「人間活動」をするために2010年から音楽活動を休止していたシンガーソングライター、宇多田ヒカルがいよいよ活動を再開した。9月末には、8年半ぶりのオリジナルアルバム『Fantome』をリリースし、週間チャート1位を獲得。
売上げ50万枚を突破し、大ヒットになった。
NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の主題歌『花束を君に』を歌っていることから、今年は過去に何度も断ってきた『NHK紅白歌合戦』への初出場も決定している。

彗星のように現れた宇多田ヒカル


活動休止を経て、色あせない特別なきらめく才能を見せつけた宇多田ヒカル。リリースすればビックセールスだが、1998年12月にリリースした1stシングル『Automatic/time will tell』は、オリコンシングルチャートで8cm盤が初登場12位、12cm盤は初登場20位だった。

もともと、シングルは8cm盤、アルバムは12cm盤に分かれ、2形態が混在していた。
その後、90年代後半になって、12cm盤が音楽にとどまらず記録メディアとして爆発的に普及したことや、レコード会社側などのメリットもあり、8cm盤は衰退。シングルもアルバムも12cm盤(マキシシングル)に統一されていく。

『Automatic/time will tell』は、その移行期にあって2形態を別々に集計していたため、どちらも10位以下だった。

タイアップでじわじわと売り上げを伸ばす


当時はCD全盛期であり、デビュー日のかなり前からサンプルCDが配られていたという。そして、全国のFM局で『Automatic/time will tell』は大々的にオンエアされ、デビュー前の10月にはラジオ(JFL系列)でレギュラー番組『宇多田ヒカルのトレビアン・ボヘミアン』でDJを務めるようになった。

また、高校生だった宇多田は、学業優先ということもありテレビの露出はなかった。しかし『Automatic』は『笑う犬の冒険-YARANEVA!!-(フジテレビ系)』のエンディングテーマ、『time will tell」は『ごきげんよう(フジテレビ系)』のエンディングテーマに。フジテレビのバラエティ番組にマッチしていたかどうかは別として、いずれもテレビのタイアップがついたことで認知度が上がった。

1位を獲れなかったのはCDが変わる節目だったから?


『Automatic』はテレビでもスポットCMをどんどん流し、1998年から1999年をまたいでじわじわとヒットし、宇多田ヒカルの名は日本中に知れ渡った。
売り上げもミリオンセラーを超え、ついには255万枚という記録破りのセールスになった。
それでも、オリコンの公式記録上は週間1位を獲得していない。

これは90年代後半の、8cmシングルから12cmシングルへの移行が少なからず影響しているといえるだろう。1999年11月にリリースした4枚目のシングル『Addicted To You』からは、12cmシングルのみでのリリースとなった。

日本における本格的なR&Bミュージックとしても、セールス面でも、宇多田ヒカルがCD業界に与えた影響は数字だけではないのだ。
(佐藤ジェニー)

※イメージ画像はamazonよりAutomatic/time will tell
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