え……えぐるねぇー、老人の心を!

先週は「親しい人の死」という、老人にとって身近で、つらいテーマをドスンとぶつけてきた『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月~金曜12:30~)だが、今週はある意味それ以上につらい、家族からのヒドイ仕打ち。
「やすらぎの郷」第24週 孫が32歳年上と不倫&妊娠&1500万円を要求。菊村のライフゼロ
イラスト/北村ヂン

かわいい孫が遺産を狙ってきた


どことなくウキウキ感を漂わせながらアザミ(清野菜名)から送られて来たシナリオをチェックしている菊村栄(石坂浩二)の元に孫・梢(山本舞香)がやって来た。

梢が訪ねてきているという連絡をもらった時の、「孫がかわいくてしょうがない」といった嬉しそうな表情を浮かべた菊村が印象的だったが、この後のキツイ展開を考えると心が痛くなってしまう。


梢は、菊村が「やすらぎの郷」に入所する前、第3話にチョロッと登場していた。

菊村へ冷たい態度を取っていた息子夫婦(梢の両親)に対し、孫の梢だけは「おじいちゃん、私がご飯を作ってあげる!」なんて言ってくれたり、「おじいちゃんに優しくしてくれるいい孫」っぽい雰囲気をビンビン放っていたのだ。

その時のイメージ通り、久々に再会した梢は、菊村に思いっきりハグ!

おじいちゃんに会えたことを、こんなに全力で喜んでくれるなんて……。シニア視聴者たちは「ワシもこんな孫が欲しい!」と強く思ったことだろう(ボクも思う!)。

しかし、抱きついてきた梢からは「女のニオイ」が漂っていた。

梢は、ただ単に菊村に会いたくてやってきたわけではなく、ある目的を持って「やすらぎの郷」を訪れたのだ。


・梢は現在、52歳の彼氏・湊勇一(松井誠)と同棲中。
・52歳だけど、あっちの方はギンギンで、梢は妊娠までしている。
・しかし湊には妻も子どももいて、現在離婚裁判中。
・慰謝料が足りないので1500万円欲しい(くれ!)。

嬉しい孫との再会から、一気に地獄へ転落だ。

菊村に1500万円をくれるよう頼むのにあたっても、ノープランではなかった。
梢は、菊村の遺言の下書きを目にしたことがあり、菊村の死後、自分に3000万円が入るということを知っていたのだ。その遺産を前倒しで欲しいのだという。

そう考えると、「私がご飯を作ってあげる!」も、再会していきなりのハグも……。あの「いい孫」感が全部、遺産狙いのご機嫌取りだったように思えてしまう。本当に悲しい!

年の差恋愛に冷や水をぶっかける


梢の彼氏・湊がまた、エリートで高年収らしいものの、いい歳こいて妙にチャラいのも感情を逆なでする。

「(菊村先生のお孫さん。それからこっちは……)その男です、ふふーん」じゃないよ!

菊村の大ファンだという湊は、菊村の過去作のセリフを引用し、不倫を正当化してくる。


「男と女とはそういうものです。動物だから仕方ないンです」

自分が書いたセリフだけに、菊村も反論しづらいところではあるが、そこまで計算してなのか、めちゃくちゃドヤ顔でセリフを語る湊……殴りたい!

菊村から1500万円もらっちゃおう計画も、法律面なども含めて湊が入れ知恵をしているフシがあるのだが、若い子って、こういう「世の中を上手いこと渡っています」感のあるおっさんに弱そうだからなぁ……。

これまで、周囲の老人たちからいくら厄介なムチャぶりをされても、困った顔を浮かべる程度で、怒りをあらわにしてこなかった菊村も、さすがにコレには大激怒。

普段穏やかな、怒り慣れていない人が本当に怒った時に見せる、泣き笑いしながらの怒り。石坂浩二のさすがの演技で、感情をかき乱された。

ボクは孫どころか子どももいないけど、リアルに孫がいる人が実感を持ってこの回を見たら、本当に悲しい気持ちになっちゃうことだろう。


これまでもやたらと「年の差恋愛」が描かれてきた『やすらぎの郷』。

それを見て、「いいなぁ~」「ワシもチャンスがあれば若い子と……」なんて浮かれた考えを持ったシニア視聴者に、「ジジイが若い娘と付き合うってことは、逆に考えると、自分の孫もジジイと付き合う可能性があるってことだからな!」と、思いっきり冷や水をぶっかけてきた!

孫に対する時、老人ってチョロいな


シニア視聴者の心にダメージを与え過ぎてしまったと判断してのフォローなのか、梢が現在、お茶の水の医療大学の医学部に入り直して終末医療の医師を目指しているということが明かされた。

梢が医師を目指そうと思った背景には、ひどい介護士に虐待のような扱いをされていた菊村の亡妻(梢の祖母)・律子(風吹ジュン)の存在があったという。

おじいちゃんというのは悲しいもんで、孫が終末医療を志していると聞いた菊村は「それは私のためですか?」と期待感をにじませる。しかし「湊さんのためです」とバッサリ。かわいそう……。

それでも、この話を知った菊村は、梢に激怒し追い返してしまったことを公開し、「孫への反省と愛しさが私の中に突然わいた」という。


……いやいや待て、終末医療の勉強していることと1500万は別問題! だいたい、せっかく大学に入り直してまで医学の勉強をしようと思っていた子を不倫で妊娠させちゃう男(52歳)を許しちゃいけない!

まったく、老人って孫に対しては本当にチョロいなぁ。

ババアたちのウェディングドレス


今週はその他にも年の差恋愛問題が続々と勃発していた。

伸子(常盤貴子)と年の差結婚をしようとしているマロ(ミッキー・カーチス)の娘がやって来て「自分と同い年の女が母親になるのは絶対にイヤだ!」と熱く主張したり(ものすごく共感できる)。

三井路子(五月みどり)と年の差恋愛中の「やすらぎの郷」職員・中里(加藤久雅)が、ウェディングドレスを着たがっている路子のために結婚式を挙げようと計画をしていたり。

三井路子のウェディングドレスの件は、いい歳して……と思わなくもないが、いい歳だからこそ、一度くらいはウェディングドレスを着てみたいという気持ち、それを実現させてやりたいという中里の気持ちは理解出来るし、いい話だ。

しかし、どうしてそこで「私も着たい」と、マヤ(加賀まりこ)とお嬢(浅丘ルリ子)までウェディングドレスを着るという話になるのか……。


ニュースで既に、ウェディングドレス姿の加賀まりこ&浅丘ルリ子にはさまれた石坂浩二の写真が公開されていたが、この写真を見て倉本聰がニヤニヤしたかっただけじゃ……と勘ぐってしまう。

とにかく次週も、まったくやすらげそうもない『やすらぎの郷』だ。
(イラストと文/北村ヂン)