最近、ネットで「闇が深い」と言われることが多い香取慎吾。デビュー当時から長年築き上げてきた元気で明るい少年然としたイメージ。
それが虚像であるかのようなコメントをここ数年、彼自身が度々口にしているのです。例えば「草なぎ剛以外、友達がいない」だとか、「付き合いの長い共演者・スタッフにも連絡先を教えない」とか。
極めつけは、日テレのトーク番組『おしゃれイズム』出演時の「黒いうさぎの幻覚をよく見る」との発言。本人曰く、ある時から黒いうさぎが部屋の中で見えるようになり、絵に描いたところ見えなくなったそう。以来彼は、ファン会報誌や直筆のサインなどにこの黒いうさぎを描いていると語ります。
小学校5年生からジャニーズ事務所に入り、20年以上芸能界のトップを走り続けてきた者にしか見えない景色を、彼は見ているのでしょうか……。


女装姿でマヨネーズを吸い上げる香取慎吾


そんな香取慎吾の暗黒面が公になる遥か前の2000年。彼は『慎吾ママ』という架空の人物に扮して、大ブレイクを果たしました。
きっかけとなったのは、かつて中居正広とツインMCを組んで放送していたフジテレビ系のバラエティ番組『サタ☆スマ』。その中で人気を博したワンコーナー「慎吾ママのこっそり朝御飯」によって誕生したキャラクターです。

企画の趣旨としては「いつも忙しいお母さんに朝寝坊をさせてあげる」というもの。慎吾ママこと女装した香取が早朝に一般視聴者宅へやってきて、その家の母親が寝ている間に子供たちへ手料理を振る舞うという内容でした。
定番だったのが、冷蔵庫の中にあるマヨネーズの蓋に口を付けて吸い上げる「マヨチュッチュ」なる行為。
今となっては、朝から主婦のコスプレをして人の家のマヨネーズを吸引する姿はなんともシュールです。

おそらく、自身を「芸能界が作り上げたパーフェクトビジネスアイドル」と自称する彼のこと。この時、腹の中では自分で自分を冷笑していたに違いありません。

慎吾ママの「オッハー」はパクリだった!?


さて、このように番組内企画のイチキャラクターとして世に出た慎吾ママでしたが、かなりキャラが立っていたということもあり、CDデビューを果たすことになります。曲の題名は『慎吾ママのオハロック』。このタイトルは、彼が毎回コーナー冒頭でする定番の挨拶「オッハー」から引用したものです。
もともと「オッハー」は、現在も放送を続けるテレビ東京の子供向けバラエティ『おはスタ』で使われていた「おーはー!」を拝借したものであり、いわばパクリ。
『サタ☆スマ』内で度々中居から「やまちゃん(『おはスタ』の司会を務めていた声優の山寺宏一)に、そろそろ許可とらなきゃダメじゃない?」と突っ込みを受けていた香取。それを受けて実際に慎吾ママが『おはスタ』のスタジオに赴き、やまちゃんに許可を取りにいく回も放送されていました。

PVには田中邦衛やジェームス・ブラウンも出演!


話を『慎吾ママのオハロック』に戻します。この曲、ミュージック・ビデオに香取と番組共演などでゆかりのある芸能人、笑福亭鶴瓶、菅野美穂、萩本欽一ほか、鈴木京香、田中邦衛、果てはジェームス・ブラウンなどの大物も出演するという豪華ぶりで話題を呼びました。
その効果もあってか、発売週のオリコンシングルチャートでは1位を獲得。最終的に130万枚を売り上げる大ヒットを記録し、「おっはー」はこの年の流行語大賞を獲得するなど、慎吾ママは社会現象となったのでした。


思えば、この慎吾ママを機に香取慎吾の「コスプレ俳優」路線は始まったように思われます。忍者ハットリくん、西遊記、こち亀など……ヒットしたものもあれば微妙だったものもあります。
いずれにせよ、こうした過度なコスプレを違和感なく着こなせるのは、彼のはっきりとした目鼻立ちに加えて慎吾ママとして活躍した実績があるでしょう。そして何より、アイドルという"虚像"を演じ続け、道化役に徹するのも日常となってしまった彼の実像があるように思えてなりません。
(こじへい)