連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第25週「大好き」第150回 9月23日(土)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出: 福岡利武
「ひよっこ」150話。シニア婚のすすめ。最初のデートはお墓参り
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」150話はこんな話


愛子(和久井映見)と省吾(佐々木蔵之介)が、二番目の恋をすることになった。


愛子も省吾も共に、亡くなった人を大切に思い続けてきた。
愛子の、戦争で亡くなった忘れられない男の話を受けて、省吾も「私もずっと妻に恋してる」と言う。

149話では愛子の回想で、150話では、省吾が、亡くなった妻を回想する番。
妻が亡くなった時から「時間は停まってしまいました。気持ちもそこで停まったままです」と言う誠実極まりない省吾が、愛子に会って「でも、できることなら恋してみたいです」という気持ちに変わっていった。
149話の終わりに、省吾の出したVサインは、2番目の2であった。
省吾のような誠実な人だったら、2番目に恋する相手としては申し分ない。

「お互い忘れなくても、いなくなってしまった人への気持ち、変わらなくても恋はできますよね」
「二番でいいです」「愛子さんにとって世界で二番目に好きな男でかまわない」
「できなかったこと、してみませんか。諦めてきたこと、取り戻しませんか」

これは、シニア婚の提案か。
シニア婚のデートは、一番目に好きだった人のお墓デート。
シニア婚の場合、まず挨拶するのは親ではなく、「あなたの好きな人にご挨拶させてください」(亡くなった最愛の人)なのだ。こういうことが、シニア雑誌に特集されそう。

幸せは伝染るのよ


亡くなった人に操を立て、自分だけ幸せになれないと思って、時間を止めてきたふたり。
ふだんは、そんな思いをほぼ出さずに、明るく楽しく、仕事に熱意をもって過ごしている省吾や愛子が、
こんなふうに思っていたなんて・・・と涙涙の立ち聞きの人たち(みね子、由香、世津子、鈴子、早苗)。
とりわけ、由香(島崎遥香)は、「かわいい女の子(由香のこと)を産んでくれて」という父・省吾の言葉に感情マックス。


泣きすぎて頭が痛くなったと、由香が思わず声を出してしまって、立ち聞きしていたことが省吾たちにバレてしまう。
でも、幸せな話だから、立ち聞きの罪は問われず、「幸せは伝染(うつ)るのよ」と愛子は、女子たちに、今得たばかりの幸せを、振りまく。
こういう感染、伝染だったら、いくらでも拡散したい。

とりわけ、愛子が「せっちゃん(菅野美穂)もね」とふわっと気持ちを分けるときの、
菅野美穂と和久井映見の雰囲気がものすごく優しくて、悲しみをわかった者同士という感じがした。

立ち聞きは「ひよっこ」の世界では、他人の幸福を聞くことで、自分の悲しみを浄化し、幸せになるという、素敵な行為なのだ。テレビを観ているみんなにも、きっと、幸せが訪れるに違いない。


でも、オチが・・・


省吾の提案はあくまで「恋」であって、「結婚」ではないのに、すっかり結婚する気でいた愛子。
それにみね子が気づくのは、ついさっき、ヒデ(磯村勇斗)に先走ってプロポーズされた身だからだろう。
困った顔の佐々木蔵之介が可笑しい。
役者の技を感じたのは、佐々木だけではなく、有村にも。
「デートしたばっかりでした」というモノローグの後に、ふ。と自嘲気味に鼻で笑うニュアンスが巧い。

有村は、半音下がった感じのリアクションに味わいがある。

その頃、奥茨城村、谷田部家では、花ビジネスがはじまっていた。
残り、1週間! どうやって終わるのかさっぱり想像がつかない!
お父さんの記憶が戻るのか?
すずふり亭に預けっぱなしの谷田部家のお重は? 
はじめて、みね子が東京に出てくるときに、茂じいちゃん(古谷一行)からもらった1万円は日の目を見るのか?
時子(佐久間由衣)や三男(泉澤祐希)や米子(伊藤沙莉)はどうなるのか?
世津子はこのまま、あかね荘でだらだら暮らすのか?
早苗の12年越しの恋は? ヤスハルは? 福翠楼の養子は? 漫画家の漫画は?
ヒデとつきあうようになったみね子にさらなる進展はあるのか?

「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」みたいに、ひよこは出るのか?
まさに、泣いても笑っても、あと1週間!
(木俣冬)
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