麦野ハジメ(竹内涼真)が、「男を作って自分を捨てた」と思い込んでいた母親と再会し、ほんのりと和解をしたのだ。
しかし全体的に、時間配分を間違えちゃったんじゃないかと勘ぐりたくなるくらい、駆け足な展開だったのが気になった。
本来だったら、2週分くらいで描くべき内容だったと思うのだけれど……。

じいちゃん、唐突に覚醒しすぎ!
麦野が母親と再会するきっかけとなったのが、カホコの叔母・教子(濱田マリ)がどっかから子どもを拾ってきちゃった件。
前回、強硬に「ウチに泊める」と言い張っていた教子だったが、今回はアッサリ警察に連れて行くことに同意する。
「捕まりたくないから、私。いくら勝手に着いてきたからって、このままウチに置いといたら誘拐犯になるんだって!」
……いや、いくら世間ズレしてても、さすがにそれくらいは分かるでしょうに。
とにかく、明日、警察に連れて行こうと提案した教子に対して、これまで何を言っても「明日な~」と言ってはぐらかしていた祖父・正興(平泉成)が「ダメだーッ! 明日はダメだ! 今日行け!」と唐突に覚醒。
前回、カホコに「明日がない人もいる」と言われたことが原因で目覚めたらしいが……。
祖父の覚醒で、これまで家族崩壊状態だった根本家の問題がサクサク解決してしまったわけだが。まさかこの家の問題、これでオールオッケーってわけじゃないよね?
警察に届けた結果、この子は近くの児童養護施設から逃げ出してきた子だということが判明。さらに、その施設に行ってみると、麦野の絵から感じるようなすんばらしいオーラを放っている絵が……麦野がかつて暮らしていた施設はここに違いない! ……サクサク進むねぇ~。
結構大きなトピックスだと思っていた「子ども拾ってきちゃった問題」が、麦野のいた児童養護施設を発見するためのフラグに過ぎなかったという……。
ちなみに、前回、カホコの母方の祖父・福士(西岡徳馬)が麦野ハジメのことをやたらと「タモツ」と言い間違えていたが、今回、教子が拾ってきた子どもの名前が「タモツ」であるということが判明する。
この「ハジメ」「タモツ」という名前は、脚本の遊川和彦が手がけた過去のドラマに登場した名前であることは以前のレビューでも触れたが、さらに『過保護のカホコ』のタモツは、『はじめまして、愛しています』のハジメと境遇もキャラクターも似ているんだよね……。
深い意味がないならないでいいんだけど、こうやって微妙に気になるリンクをされると、どうしても色々と勘ぐってしまう。キレイにこの伏線が回収されたとしたら、メチャクチャ気持ちいいんだけど。
男じゃなくて、覚醒剤でしたかー……
さて、色々あってカホコと一緒に、これまで避けてきた児童養護施設に行くことになった麦野。
こんな重要なシーンが、提供バックで処理されちゃったのには驚いた。もっとセリフとか、表情とか、ちゃんと観たかったのに(いや、スポンサーさんは大事だけどね)。……このあたりも、時間配分を間違えちゃったのかなと勘ぐってしまうポイントだ。
ここで、母親が預けていたという手紙を手に入れるのだが、その内容が予想以上に壮絶。
若くして死んだギャンブル狂いの夫が残した借金を返済する生活に耐えかねて、現実逃避として覚醒剤に手を出してしまった母親。
やめようやめようと思ってもやめられず、怖くなった母親は、麦野と一緒に心中を考えたが、眠っている麦野が絵の具のチューブを握りしめているのを見て、「この子の未来は決して奪ってはいけない」と考え、麦野を児童養護施設に預けて自分は警察に自首することにしたんだとか……。
コレを読んで「ああ、母ちゃんは男を作って、ボクを捨てたわけじゃなかったんだ! 覚醒剤やってただけなのか~、よかった!」とはならないよなぁ。
直後に母親と再開し、
「いつかアナタに負けないすっばらしい家族作りますから。
と、精一杯強がって言ってのけるのは、麦野らしいっちゃあ麦野らしいのだが、これまでずっと母親に対してひねくれまくった感情を抱いていたのに、あの手紙を読んだだけで、いきなりここまで物わかりよくなれるだろうか? この辺の心境の変化も、もうちょっとじっくり見たかった感じがするのだ。
ところで、個人的に気になったのが覚醒剤についての描写。
自分で使用していただけならば、1回目の逮捕では普通、執行猶予がつくのが相場のハズ。ましてや自首してるんだから!
よっぽどクレイジーな量を所持しているか、売人でもやっていなければ一発実刑なんてことにはならないと思うのだが。
もちろん、ドラマなんで細かいリアリティを求めなくてもいいんだけれど、この辺のツメの甘さから、覚醒剤の問題を深く掘り下げる気はないけど「壮絶な過去」を演出するためのアイテムとして、チョロッと覚醒剤を登場させてやろうという意識が透けて見えてしまうので……。
カホコちゃんがオンナの顔に……!
母親と別れた後、カホコに抱きついて泣きじゃくる麦野。
これまで、ほぼ本心を見せてこなかった麦野が、ようやく心を開いた瞬間だ。
「会いたかったよぉ~カホコぉ~!」
「もう別れるなんて言わないでくれよぉ~!」
心を開いたどころか、いきなり甘えん坊モードにまで突入したのはさすがに笑ったが、これはもう、女性視聴者が観たらキュンキュンしちゃうシーンなんだろうなと。
ただ、このシーンも竹内涼真の演技以上に、やはり高畑充希の演技に目が行ってしまった。
これまで、子ども、もしくは妹的なポジションで麦野と接してきたカホコがスッと母性を開花させ、その後、両親に麦野との結婚の許可を取りに行く場面で「私、こんなのはじめて」と発言した顔は完全にオンナ!
そんなカホコの表情を観て、キュンとするやら、父親気分で悲しくなるやら。
「(カホコは)人の愛とか善意を信じてもいいんだという力をくれるんです」と言う麦野。
「ハジメくんと一緒に家族のみんなを幸せにしたいの」というカホコ。
恋愛に一直線なふたりは青春だなーとは思うものの、冷静に考えば、就職も決まっていないボンクラな大学生ふたり。それがいきなり結婚って……明らかに脳みそお花畑な発想だ。
母・泉(黒木瞳)の言う「アナタたち、本気なのね? だったらこっちも本気で反対させてもらうわ」に完全に同意してしまう。
今後は、このふたりが周囲の人たちに結婚を認めさせつつ、山積みになっている問題を解決していく……的な展開が予想されるが、視聴者が納得して、心から祝福できる形で結婚&ハッピーエンドとなれば嬉しいのだが。
(北村ヂン)