連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第7週「風鳥亭、羽ばたく」第42回 11月18日(土)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博
「わろてんか」42話。笹野高史、濱田岳、広瀬アリス、活躍したのが「釣りバカ日誌」出演者ばかりの謎

42話はこんな話


喜楽亭文鳥師匠(笹野高史)が前座噺「時うどん」を披露し、客席は笑いに包まれた。てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)は風鳥亭を世間に知らしめることに成功する。


笹野高史は藤吉と違って、歌舞伎も落語も巧い


十八番や大ネタをやるかと思ったら、めったにやらない前座噺「時うどん」をはじめる文鳥師匠。
合わせて15文しかもってないのに、なんとかして16文のうどんをたべようとする二人組みを生き生きと演じるところが面白い。
笹野高史は、うどんをすする仕草はリアルに、二人組の演じ分けも鮮やかにやって見せた。すごい。さすが、故・中村勘三郎に気に入られて、歌舞伎役者でないにもかかわらず歌舞伎にも何度も登場している芸達者である。
落語じゃなくて歌舞伎の話で恐縮だが、笹野が歌舞伎に出るようになったのは、勘三郎が歌舞伎をもっと広く知らしめたいと考えて、串田和美演出で渋谷はBunkamuraシアターコクーンで「コクーン歌舞伎」なるものをはじめたとき、かつて串田の劇団・自由劇場に所属していた笹野も参加したことから。以降、コクーン歌舞伎以外の平成中村座などにも笹野は参加するようになって、「淡路屋」という屋号までもつほどの本格派に。


2015年、「歌舞伎美人」という歌舞伎公式総合サイト掲載された串田と笹野の談話に、彼が歌舞伎俳優に少しでも近づくために、彼らのように楽屋に先祖の写真を飾ることをしていた(それも先祖を自分が演じたもの)というものがある。そういうところからしても芸に対して真摯な笹野高史だから、落語もそうとう研究して臨んだに違いない。

劇中、笹野演じる文鳥師匠の落語を、お客さん(大人も子供も)も記者(楓〈岡本玲〉)もじつに楽しそうに観る。袖から覗いている藤吉(松坂桃李)とてん(葵わかな)も楽しそう。栞(高橋一生)も笑っている。

とりわけ、藤吉がすごく嬉しそうで涙ぐんでいるところをてんが見て微笑むところが、ふたりの気持ちがひとつになっている感じがしていい。


松坂桃李と葵わかなは正直者で、心から笑っているのがよくわかる。
こういう自然な笑いが毎朝見られると嬉しいが、たまにだからこそ響くのかもしれず。
もしかしたら、「わろてんか」は、笑いとは何か(どんなときに人は笑うのか)を真剣に追求しているのかも。

笹野高史につづき、予告編が盛り上がる


笹野の落語だけでも十分満足だった42話だったが、予告編に風太(濱田岳)とリリコ(広瀬アリス)が出てきて、漫才ふうに次週を紹介する。
彼らは、テレビ東京のドラマ版「釣りバカ日誌」で恋人役(映画だと夫婦だがドラマは主人公の若い頃の話を描いている)を演じているので、登場の頃から注目されていたが、ついに見事なコンビプレーを見せた。
でも、京都に帰ったおトキ(徳永えり)と風太のコンビも良かっただけに、おトキ、カムバックという気もしないでない。

笹野高史は、「男はつらいよ」と並び長く続いた松竹の映画「釣りバカ日誌」シリーズに社長の運転手役でレギュラー出演していた。


42話の功労者は、なぜか「釣りバカ日誌」関係者ばかりという謎を残しながら、ドラマは8週へ。

ちょっと辛口


啄子(鈴木京香)が、新聞記事を読んで微笑んでいる場面が挿入されたが、彼女も寄席を見にきて、子供の頃、藤吉と寄席を見せたことをまたまた思い出して涙するようなシーンがあったら・・・と思うのは、コース料理にあともう一品ほしいと思うような贅沢でしょうか。
(木俣冬)