どんでん返しのピンチ回で、視聴率は10.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と2桁台をキープ。

6話あらすじ
銀座で最も大きなクラブ「ルダン」の売買契約を長谷川庄治(伊東四朗)と交わした原口元子(武井咲)。契約金の2億5000万円を期日までに払えなければ「違約金1億円、そしてクラブ「カルネ」を譲渡」という契約を結ぶ。橋田常雄(高嶋政伸)から購入した料亭「梅村」を売りさらにカルネを売れば、お金は支払える予定だった。
しかし、梅村は錯誤により橋田から購入できないことになる。橋田の「裏口入学寄付金枠紹介リスト」はダミーということがわかり、切り札にしていた黒革の手帖も盗まれた。自分の城であったカルネも、ついに奪われてしまう。
10年経って変わった「悪女」のイメージ
市子「殴った方は覚えてなくても、殴られた方は忘れない。唾をひっかけた方は忘れても、ひっかけられた方は死ぬまで恨み続けるの」
第2話、3話で元子に5,000万円を奪われた楢林(奥田瑛二)の愛人・市子(高畑淳子)。元子の家まで訪ねてきて、5,000万円を楢林に返すように迫る。
「私には、何のことだかさっぱり」と白を切る元子。怒鳴られている最中も、じっと市子の目を見て表情を少しも変えない。その態度を見て、市子はさらにいらだつ。
2005年の米倉涼子版では、嫌みのひとつも言い返したり、あからさまに不快な表情をして見せたりしていたシーンだ。
十数年前、敵を作る女は「はっきりとものを言う自己主張の激しい女」だったのだろう。今は「飄々として年上を尊敬しない女」が、大人をいらだたせるのかもしれない。
武井版元子が何を求めているのか知りたい

改めて、米倉版を見てみた。病床の母親に、米倉版元子は声をかける。
米倉版元子「私はいま、あんたとは全く違う生き方してるの。誰のものにもならない。私の心も体も、私だけのものよ」
また、手に入れたクラブ「ロダン」(武井版では「ルダン」)に寝ころび、満足げにつぶやく。
米倉版元子「やっと見つけた、私の居場所」
米倉版元子がお金を使ってのし上がりたい理由は、母親と違う人生を歩み、自分の自由・居場所を手に入れることだった。
衆議院議員の安島富夫(米倉版・仲村トオル)との恋愛描写もはっきりと描かれている。米倉版元子は、自分とタイプの違う安島の婚約者(米倉版・真木よう子)を見てショックを受けるし、京都で密会もするし、ピンチのときに愛を表明する。
安島の存在もまた、米倉版元子にとっては「居場所」となる可能性があったからかもしれない。
対して武井版では、元子と安島(江口洋介)の恋愛は今のところほのめかす程度にしか描かれない。安島の婚約者・京子(江口のりこ)を見て動揺する場面はあったが、ショックとまでは感じられなかった。
父母の残した借金500万円に苦しんだ過去から、元子が「私はお金を支配したい」と話すシーンはあった。しかし、「お金を支配したい」はちょっと抽象的じゃないだろうか。その手段がなぜ銀座のクラブ経営でなければならなかったのか、まだいまいち伝わりきらない。元子の上手なポーカーフェイスと若さゆえの虚勢で、真意を隠している。
SNSで「米倉版が良かった」という人の感想を探すと、やはり「武井版元子が何をしたいのかわからない」「米倉版の方が、感情がわかりやすかった」という意見があった。
しかし、6話のクライマックス。長谷川の指示で二度と会えないことを安島から告げられた元子は、大切なお金を床に落としても気にも留めず、安島に駆け寄りキスをする。
安島「所詮、俺たちは飼い主に運命を握られた鳥籠の鳥」
元子「どこ行くの? どうせ、鳥籠の中なのに」
米倉版元子は、最後の最後まで安島の愛情を信用できないでいた。対して、武井版元子は、安島からの愛情よりも2人の似た志によって信頼しているように見えた。
6話で、お金、店、手帖を全てはぎ取られた武井版元子。7話では、お金や店を取り戻すために駆けずり回ることになるだろう。安島との協力関係にも進展がありそう。
ストーリーだけでなく、元子の行動・感情が大きく動く第7話は、一週おいて9月71日(木)9時から放送だ。
『黒革の手帖』第6話は、テレ朝動画やTVerで8月31日(木)のよる7時まで無料視聴できる。また、Amazonビデオなどで有料配信中だ。
(むらたえりか)
木曜ドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)
毎週木曜 よる9時
出演:武井咲、江口洋介、仲里依紗、高畑淳子、奥田瑛二、高嶋政伸、ほか
原作:松本清張『黒革の手帖』(新潮文庫刊)
脚本:羽原大介
監督:本橋圭太、片山修
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)、菊池誠(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)