
絆をぶったぎるような真似をしないで
「マクベス」か!
美輪子(逢沢りな)が、多摩留に姉・ぼたん(黛英里佳)を殺された夜のことを思い出して懊悩するシーンは、殺人を犯した罪悪感に苦しむマクベス夫人が、手が血まみれになる幻を見るシーンのようでした。
このように、シェイクスピア劇のように文学的な場面や言葉遣いもよく出てくる一方で、美輪子に「絆をぶった切るような真似はしないで」と言わせます。
中島丈博先生、一直線に突き進んでいるように見えて、ところどころ揺らぎをつくります。
眞澄(伊藤かずえ)の富貴子(黛英里佳)への態度もそのひとつ。このドラマ、誰も彼もが愚かしいほど激しく動物的直感で行動しているように見えますが、動物的に若くして妊娠したはずの眞澄が、富貴子を視覚的な記憶(赤ちゃんの時の写真の傍らに写った万華鏡をみつけ、ついに、自分の子供であることを実感する)によってしか実子として認めません。
こんなふうに、酢豚の中のパイナップルのような、タピオカの中のとうもろこしのような、違和感を時々混ぜることで、狂気の鮮度が保たれます。
美輪子の分裂から生まれたヒビがどんどん広がっていって、いろんなことが崩壊していくことを期待しております。
つまるところ、自分をかばって目の前で凄惨な死を遂げた姉の亡霊に苦しみ続けるひとりの人間の贖罪の物語なのかも。
(木俣冬)
