
百花王学園は、何もかもがギャンブルで決まる学校。
転校してきた蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)は、最初は清楚可憐な少女に見えた。
実は、大のギャンブル好き。というよりギャンブルでお互いリスクを背負って狂っていくのが好き。
彼女は最初のギャンブルで、早速波乱を起こす。
インフレありきの賭け合戦
原作者は、キャラクターが賭けるものに対して、歯止めを全くかけない。
今回のジャンケンは一千万。次が二千万、その次が四千万。
そっからとんでとんで、3巻で賭けるのが命。
当然こんなものでは終わらない。下手するとデスゲームよりえげつない。
賭けるものがでかくなるたびに、夢子は恍惚とした表情になる。
アニメ一話は、この作品の面白いところを一通りそろえている。
まず、オリジナルのゲーム。
今回の「投票ジャンケン」は、クラスメイトが投票したカードから三枚抜き出して行う、偏りがありそうなジャンケン。読みあいに安定性がなく運要素が強い。
ついでに人間関係が露骨に出る。
作中キャラのイカサマ。「勝負の世界では、騙される方が悪い」というのがこの学校の基本。
芽亜里も当然のごとく、クラスメイトに思った通りの票を入れるよう通達するという、思い切ったイカサマを仕込んでいる。
夢子は一千万円かかった勝負で、それを見抜いて切り返す。
イカサマを破るために彼女は、50万円の勝負を何度も捨てていた。
「出血を覚悟しなければ、人はだませませんよ」
セリフが全部かっこいい。
これらのやりとりをする度に、双方がものすごい顔芸を見せる。
出てくるキャラは、ほとんどが美少女だ。
金髪ツインテール芽亜里は、一話で崩れまくり。
「もしかして怖気づいちゃったあ?!」「ばぁーか、そこから先は泥沼だよ」
それに対してさらにヤバい顔芸を繰り出す夢子。
「資本主義の世の中では金は命も同然。命を運否天賦に委ねるなど、正気の沙汰ではありません。にも関わらず、カジノに人が集まるのは、命を賭ける狂気に人は快感を覚えるからです。であるなら、ギャンブルは狂っているほど面白い」
賭博論も独特だ。
こちらもおよそ美少女とはいえない、ドラえもんみたいな口でうっとり。
原作の顔芸から、遥かにグレードアップ。また夢子役の早見沙織の、普段と恍惚の演技のギャップが見事。
ついつい笑っちゃう。でも、目の前で百万単位がほいほい動いたら、平然とはしていられないのはわかる。『カイジ』の「ざわ…ざわ…」のように、賭場の空気は何かが違うんだろう。
絶対に勝つなんて面白くない
「私は絶対に勝つ勝負も、絶対に負ける勝負も嫌いなんです」
夢子は勝ち負けへの執着が全くない。
今回夢子が最後に勝ったのも、確定ではなかった。
それでも挑んだのは、自分がリスクを負って勝負する一瞬が楽しいから以外にない。
投票ジャンケンは凝った作りなので、やったら楽しいと思う。
でも一千万賭ける人が居たら、周りがみんな止めるだろう。「遊び」だからだ。
芽亜里もギャンブルは「遊び」だと思っていた。「こっち側」の人間だ。
彼女と対比することで、ネジのはずれた夢子のヤバさが表現された。もっとも100万賭けるのも相当おかしいけども……。
芽亜里は続く話と、彼女が主役の『賭ケグルイ双』で、たっぷりと描かれている。めちゃくちゃイカス、凡人の子です。
ここから先出て来るキャラクターは、それぞれに「美学」がある。行き過ぎていて性癖に近い。
それがOPでばっちり表現されている。
キャラと賭博グッズを並べ、マルキ・ド・サドやバタイユを匂わせるようなエロティックな表現で彩りを添える。
スピーディーで難解なリズムの主題歌は、『カウボーイビバップ』の「Tank!」を思い出す。
生徒会長が夢子に惹かれ、耳元で囁くシーンは、原作にないのに、最高に原作っぽい表現だ。
ネタになっているゲームわかりやすく再現し、コテコテ山盛りのケレン味で調理するスタイルに舵を切ったアニメ版。
生徒会編最後までやるのかな。五巻のレイズ合戦、めっちゃ楽しみにしています!
(たまごまご)