これまで、トモエ学園の同級生や、教会の牧師様に恋をしてきたトットちゃん(清野菜名)だが、どちらも子どもの恋といった感じで、全然色っぽくならないまま終わっていた。
今週はそんな、まだあまり恋を知らなそうなトットちゃんを取り巻く大人たちが、アダルトな恋愛模様を見せつけている。
愛する二人別れる二人
まずは、トットちゃんの母・朝(松下奈緒)の叔母・えつ(八木亜希子)。
空襲で夫(高田純次)を亡くし、戦後はたばこ屋を経営しているようだが、ひとり身でさびしい生活を送っているのかと思いきや、たばこを吸えないのに毎日たばこを買っていく、ずいぶんと年下の男から言いよられて、交際をはじめる。
そこには、戦争で夫を亡くした未亡人の悲哀みたいなものはまったくナシ。朝に店番を任せて彼氏とデートに行ってしまい、いつまで経っても帰ってこないという浮かれっぷりだ。
一方、せっかく戦争を生き抜いて再会したというのに、別れてしまったのはエミー(凰稀かなめ)とダニー(新納慎也)のカップル。
ダニーは、戦地から帰ってきたのはいいものの、会えなかった6年間でエミーが変わってしまったのが不満のようだ。
「エミーは、オレの腕の中から逃げようとしている!」
「子どもができないのだって、オレを拒絶しているからだ!」
「今の君はオレなんかいなくても生きていける!」
うーん、なかなかのクズ発言。
女性をガッチリ束縛し、いつまでも自分に依存していて欲しいタイプの男なんでしょうな。
ダニーはその後、変わっちゃったエミーに絶望して失踪してしまう。
戦時中は軍でヒロポンを打たれて寝ずに働かされ、戦後はマニラの監獄に入れられていたという極限状態で精神がおかしくなっちゃったのかもしれないけど、それにしてもこじらせすぎ!

守綱を手のひらの上で転がす朝さんがステキ!
そんなヤベエ男・ダニーと、似たような恋愛観を持っているのがトットちゃんの父・守綱(山本耕史)だ。
「おばさん(えつ)はなぜ、おじさんとの歴史を簡単に忘れられるんだ?」
「エミーはどうしてダニーの好きな自分になろうとしないんだ?」
女は一生、オレのことだけを考えて生きていけばいいんだ! ……という、ひさびさに面倒くさくてサイコな守綱節。
ダニーのヤベエ発言に対し、エミーもド直球で言い返してしまうタイプだったため、ふたりは別れてしまったわけだが、守綱だって同じくらいヤベエ発言をしている。
朝と守綱の夫婦が長続きしているのは、朝が守綱のプライドを立てつつも、面倒くさい部分に関しては華麗にスルーして、上手いこと手のひらの上で転がしているからだろう。
「みんな、すぐ気持ちを変えるけど、ボクはずーっとママが好きだし、出会った頃よりも今の方がずっと深く愛しているよ」とドヤ顔で語る守綱に対し、
「今の方が愛してるってことは、出会った頃とは変わったということじゃない?」なんてツッコミを入れることも忘れない。
ダメ男たちから解き放たれる物語なのか?
「女は男に守られるべき存在であって、自立なんてするべきではない!」という、戦前の封建的な考えを引きずっている男たちに対して、女たちは自由だ。
亡くなった夫を吹っ切って、さっさと新しい恋人とイチャつく、えつ。
ダニーの失踪後、シイナさんのカレー屋で働き始め、早々にシイナさんへのアピールをはじめる、エミー。
古い考えにとらわれない女性たちを見てきたトットちゃんが、自立した女性の代表格ともいえる、黒柳徹子となっていくのだ。
そんなトットちゃんの自立への第一歩となるのが、NHKの入社ということになるだろう。
昨年、満島ひかり主演で放送されたドラマ『トットてれび』や、斎藤由貴主演の映画『トットチャンネル』ともかぶってくるエピソードだが、過去の2作では、物語のスタートが入社試験に設定されていたので、試験を通して、トットちゃんがどれくらい天然なのか? それなのにどうしてNHKに受かっちゃったのか!? というあたりに重点が置かれたストーリーだった。
しかし『トットちゃん!』では、これまでの話でさんざん天然っぷりは描かれてきているので、「天然なトットちゃんが挑む入社試験」というエピソード以上に、芸能活動に反対しそうな守綱からNHKを受けていることをいかに隠し通すかという点が細かく描かれていた。
芸能活動に反対するのも、「女は自立なんてしなくてよし!」という考えも根っこは一緒で、要は「女なんだから仕事なんてしないで、さっさと家庭に入って夫のことだけ考えていればいいんだ!」ということだろう。
……必死に説得したわけでもないのに、トットちゃんがNHKに合格したことを知った守綱が、わりとアッサリ入社を認めてしまったのは肩すかしだったが。
今週描かれた、えつの新恋人の件や、エミーとダニーの別離に加え、夫の死によって自由になった朝の母、自らの意志で芸能の世界に飛び込んだトットちゃん……などなど『トットちゃん!』は、面倒くさい男から、解放され、活躍する女性たちの物語なのかも知れない。
遂に、野際陽子役を演じる野際陽子の娘が!
来週はいよいよ芸能界に入ったトットちゃんの話。
予告編で、森繁久彌役の近藤真彦や、渥美清役の山崎樹範(似てる!)、沢村貞子役の浅野ゆう子たちの姿が見受けられ、期待感がグイグイ上がりまくりだ。
そして何といっても、野際陽子役を演じる野際陽子の娘・真瀬樹里! 黒柳徹子自身の願いで実現したキャスティングらしいが、今年6月に亡くなったばかりの実の母親を演じる娘というのは……すんごくエモい演技となること間違いナシだろう。
今の、かわいらし〜いトットちゃんが、どんな風に黒柳徹子化していくのかと併せて見届けたい!
(イラストと文/北村ヂン)
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