日本のホラー映画界でもっとも有名なキャラクターといって思い浮かぶのは、やはり「貞子」だろう。言わずと知れた『リング』シリーズの元凶「山村貞子」だ。
6月18日には、もう一人の人気(?)キャラ『呪怨』の「伽椰子」との対決が描かれた『貞子vs伽椰子』が公開となる。

小説が発表されたのが1991年。25年たった現在でも人気は衰えるどころか、まだまだ増殖し続ける感があるリングワールド。そのブレイクのきっかけは、'98年1月公開の映画『リング』であることに異論はないだろう。
さらに、'99年1月に『リング~最終章~』として連続ドラマ化したことで、一躍Jホラーブームの火付け役となったのも間違いない。

荒木飛呂彦も絶賛した2時間ドラマ版『リング』


では、そのブーム以前の'95年8月に2時間ドラマ化していたことはご記憶だろうか? フジテレビ系の『金曜エンタテイメント』枠で『リング~事故か!変死か!4つの命を奪う少女の怨念~』というタイトルで放送されている。

サブタイトルのせいか、よくある2時間ドラマ臭が漂っているが、これが実は傑作だった。原作である鈴木光司の小説にもっとも忠実な作りであり、『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、荒木飛呂彦ももっとも怖い『リング』として上げるほどに……。
'99年に連続ドラマ化した際には、人気のあおりを受けてビデオを再リリース。タイトルは『リング完全版』とあらためられている。

必要以上にヌードシーン多めの仕上がり


映画版では主人公が女性の浅川玲子となり松嶋菜々子が演じていたが、この2時間ドラマ版は原作同様、浅川和行で高橋克典が熱演している。
冒頭、最初の犠牲者は雛形あきこ。シャワーでずぶ濡れになってTシャツが透けたままでのご臨終となるのは、ブレイク時期寸前のサービスショットといったところか。
同じく犠牲者となるカップルは、トップまであらわになった胸を舐めまくるなど、情事に夢中な描写にたっぷりと尺が取られているが、この過剰なサービスシーンとカップルがアベックと呼ばれていることに、90年代を感じずにはいられない。


貞子の設定も原作通りに「半陰陽者の美少女」。つまり「両性具有」「ふたなり」ということである。近親相姦がきっちりと描かれているのも原作通りだ。
貞子を演じたのは三浦綺音。アイドル的立場なのに、ヌードになることを厭わない姿勢から、当時は「ヌードル」とも評されることも多かった。よって、ドラマでもヌードを大盤振る舞い。生前の貞子の登場シーンの大半は「おっぱいポロリ状態」といっても過言ではない。

テレビから出てくる貞子の設定は映画のオリジナル設定


なんだか、怖さよりもエロさが際立つ気もしてきたが、得たいが知れない恐怖が迫ってくる絶望感や、原作に忠実な「呪いのビデオ」の映像も秀逸。
そして、ホラーよりもサスペンス要素が強めなのがポイントだ。貞子のキャラクターからくる怖さではなく、呪いによりジワジワと追い詰められていくムードが怖いのだ……。

貞子というと、長い前髪で顔を隠したままテレビから這い出てくるシーンや、井戸から這い上がってきてカクカクと不気味に迫ってくる姿が浮かぶと思うが、これはあくまで映画から生まれた設定。
もっとも、これにより貞子のキャラクターは確立されたことになるのだが、この時点での貞子の見た目はあくまで肉感的な美少女となっている。


VHSならば手に入れることができる今作。いまだDVD化はされていないのは権利の問題か、それともビデオで見てこそリアルな恐怖が実感できるからだろうか…?
(バーグマン田形)

※イメージ画像はamazonよりリング 完全版 [VHS]
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