連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第7週「笑売の道」第47回 11月24日(金)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:東山充裕
「わろてんか」47話「働き方改革」が「わろてんか」にも影響しているのではないか
イラスト/まつもとりえこ

47話はこんな話


てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)はいろいろ工夫して集客を増やし、明治45年(1912年)、風鳥亭が開業1年を迎える頃、実家から借りた500円を返済するに至る。

ようやく結婚できそう


風鳥亭は、モチーフになっている吉本せいの第二文学館よりも、1年早く開業したことがわかった47話。
いよいよ明治も終わりの年。
7月になると、明治天皇が崩御して、明治から大正に変わる。激動の前の、穏やかな春だ。

遡って47話は、父・儀平衛(遠藤憲一)が亡くなっていたことを知らされたてんがショックを受けるも、翌日は「ゆうべいっぱい笑うたさかい 大丈夫え」と健気に仕事に励むところからはじまる。
「てんのこと頼みます」と殊勝に頭を下げる風太(濱田岳)に、なにやらすっと達観したかのような顔の藤吉。

彼は決意していた。風鳥亭を会社にしようと。

きっと、儀平衛が亡くなったことを知って、男としてもっと頑張って、てんを守っていこうと思ったに違いない。
その決意(会社にすること)をてんと啄子(鈴木京香)に語ると、啄子は「そろそろ結婚してくれまへんか」と言い出す。
「(結婚してたら)お里にも挨拶にいけたのに すまんなあ」と、お父さんが亡くなったのを知らずに、息子の夢のために尽力してくれたてんに心底申し訳なく思ったのだろう。
藤吉も啄子も、てんをこのまま中途半端にさせておくのは良くないと反省したのだ。もっと早く気づいてあげて!

一方、てんはけろっとしたもので(顔で笑って心で泣いてだと思うが)「じつはうちも相談が」と、木戸銭を半値の5銭にする提案をする。
てんはしっかり前を向いていた。
そうすることが亡き父への供養になるだろう。

商売繁盛、人手不足、トキ復帰


入場料を半額にする案を、芸人たちは反対するが、啄子は、みんなが反対するからこそやろうと決意する。
北村家家訓のひとつ「才覚」は勝機を見極め、誰もやってないことをやること。
「勝負に出るときは 思い切った手うたなあきまへん」と啄子。
半額案が成功して、お客さんが増え、興行収入がアップ、風鳥亭が軌道に乗る。

のぼりに「安さにびっくり」と書いてあって、こういうキャッチフレーズ、あるある。
「安さにびっくり」する客によって寄席が繁盛すると、啄子とてんだけでは接客が間に合わなくなる。
人を雇わないと・・・と考えているところへ、京都の藤岡家から暇をもらってトキ(徳永えり)がやって来た。

タイミングよく、お茶子として働くことになったトキはさっそく役に立つ。ざぶとんを小さくしてみたり、塩辛いものを売ることでノドが乾いて飲み物を買うようになる作戦を提案してみたり。
啄子は「あっぱれや」「気に入った」と絶賛。

言いたかないけど、トキがいると状況が拓かれていくような気がする。
一家にひとり、トキがいてほしい。


鈴木保奈美、登場


明治45年、開業1年めにして、500円を返済。
京都に返しに行ったのかと思ったら、お母さんしず(鈴木保奈美)が大阪にやって来ていた。
儀平衛の遺影を抱えて、寄席を見ることに。

鈴木保奈美は、後の「あさイチ」にも出演。
キース(大野拓朗)のことを「無駄にイケメン」と言って、笑わせてくれた。

言いたかないけど


別れ際に風太がてんに「(藤岡家の人たちに)相変わらずゲラで笑てばかりやって言うとくわ」と言っていたが、てんがゲラ(何かと笑う、笑い上戸的なこと)だったのは子供のときだけで、成長してからは、ゲラぽさはないと思うのだが・・・。


才覚で働き方改革を実施しているのか


啄子の唱える商売のコツは、「誰もやってないことをやること」「勝負に出るときは 思い切った手をうつこと」。
「わろてんか」もきっと、思いきって誰もやってないことをやっているのだろう。
例えば、たいてい朝ドラは、前半はしっかり話が構築されているが、後半、台本が切迫してくると、どんなにベテラン作家でも、中だるみしたり駆け足になったり、やや収まりが悪い部分が顔を出す。
今回は、そうならないように、前半は、“働き方改革”で(先日、早くも、朝ドラ100作め、広瀬すず主演の「夏空」が発表されたおり、異例の早い発表である理由のひとつに「働き方改革」があるとの説明があった)、
NHKの労働時間短くなっちゃったのかなと思う部分がある代わり、後半は練りに練った密度の濃いものになって、なるほどこう来たか!と膝を打つような、新しいことに挑んでいるのだと信じて、これからも応援していきたい。
(木俣冬)