![『君に届け』僕たちが風早くんになれない3つの理由【ラブホの上野さんの空想恋愛読本】](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FSmadan%252Fsmadan_love%252F2017%252FE1494222522624_4316_1.jpg,quality=70,type=jpg)
「漫画のキャラで1番モテるのは誰だと思う?」というアンケートをとったらまず間違いなくトップ3には入るであろう逸材。それが大人気漫画『君に届け』の風早翔太です。
名前からしてイケメンな彼ですが、その行動、発言、その他諸々どこを切り取ってもイケメン。そんな彼に憧れて、彼の真似をした方も少なくないのではないでしょうか?
かくいう私もその1人。何かに悩んだ時は、私の頭の中にいる風早くんならどう行動するか、ということを判断基準の1つにしております。
しかし、女性の方はこう思ったことも少なくないのではないでしょうか?
「どうして、現実には風早くんみたいな人がいないの!?」と。
さて、それでは空想恋愛読本、第18回。
今回は「僕たちが風早くんになれない3つの理由」をテーマに、風早くんが現実にいたらモテるのか? ということをお話しさせて頂ければと思います。
ちなみにこれを言ってしまうと、色々と元も子もなくなってしまうので「顔が超イケメン」は条件から外させて頂きます。
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僕たちが風早くんになれない1つ目の理由「いい人止まりの男性とは違う考え方」
「俺が決めることだ! 俺は……俺のしたいようにするよ」
これは漫画の第5話で、自分といると風早くんまで株が落ちると思ったヒロインの爽子が、風早くんに対して私から離れたほうがいい、と言った時の一言。
爽やかな印象がある風早くんですが、彼は実は作品を通して全体的に物凄く自分勝手なところがあります。
結構頻繁に怒りますし、爽子やクラスメートの意見を無視することも。
いわゆる「いい人止まり」の男性というのは、この点が不足している方が少なくないことでしょう。
例えば事情はともかく、空き教室の隅っこで泣いている女の子がいたとします。
「大丈夫?」と声をかけると「大丈夫だから1人してもらっていいかな」という返事。
ここで「いい人止まり」の男性はそのままその女の子のことを1人にしてその場を立ち去ってしまうのです。
それでは風早くんみたいなタイプはどうかと言うと、判断の仕方が「いい人止まりの男性」と全く異なります。
「いい人止まり」の男性は「立ち去ってほしいと言われたから、立ち去る」という考え方。
「風早くん型」の男性は「相手に立ち去ってほしいと言われても、自分の判断でどうするか決める」という考え方。
風早くん型の男性というのは、悪い言い方をすれば、女の子の発言や意見など、参考程度にしか捉えていません。
その子がなんと言おうとも、その上で自分が今一番すべきことをする。
嫌われないということだけを考えるならば、相手が口にした欲求をそのまま叶えてあげるのがベターです。そういう意味では、風早くんタイプの男性というのは「相手に好かれるかどうか」ということへの執着や関心が普通の人間よりも低いと言えるかもしれません。
例え相手の言っていることを守らず、自分で自分がすべき行動を決め、自分がしたいようにして相手に嫌われたとしても、それでも相手のためになるのであればそれでいい。
そんな考え方に近いものが御座います。
正直、この思考は真似しようと思って出来るものでも御座いません。だいぶ良い表現をしましたが、風早くんタイプの男性というのは、独善的で賢くなくリスクが大好き、とも言えるのです。これは気質によるところが大きいので真似ることが難しいのです。
この気質こそが私たちが風早くんになれない理由その1で御座います。
僕たちが風早くんになれない2つ目の理由「人を疑わない」
「……了解!」
これは爽子が女生徒と風早くんの話をしているのを、風早くんがたまたま聞いてしまった時のセリフ。
文脈としては、
風早「それを俺はどう受け取ればいいのかな」
爽子「……ほめ言葉……!」
風早「……了解! そっち行くからちょっと待ってて!」
という流れ。
この風早くんのセリフの何が名言かといえば、文章にしてしまうと判りにくいのですが、彼はこの「了解」を屈託のない素直に信じた笑顔で言っているのです。
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この時、爽子が女の子と会話していた内容は「風早くんは(爽やかすぎて)爽やかさで出来ています」という内容だったのですが、この内容はどのようなテンションで言ったのかは分からないものの、隣にいた女の子は「あれが褒め言葉だったのか!?」と驚いていることからも、あまり良い表現ではなかったのでしょう。
というより、そもそもに自分がいないところでこそこそと自分の名前が出る話題をしていれば少なからず「自分の悪口では?」と思うもの。
しかし、風早くんはそんな状況であっても、爽子の言葉を少しの疑いもなく信じることができる素直さを持っているのです。
これが、できない。
人を疑うことは簡単なんです。
普通の人間であれば、爽子が「ほめ言葉」と言おうとも「はいはい、じゃあそういうことにしておきましょうね」くらいの反応が限界です。
信じることなど出来ない。絶対に疑ってしまうのです。
人を疑わない人間を、疑う人間に変えることはそんなに難しいことではありません。ですがその逆は難しいどころの騒ぎではなくほぼほぼ不可能だと言っても良いでしょう。
これが私たちが風早くんになれない2つ目の理由で御座います。
僕たちが風早くんになれない3つ目の理由にして、風早くんがこの世界に存在しない理由にして、風早くんが現実にいた場合「モテない」と私が言う理由
私たちが風早くんになれない3つ目の理由。それこそが私たちが風早くんになれない最大の理由で御座います。
それは、現実には「黒沼爽子」も「矢野あやね」も「吉田千鶴」も「真田龍」もいないということ。
更にいえばクラスのお調子者「城ノ内」。
比較的早い段階で爽子と仲良くなっていた「トモ」と「えっこ」。
爽子のお父さん、お母さん。
そして物語の中では数少ないやや性格が悪いキャラとして描かれている「胡桃沢梅」。
彼らが現実に存在しない。
逆にいえば、負の欲望、負の感情が強い人間があの世界には存在しない。
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『君に届け』の世界は無菌室なのです。あの世界には誰かのことを強く妬み恨み殺してやろうと憎む感情も存在しなければ、ただただ輝いている風早を見て自分の惨めさに絶望して風早を憎むような感情も存在しない。
多少、くるみちゃんがそれに似た感情を抱くものの、失敗した後も簡単に爽子と軽口を叩くことで気まずくはない関係を維持。少しもドロドロ感が感じられません。
風早くんのような素直で爽やかな人間は、無菌室の中でしか存在できないのです。先ほど私は「人を疑うようになるのは簡単」と言いましたが、特にこの点こそが現実と『君に届け』の世界の最大の違い。
彼らの世界には、いくら多少田舎だとはいえ、怪しいキャッチもいなければ、風俗店も存在しない。断言しますが、あの世界で私がラブホを経営したら1日で経営破綻する自信が御座います。
人の負の欲望の量が極めて少ない世界だからこそ、風早くんは存在できる。つまり、人の負の感情、負の欲望が渦巻くこの世界において、人を疑わないでい続けること、素直で爽やかな風早くんであり続けることなど不可能です。もしそれをやろうとすれば一瞬で潰されてしまう。爽やか真面目で素直な男が、特に社会人になってから勝負に勝つことなどないのです。
恐竜がもし現代に存在したら、自分の体重を支えきれずすぐに倒れてしまう、という仮説がありますが、風早くんの場合でも同じようなものでしょう。風早くんが現実に存在したら、この世界の汚れた空気に耐えきれずすぐに彼も素直ではいられなくなってしまうのです。
私は何も現実世界が悪いと言っているわけでは御座いません。むしろ現実世界での話をすれば、負の欲望や負の感情に苛まれず、綺麗な正義の心だけで生きている人間があまり好きではないほど。犯罪者が隣に住んでたら怖いけど、1億人も人がいて、1人も犯罪者がいない国だったらそれはそれで怖いというのが私の考えで御座います。
かといって『君に届け』の世界が悪いと言っているわけでも御座いません。ただこの2つの世界は非常によく似ているものの、別の世界であるということがお伝えしたいのです。
同じ海でも深海と浅瀬では生きている生物が違うように。
そして深海に生きている生物は浅瀬では生きることが出来ず、浅瀬で生きている生物は深海では生きることが出来ないように。
風早くんは、そのままの姿では現実世界では生きていけない、とお伝えしたいのです。
彼が現実世界にもし来てしまったら、おそらく彼はピュアな心と素直さを失うか、あの綺麗さを維持したまま組織に馴染めずに消えてしまうかのいずれかでしょう。
彼のように綺麗な人間は、無菌室でこそ輝きますが、菌がたくさん存在する現実においては妬まれ侵食される対象で御座います。
いずれにしても、「風早くん」でなくなってしまい、あまりモテないのではないかと思わずにはいられません。
(上野)