『世界一難しい恋』略称セカムズ。
鮫島社長の恋愛物語、いよいよ第一部クライマックスだ。

社内恋愛のエキスパート和田師匠(北村一輝)のアドバイスによる恋愛作戦が実行される。
「好きな色は何色だ?」それで女はおまえに夢中だ。大野智まっしぐら「世界一難しい恋」
美咲と同期の新入社員を演じる清水富美加。写真は『SHIMIZU FUMIKA 1st Photobook 清水富美加』

【作戦1】
「好きな色は何色だ?」と意中の異性に聞く。
何を答えられても「そうか」と言って去る。
師匠曰く。
「質問には何の意味もない。意味のない質問だから意味がある」
どうして好きな色を聞いたんだろうと思いを巡らせることになるのだ。


【作戦2】
作戦1は、脈あり判定にも使える。
聞き返されれば、大いに脈ありだ。
あなたのことをずっと考えていたに違いない。

脈あり判定が出た鮫島社長は、調子に乗る。
社長机に腰掛けて足組んで、宣言する。
「そこまで言うんならいっちゃいますか」
誰も何も言うとらんのである。

大野智演じる鮫島社長の決めポースは、足を曲げてポツンと座る可愛い姿だ。
しょげたときは、体育座りで。
調子に乗ったときは、グンと足を回して足を組む。
大野智ファンならずとも、ニコニコしてしまうキャラクターっぷりだ。

【作戦3】
「ふたりきりになる状況をつくれ」
気にさせておいてのふたりきり作戦である。
強引に、シェフの選定にふたりで行くことにしてしまう鮫島社長。

ニセのくじ引きなんて作ったりして、視聴者は、いつ失敗してしまうんだろうって思いでドキドキハラハラである。

【作戦4】
作戦4は「移動はかわいい小型車」である。
人間は狭い空間で密着していると親近感を覚える。
使えるものは何でも使えの精神だ。
ここで露骨な緑のセーターで登場する社長、ラブリー。
ドラマのセリフで「緑か!」とツッコんだりしない。
視聴者が自分でツッコんで笑いを誘う上品なドラマづくりだ。

【作戦5】
夕陽と砂浜というベタなシチュエーションで、しかも「大人を忘れて子供になれ」という師匠の言葉。
「頭に浮かんだこと観たまんまのことを口にするんだ。大きめの声で」である。
もう失敗する予感しかない。
「海は青いな。
空も青い!」

鮫島社長のセリフである。こんなセリフに説得力を持たせられるのは大野智くんしかいないだろう。
「どうしたんですか」
「好きな食べものは何だ」
なぜ、いま、それ、聞いた!?
「松前漬けです」
なぜ、このシチュエーションで、答が、それ!?
馬鹿の会話である。
鮫島社長はもちろん恋愛音痴だが、考えてみると、波瑠演じる柴山美咲も「恋愛って何?」タイプの音痴だ。
どう考えても挙動不審な相手にも、なんでもないように「どうしたんですか?」と聞き返す胆力の持ち主だ。

「うおおおーーー」と、海に向かって走る社長。

昭和の恋愛ドラマでもやらないベタ中のベタ。
だが海の水が足にかかり「あ、ぬるい。ぬるいぞ!」叫ぶ。
絶妙な実感を口にする。
しばらくすると、「思ったより冷えてきた」とはしゃぐのだ。
メタなベタ展開のなかで、見逃しそうになる細部をしっかりとすくい上げるセリフが効く。

【作戦6】
告白である。
だが、できない。
「恥ずかしいんだったら、ベロベロに酔っ払え」
「どうしても酔わなきゃ告白できない男ごころを察してキュンとくるんだよ」という理由が強引すぎて、もう大失敗させるための伏線としか思えない。
「失敗しないで」と思いながら、展開的には「失敗しちゃうよな、これは!」と期待させる絶妙な誘導。
しかも、告白はできないが、大失敗はしない。
予想を裏切るハラハラの綱渡りである。

【作戦7】
薔薇の花束作戦だ。
またも超ベタであるが、いっそ清々しい。
ここでも完全に不審者行動の大野くんなんだが、柴山美咲は「おつかれさまでしたー」と気にもとめない様子。

そして今回の展開のすごいところは、恋愛ドタバタコメディ展開だと思ってたのが、最後におしごとドラマに転ずるところだ。
驚いた。
職場ドラマの最大の罠は「こいつら仕事してねー!」と思っちゃうことだ。
日本のドラマのトレンディーな職場は、恋愛にうつつ抜かしすぎて仕事しない。
見事に仕事しない。
まあ、恋愛ドラマだからしょうがないけど。
海外ドラマですら『ER』とか最初は働いているんだが、人間関係があれこれ錯綜してくると、仕事場でサプライズパーティーとかイチャイチャとかが増えてくる。
「仕事してんのか!」と訝しんでしまう。
セカムズ第4話も、恋愛ドタバタで、「社長、仕事してないっす!」と視聴者がそろそろ思ってきたところで、この優良仕事ドラマへの転換だ。
というか、この結末に導くために、この展開があり、そこから目をそらすために笑えるドタバタを展開し、不意打ち的にコレ!
すごい。
すごければすごいほどコミカルになる鮫島社長の仕事っぷりをぜひ観てほしい。

ドヤ顔でうまかったり、最先端を走るトガり方をしたドラマではない。
しじゅうクスクス笑えて、大野智くんの魅力を存分に引き出して、しかもドラマとしての満足感も与える。
さすが、ベテラン制作陣の仕事。
これぞテレビドラマ!

第4話。結局告白できなかったかーって後の最強の告白シーン。
あんなものを観ながらの(撮影大変だったのではないか!)告白は、恋愛ドラマ史上初なんではないか。
さて、ようやく告白して、次回、鮫島社長のMost Difficult Romance第二部のスタートである。
まだ観てない人は、huluでイッキ見するか、日テレ無料TADA!で最新話見逃し配信から観るか、えいやっと第5話から観始めるか。好きな道を選ぶべしッ。(米光一成

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