10月スタートのTBS系ドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人』で、女優の菅野美穂が約4年ぶりに主演を果たす。
今作は完全オリジナルのサスペンスドラマ。
“普通じゃない常識”がはびこるタワーマンションを舞台に、不気味な隣人に追い詰められて行く主婦を演じることになる。高い演技力を誇る菅野美穂が闇に巻き込まれていく恐怖をどう演じるのか、今から非常に楽しみなところだ。

なにしろ、筆者にとって菅野美穂は恐怖の象徴。彼女の内なる“ホラー性”は、見るものを不安にしてならないのだから……。

イグアナ姿よりも不気味!? 普通の姿の菅野美穂


そもそも、連続ドラマ初主演作が1996年の『イグアナの娘』。川島なお美演じる母親に「お前はイグアナだ」と虐げられる役どころである。
CGでイグアナ化した姿はホラーだったが、人間の姿をした普通の状態の方がリアルなイグアナよりもよっぽど怖かった印象。可愛いのにどこか爬虫類系の顔立ちに鬼気迫る演技が相まって、本当にイグアナが正体なのでは……と思わされるほどの熱演だったのだ。

アイドルとは思えない大量虐殺をする悪魔役


実は前年の映画で、『イグアナの娘』以上にショッキングな姿を披露しているのをご存じだろうか?
ホラーマンガの古典が原作の『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』だ。生徒が次々と虐殺されていく様がスプラッタ要素多めに描かれた、要は「悪趣味B級ホラー」である。

主人公の魔女「黒井ミサ」は吉野公佳、その友達役として菅野美穂がホラーな準主役を務めていた。恐怖に怯える無垢な少女役かと思いきや、正体は同級生を生贄に差し出す黒幕の悪魔役。
アイドルの範疇を超えた狂気の高笑いを始め、振り切れた演技で完全に主役を喰ってしまっていた。本当に悪魔が取り憑いたのかと思わせるだけの迫力に満ちた、豹変後の不気味なムードは一見の価値ありだ。


本物のゴキブリを鷲掴み! 菅野美穂のプロ根性


99年には2作続けてホラー映画に出演。この2作の怪演が「菅野美穂=怖い」の公式を決定付けたことは間違いない。
まずは、3月公開の『富江』。こちらも有名なホラーマンガが原作だ。近づく男を堕落させ、破滅に追い込む謎の美女「富江」は、何度殺されても死なない化物。例え切り刻まれて肉片になっても、そこからまた元の姿に再生してしまうどころか、分裂までしてしまう驚異の生命体である。

富江の無邪気ゆえに際立つ残虐性、笑顔の裏の企みは、菅野美穂本人の地が出ているのではないかと錯覚するほどの見事なハマり具合だった。
ゴキブリを鷲掴みにし、主人公に食べさせようとするシーンがあるが、このゴキブリはなんと本物! 衛生的な環境で育てられた無菌のゴキブリだそうだが、本物であることには変わりない。根性座りすぎなのも、何だか怖いのである……。

悪魔を超えた多重人格者を怪演した菅野美穂


同年6月公開の『催眠』はサイコサスペンスなホラー映画。催眠術を悪用した連続殺人に迫るストーリーだ。
この映画での菅野美穂は、多重人格者としてホラーな魅力を全開に。瞳孔開きっぱなしでカタコトで話す宇宙人の人格や、主演のSMAP稲垣吾郎をたぶらかす妖艶な美女の人格などを迫真の演技で怪演している。

『エコエコアザラク』同様、今作でも連続殺人の真犯人役だが、天井を這ったり、窓枠に指2本でぶら下がったりと、人間離れしたアクションは悪魔役以上。荒唐無稽で、粗が目立つストーリーだが、菅野美穂の怖さのみで押し切った一本となっている。

菅野美穂がバラエティで時折見せる「はははははッ!」と高音でスピーディーに奏でる独特の乾いた笑い方も筆者にとっては恐怖でしかない。間近で見る堺雅人は、あの唇を噛み締める複雑な微笑み(?)を浮かべながら、何を思うだろうか……?

※イメージ画像はamazonよりゴールデン☆ベスト 菅野美穂
編集部おすすめ