『アカギ』『カイジ』でおなじみの福本伸行原作『銀と金』。第2話と第3話は、仕手戦だ。

リリー・フランキー×池松壮亮「銀と金」今夜セザンヌ編スタート、ややこしい仕手戦編を簡単に解説しておく

原作も「銀と金」はこの仕手戦から始まった。しかし、ドラマもこの話からスタートさせたのは少し難しかったように思う。知らない会社、知らない銀行、知らない政治家が出てきても、どうもすごさが伝わらない。さらに味方キャラクター達までほぼ初登場だ。

こっちの頭の問題もあるが、「この人誰だっけ?」という事が多くなってしまう。その為どうしても説明説明してしまい、肝心のキャラクター達の魅力が薄れてしまうように思える。
それでもこれだけ迫力を持たせて仕上がっているのは、役者達の力が大きい。
(写真1)

仕手戦とは?


株式市場で、一つの銘柄に対して売り方と買い方に分かれて争うこと。

あらすじ


森田(池松壮亮)が銀二(リリー・フランキー)に呼びだれたバーに行くと、そこには銀二の仲間たちが待っていた。銀二いわく軽薄でイカレている船田(村上淳)、バーのオーナーで謎の多い女・巽(臼田あさ美)、警視庁捜査一課の元エース安田(マキタスポーツ)。全員、マキタスポーツまで怖くてかっこよく見えるから不思議だ。

中華料理屋で豪遊している梅谷(ダンカン)は、今回の仕手戦の主役だ。なんと毎月3億の利息を抱えて、破産寸前。なのに100万のワインを頼んで安い安いと笑う。
ここら辺は、「なんとなくすごい世界なんだな」と、思っていればいいと思う。

この梅谷が、自動車部品メーカーの日本旭に対して仕手戦を挑んだ。これまでに買い占めた株は32%。当初梅谷が買い取った株価は1300円だったが、現在は1800円まで値上がりしている。さらに梅谷が株を買い足して、日本旭が耐え切れずにこの株を買い戻したら梅谷の勝ち。買い戻さずに耐えきったら日本旭の勝ち。
要するに我慢比べだ。

資金が尽きかけた梅谷を料亭に連れ込み、銀二は負債を全部請負って仕手戦の本尊に成り替わらせろと提案する。しかし、プライドの高い梅谷はこれを拒否してしまう。それにしても、梅谷は中華屋でさんざん飲み食いしたばかりなのにまだ料亭でなんか食べている。誰が見ても趣味の悪いスーツを着こなし、急に大声を出すこのダンカンの成金の末路感。他に見ないタイプの哀愁に溢れている。
この後、わりとすぐにギブアップするのもいい。

銀二は、日本旭の後ろ盾である帝日銀行の弱みをすでに握っていた。それは帝日銀行が丸双不動産への融資をクッションにして、自由民政党の海堂に資金を流しているというもの。銀二は、帝日銀行の頭取・土門(大石吾郎)、丸双不動産社長・丸石(羽場裕一)、自由民政党の海堂(丸山智巳)が集まるホテルに盗聴器を仕掛けるも、そこはただの待ち合わせ場所に過ぎず、盗聴は失敗に終わってしまう。

ここからは、話がわかりやすい!


だいたいここまでが第2話だ。説明、紹介、説明、紹介で、まぁ覚えることが多かった。知らない人物と知らない会社名がドンドン出てきて、こっちがメモを取りそうになる情報量だ。
ダンカンは本当に良い箸休めだった。

しかし、第3話からはわかりやすい。出てくる敵の誰が誰でというのは、正直覚えていなくても大丈夫。盗聴を失敗した銀二がとりあえず突撃し、何かしらの悪事の証拠を掴めれば、こちらの勝ちだ。

突撃した先は、海堂の愛人のマンションだ。玄関に現れたのは愛人。
銀二は、裏金の流れを大きな声で説明しだし、奥にいる三人を挑発する。出てきた丸石を、チェーンでわずかに空いたドアの隙間から関節技を極め、中に入ることに成功する。あの狭い隙間で関節を極めた銀二がすごいのか、丸石がダサいのか。

部屋に入ってまず銀二がしたのは、海堂を罵倒すること。保身しか頭にない、人並み外れて卑しい、悪党ですらない。この挑発をする事によって、銀二はなんとなくその場で一番上の人間だという事を印象付けた。

次に銀二は、観葉植物から盗聴器を取り出すフリをする。実際は自分の袖から出して、盗聴器を仕掛けていたように見せていただけだ。そしてこの音声を買ってほしいと、土門頭取に問う。すると頭取は「いくらだ?」。なんと銀二はこの言葉をもう一つのICレコーダーで録音していたのだ。これで証拠は掴んだ。銀二はここまでわずかな情報と嘘だけで乗り切ってしまった。

しかし、海堂はこの隙に黒服の怖い人達を助っ人に呼び出していた。銀二は森田にICレコーダーを渡し、自分たちを囮に脱出させる。森田は梅谷のもとに向かい、政治家を紹介してもらう。現れたのは自由民政党の2番手、伊沢(島田久作)。ICレコーダーの中身を聞かせ、銀二たちの解放の手助けを求めた。

今夜はセザンヌ編


今夜からのセザンヌ編は、悪い奴に似ている絵を売りつけて金を集める!それだけだ。しかも森田の一人行動の為、話がゴチャゴチャしない。登場人物もおそらく仕手戦の半分も出ないのではないだろうか。ちょっと仕手戦編がわかり辛かったという人は、このスザンヌ編を見てみたら、印象が変わるのではないだろうか。

(沢野奈津夫)