「現代病」をテーマにしたオムニバスコント番組
テレビの豪腕ディレクター・酒井におぎやはぎ小木が扮する「撮れ高病」。AV女優を処女だと信じ込む男・発田をオードリー若林が演じる「ガチ恋病」。ある中華料理屋で偉そうにレビューをしまくる男(オードリー春日)が登場する「レビュアー病」。記事の見出しを煽るあまり中身とはかけ離れたとんでもないタイトルを考案する男・時村をおぎやはぎ矢作が演じる「バズりたい病」……。

(C)「SICKS」製作委員会

(C)「SICKS」製作委員会
背景もしっかり作り込まれ、エキストラも入ってそれらしい状況の中、それぞれのキャラクターが立ったオムニバスコント番組。それが第1回放送時の印象だった。全6本のコントが終わった後、謎の男(古館寛治)が登場したのは気になった。でもこの時点では、多くの視聴者は彼の存在より、「フルボッコ病」のオタク女子(清水富美加と℃-ute中島早貴)が繰り広げるハイスピード会話に夢中だったのではないだろうか。

(C)「SICKS」製作委員会

(C)「SICKS」製作委員会

(C)「SICKS」製作委員会
コントどうしがつながりはじめる……
第2回放送。初回でもインパクトを残したアンガールズ田中演じる医師・町田の「リテラシーゼロ病」。危機管理意識が欠如しているために、見せてはいけない写真が次々と多くの人の目にさらされてしまう男のコントだ。町田はここでアイドルのなりすましメールに引っかかるが、その差出人が「中田杏」。

(C)「SICKS」製作委員会
いよいよエンディングの物語がそれぞれのコントに浸食し始める第3回。まず、「バズりたい病」の時村、「撮れ高病」の酒井が前回エンディングで作られていた薬を飲んでいる。さらに時村は「フルボッコ病」のリコ&マユの同人誌を読まずにレビュー。その「フルボッコ病」では前週にも登場した「アイドル・中田杏」のことをボロクソに言う二人。コント同士がどんどんつながってゆく。決定的なのは、「ガチ恋病」のAV女優と発田のカップル。コントの枠を超えて「レビュアー病」の中華料理屋にやってきた! そう、第1回からこの二つのコントには同じ岸井ゆきのが登場していた。しかしコント番組で、キャストが複数のコントで別人を演じるのはよくあること。これもそのひとつかと思いきや、まさかの同一人物だったのだ。
エンディングでは「リテラシーゼロ病」の町田医師のもとに謎の男がやってくる。町田は大金の代わりにあの薬を受け取り、男に研究室を使わせるーー。
コントなの? ドラマなの? 春日も薬を飲むの?
そして先週の第4回。第3回に引き続き、「レビュアー病」の舞台であった中華料理屋で「ガチ恋病」のコントが進行する。そしてそのまま途切れることなく「レビュアー病」になだれ込む。ちなみに、それぞれのコントがシリアスな面を見せ始めるなか、「レビュアー病」はどこかシリアスな部分もとぼけた感じがあって心安らぐ。それが春日の持ち味なのだろうか。
「フルボッコ病」のリコ&マユの部屋には「バズりたい病」の時村がやってくる。かと思えば第2回から始まっていたコント「叩かれたくない病」の課長もこの時村と同一人物であることが判明する。「叩かれたくない病」は、公務員戦隊コンプラーという戦隊の面々が、コンプライアンスを気にして出動できないというもの。今回のターゲットは「8年前に青の研究所にて研究員に対し違法なウイルスを投与、以後逃走中」の男。そこには謎の男と町田医師がともに写っている写真が……。

(C)「SICKS」製作委員会
あいも変わらずプライベート写真を流出させる「リテラシーゼロ病」の町田が射殺された瞬間、コントとドラマがぐるんと入れ替わった気がした。コンプラーがとうとう出動し、隊員(ラバーガール飛永)が誤って射ってしまったのだ。さらにコンプラーたちも何者かに射たれる。それを止めたのは、エンディングの謎の男。コンプラーを射ったのは「撮れ高病」でいつも酒井の横にいたAD(大倉士門)だ!
やがて、数人が謎の男のもとに集まってくる。「ちゃんと監視しているんだろうな」というセリフのもとフラッシュバックが流れるーー。ここで視聴者は、それぞれのコントにこっそり「監視している者」がいたことを知る。たとえば眼鏡の男は「ガチ恋病」の第1回、握手会の場面ですぐ後ろに並んでいる。第2回では喫茶店で後ろの席に。第4回の中華料理屋でも聞き耳を立てている!

(C)「SICKS」製作委員会
ちなみに、第4回では発田や時村もあの薬を飲んでいる。メインキャスト4人のうち、飲んでないのは春日演じるレビュアーだけ。その事実がいかにも春日らしくて笑ってしまうが、この先彼も薬を飲むことになるのだろうか……。
映画『ヒロイン失格』やドラマ『リアル脱出ゲームTV』の英勉が監督を務めていた理由が第4回でようやくわかった。それぞれのコントの世界観がリンクしているどころではない。エンディングの「謎の男」のもと、すべての世界はつながっていたのだ。そういえばそれぞれのコントの冒頭に時間が表示されていたのは、それぞれのコントがひとつの世界であることを示唆していたのだろうか……。

(C)「SICKS」製作委員会
この先、ドラマへと突っ走るのか? それともこれさえもフェイクで、何もなかったようにコントが続くのか? どんどん深読みしたくなってくる『SICKS』。第5回は今夜!
(釣木文恵)

(C)「SICKS」製作委員会