」すなわち、定義上、おとなじゃなくて、こどもなんだって。だから、それに気づいた俺は、入れるんだと思って、頭に電球がひらめいたんですよ。
飯田 入ったの?
藤田 入り口のお姉さんに、ドヤ顔で、「そういう趣旨ですよね! 自分の眼で見て考えて楽しんでいるぼくは子供だから見れるってしかけですよね?」って訊いたら、「違います」って。