連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第25週「大好き」第146回 9月19日(火)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出: 福岡利武
「ひよっこ」146話。記憶喪失の父の物語は、一種のタイムリープものである
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」146話はこんな話


世津子(菅野美穂)と、実(沢村一樹)は、各々の2年半の時間について、ある種の決着をつける。

あの時間が本当に私だけのものに


世津子は、2年半の時間について、誰にも話さず、私だけの思い出にするという。
記憶が戻ると、その間の記憶を失くしてしまうことがあると聞いた世津子は、
「そうすれば、ふたりの時間があなたのお父さんを苦しめないし、それにあの時間が本当に私だけのものになる」とみね子(有村架純)に語った。

なんという狂おしいほど甘美な話であろうか。究極の恋物語の出来上りだ。
145話で語られた、早苗「シシド・カフカ」の恋もすごい恋だが、こちらも相当。漫画家ふたりは、早苗と世津子の恋を漫画にするといいと思う。

一緒に生きていってくれ


奥茨城村では、実が、秘密みたいになるのは夫婦で良くない からと、東京でどうしていたかを、美代子(木村佳乃)に話して、夫婦で共有しようとしていた。
でも、美代子に「優しくて誠実で真面目で、相手のことをいつも考える。でも女ごころはあんまりわかってない」ところが変わってないと言われてしまう。

「男の人にはわからないから女ごころって言うんです」(美代子の名言)
女ごころを武器にして、今は知りたくないが、いつか知りたくなった時は、すべて教えてくださいと頼む美代子。女はこわい。

そんな会話を交わしながら、実は、美代子のことを「かわいいなあ」とふと思って、改めて告白。
「美代子のことが好きだ。一緒に生きていってくれ。美代子と一緒に生きていきてえんだ」
これは、かつて、美代子に実がプロポーズした言葉と同じで、美代子を涙ぐませる。

この夫婦は、ゼロに戻って、もう一度、夫婦としての人生をやり直すのだ。
そう考えると、これもひとつのタイムリープもの(時間移動して行動を何度もやり直す)と言っていいのではないか。
SFの形をとらずして、タイムリープで描きたい本質(やり直し願望)を描いたことが面白い。

ここでモノマネが


145話で、モノマネがいくつか出てきたら、146話では、奥茨城母の会の間で、実のモノマネをして大いに盛り上がる。
美代子がさっそく、実とのことを話すと、自分のことのように喜ぶきよ(柴田理恵)と君子(羽田美智子)。
感動の「一緒に生きていってくれ」に「断る」を足して、ギャグにしてしまうところが、すてきだ。
(木俣冬)
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