カメラ目線よりも目線外したあとのはにかんだ有村架純がかわいかった。
(木俣冬)連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第25週「大好き」第148回 9月21日(木)放送より。
 
脚本:岡田惠和 演出: 福岡利武
「ひよっこ」148話。ヒデがみね子にあっちっち~
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」148話はこんな話


みね子(有村架純)とヒデ(磯村勇斗)が付き合うことになった。

イチコとヒデ


恋に慣れない若者は、ちょっとのことでナイーブになる。
ヒデは、仕事(に関わる勉強)にかけこつけて実現した初デートを前にして緊張気味。
薬局のマスコット人形イチコに向かって、ブツブツ独り言を言っている。
その傍らに「筋肉疲労」と書いた貼り紙があって、鍛えたカラダが魅力のヒデだが、疲労しちゃうほど、
悩んでいるのね、大変ねと思った。

実際問題、ヒデとみね子がなんかいい感じなのは、周囲はなんとなく気づいていたことだろうが、当の本人たちだけがはっきりさせないできたといえそう。
元治(やついいちろう)が、バー月時計で、自分の恋の悩みを言うことで、ヒデの本心を聞き出すが、カマかけたんではないかと疑ってしまう。
おしゃべりな元治からみね子に言われてしまう(ヒデがみね子にあっちっち〜とからかう妄想シーン)前に、今日のデートで決めてやる(告白を)と決意するヒデ。


立ち聞き名場面


裏の広場では、女たち(世津子、愛子、早苗、鈴子、富)が寄ってたかって、みね子のヒデへの気持ちを白状させる。
おとなしく人の話を聞いて、的確にリアクションしていたみね子が、ついに長台詞。
ちょっと前に恋があった(しかもヒデの友達)ことを気にしてたみね子。
「どうなんだって思われる気がするし」というのは、視聴者への配慮だろうか。
後半、時間を飛ばさず、一日一日を大切に描いていた弊害だろう。1、2年くらい月日が経ってからだったら、ヒデと恋仲になっても、もう時間経ったしね、とナットクできたかもしれない。
ちょうど再放送中の「こころ」は、早いうちに夫が亡くなった主人公が、最終週まで、新しい恋に踏み出すことに迷っているという貞淑さを見せているだけに(愛子さんも早苗も貞淑だし)みね子の二番目の恋が早いのは、ちょっと気になる人もいるのかも。
気にしなくていい気もするけれど。

それはともかく、「やっぱりこわいっていうか恋は」と、恋に慣れない者らしいみね子。
「ちょっと過去がある女」なんて、大げさなことを言うみね子に、吹き出す富(白石加代子)。
芸妓だった富にとっては、みね子のそれはあまりにかわいい過去なのだろう。

ヒデのいいところを挙げて、「大好きです、ずっと隣にいたいなって思います」「大好きです、ヒデさんのこと」とみね子が、女たちの誘導で、何度も言ってしまったのを、偶然ヒデが聞いてしまう。
朝ドラ名物「立ち聞き」の中でも、かなり衝撃の「立ち聞き」だった。


久しぶりに名セリフの収蔵庫に収蔵決定です


「嘘だこんなの! おかしいおかしい、絶対おかしい 神様ひどい!」
みね子の素朴な叫び。

世津子(菅野美穂)の「ドラマだってありえないわこんなの」も可笑しかった。

ヒデの「みね子ぉ」って声が上ずっているのも。

残された女はみんなでゲラゲラ。

みんなが笑ってる〜きょうもいい天気〜♪

横浜にて正式に告白


花いっぱいの場所で、ヒデが「つきあってくれないかな」と告白。
ヒデは「プロポーズするときは・・・」と先走っちゃって、「盆とお正月が一緒にやってきた感じ」になって、最後はみね子が「大好き」となぜか、「DAISUKI !」(99〜00年 日本テレビ)という深夜バラエティーのアイキャッチのようなカメラ目線。

「大好き」はどう考えても、男性視聴者を意識したものだろう。
女性のドラマだった朝ドラが、男性を意識したようなカットを使用することは画期的ではないか。水着を期待させるのも男性視聴者を意識していた感じ。そもそも、昨今の女性アイドルの脇役起用は男性視聴者サービスだろう。その甲斐あって、男の視聴者を獲得していると思うので、いまや、男も女も、若者もお年寄りも、地方の人も東京の人も、みんなそろって朝ドラ「大好き」って感じ。
変わっていく、朝ドラ。最近は、エンディングの鳥の声も成長している。

これを聞くと、私は、有名なヘッセ「デミアン」の一説を思い出さずにはいられない。
“鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという。

(ヘルマン・ヘッセ「デミアン」高橋健二訳)

この神様は、鶏の頭をもっていて、物事の両義性を体現している存在らしい。
善と悪、男と女……すべてを超えたドラマを目指す「ひよっこ」。

カメラ目線よりも目線外したあとのはにかんだ有村架純がかわいかった。