パリで日本の駅弁販売へ!フランス人に受け入れられるのか 
パリ・リヨン駅

パリで日本の駅弁が売り出される。2015年12月1日から2016年1月31日の2カ月間、パリ・リヨン駅ホール2で期間限定販売し、パリっ子に駅弁の魅力をアピールする予定だ。
じつは同イベント、過去にシンガポールと台湾で行われている。今回、次の候補地としてパリが選ばれた理由は何か? 企画を手がけたJR東日本のグループ会社「日本レストランエンタプライズ」に聞いてみた。

日本で定番の弁当を用意


「パリはBENTO(弁当)の知名度が高く、欧州でも日本食への関心が高い場所だからです。そこで駅弁の可能性を検証しようと思いました。駅弁は車窓に流れ行く景色を眺めながら楽しむもの。よって、パリ市内でもTGV(フランス版新幹線)の長距離線が発着する最大のターミナル駅、パリ・リヨン駅を販売場所としました」(日本レストランエンタプライズ担当者)

販売される弁当は5種類。フランスのご当地食材、シャロレー牛をすき焼き風に味付けした「パリ・リヨン弁当」15ユーロ(約2000円)、サーモントラウトの塩焼き、玉子焼き、かまぼこ、野菜の煮物を並べた「幕の内折詰弁当」15ユーロ(約2000円)、てんぷらや巻きずしを入れた「日本のおもてなし弁当」13ユーロ(約1800円)、いなりずしや太巻がセットになった「助六寿司」8ユーロ(約1100円)、おかかと鮭のおにぎりに唐揚げやエビフライを添えた「おにぎり弁当」8ユーロ(約1100円)と定番がそろった。


「代表的な献立の弁当を3種類(パリ・リヨン弁当、幕の内折詰弁当、日本のおもてなし弁当)に、軽めものを2種類(助六寿司、おにぎり弁当)加え、5種類にしました。本当はもっと様々な弁当を用意したいのですが、フランスには日本のような製造拠点を持っていませんし、期間限定ということもあり、これらを選びました」(同)
パリで日本の駅弁販売へ!フランス人に受け入れられるのか 
パリ・リヨン弁当

フランスは日本文化に好奇心が強い人が多い。一方で文化の違いも横たわる。例えばフランスの長距離列車の場合、食堂車はあるものの通常の座席ではサンドイッチ程度で、そこで本格的に物を食べることは、(もちろん気にせず食べ散らかすフランス人も多いが)あまり肯定的ではない。

「日本とは環境が違うため、駅弁文化がそっくりそのままフランスに導入されることは難しい面もあると思います。しかし、こういう楽しみ方もあるんだということを、駅弁販売でフランスの人々に、新しい選択肢として提案していきたいです。
そのためキオスク内ではイベントスペースを用意し、パネルや映像で日本の様子を紹介します」(同)

ご飯に味をつける工夫


食べ方の違いも日仏で異なる点だ。フランス人は口の中でおかずとご飯を合わせて食べる習慣がない。例えば現地の日本食レストランを訪れると、どんぶりのおかず部分だけを食べ、下のご飯が残っている光景を見かけることが、しばしばある。これも考慮に入れた。

「日本人は味の濃いおかずの後に白飯を口に入れ、その濃さを中和しつつ食べる習慣があります。一方でフランス人は別々に食べます。
また日本では主食となる白飯が、フランスではおかずとして捉えられ、プレーンな味だとフランス人は残してしまうこともあります。よって、ご飯単体でも食べてもらえるように、ふりかけ、ちらしずし、炊き込みご飯など味を付け、極力白飯のみにしないようにしました」(同)

パリで日本の駅弁販売へ!フランス人に受け入れられるのか 
幕の内折詰弁当


今回、弁当はフランス用に内容を変えるのではなく、基本的に日本の駅弁製造工場のレシピ通りに味付けをする。ただし、前述したようにフランス人は口の中でご飯を合わせることをしないため、1品1品日を日本のままに味付けると、塩辛く感じることがあるという。

「以前、試食会を行った際に、食べ終えた時にしょっぱさを感じるというご意見をいただきました。ご飯と一緒に食べれば、日本のままの味付けでちょうど良いですが、フランスでは単体で食べることを想定し、本来のものより少々薄めの味付けになるように調整しています」(同)

試行錯誤の末にデビューを果たすパリの駅弁。果たしてフランスに日本の駅弁文化は広がっていくのか。
新たな食の取り組みに注目だ。
(加藤亨延)