先ごろ放送された『24時間テレビ~愛は地球を救う~』(日本テレビ系)では、林家たい平が100.5キロのマラソンを無事完走した。さて、テレビ企画によるマラソンは、日テレだけのお家芸かと思いきや、フジテレビでも何度か行われている。


『めちゃ2あいしてるッ!』で実現


2004年には極楽とんぼの加藤浩次、2011年にはナインティナインの矢部浩之、2015年にはオアシズの大久保佳代子が『27時間テレビ』内でマラソンに挑戦している。しかし、これに加え岡村隆史もマラソンを走っていることはあまり知られていない。

岡村のマラソン企画が実現したのは、1999年から2000年にかけて年越し特番として放送された『めちゃ2あいしてるッ!』(フジテレビ系)の中においてだ。人気番組であった『めちゃイケ』と『LOVELOVEあいしてる』がコラボし、“音楽とバラエティの融合”が目指された。
午後11時に番組が始まると、ミレニアムを記念してお台場で行われるファンラン(5km走)への岡村参戦が発表される。このレースで1位を取れなかった場合、「犬吠埼で寒中水泳をする」罰ゲームを行うという。犬吠埼は関東における初日出の名所として知られており、実にお正月らしい企画だ。


岡村隆史がマラソンに挑む


日付が変わると同時にファンランはスタート。岡村は先頭集団にも入れず大惨敗。罰ゲーム決定かと思いきや、なぜかゴールをぶっちぎりそのまま走り出す岡村。
一体どうしたのかとスタジオは混乱するが、レース前のVTRを見返すと岡村は「マラソンで一位になる」と宣言していた。岡村は5キロのファンランではなく、42.195キロのフルマラソンに挑戦しようとしていたのだ。

この企画は事前の予告はなく、ゲリラ的にスタート。夜中にお台場から都心へ走って出られる道は、有明方面に向かう一方向しかない。
そのため、ルートを把握した視聴者が続々と中継現場にかけつけた。
自転車で来た中高生や、若者の車が殺到し、現場はパニック状態。岡村はのちにラジオ番組『オールナイトニッポン』(ニッポン放送系)において、この時の様子を振り返り「むっちゃシバキたい奴がおった」と怒りを露わにしている。

「めちゃイケ」らしい演出も


番組では、岡村がただ走るだけではなく、「めちゃイケ」テイストのコントも挟まれた。岡村を応援するためコージー富田やダチョウ倶楽部が次々と登場したり、岡村が水を飲もうとするが蛇口が外されており、猫よけペットボトルの水を飲んだりする場面も見られた。

また、音楽番組らしい演出もあり、「サライ」「負けないで」が流れたかと思ったら、岡村が日本武道館に間違ってゴールしてしまう一幕も。

こうした他局の番組をパロディに昇華する手法は、2004年の加藤浩次マラソンでは荒川土手における『3年B組金八先生』オープニングの完コピ、2011年の矢部浩之マラソンにおいてはTBS構内での『オールスター感謝祭』「赤坂五丁目ミニマラソン」の名シーン再現などに受け継がれる。

一晩中走り続けた岡村は、明け方にフジテレビのスタジオに無事ゴール。岡村が最後に発した「俺は何位やった?」という質問の答えは「もちろん1位」であろう。
驚くべきなのは、コントを交えつつとはいえ、岡村がきっちり42.195キロを走り抜いた点であろう。デビュー以来、90年代に一貫して体を貼り続けてきたナインティナイン岡村隆史の芸人魂が感じられる企画であった。
(下地直輝)

※イメージ画像はamazonよりナインティナインのオールナイトニッ本 (vol.1)