
事件の概要
客とキャバクラ嬢として久しぶりに再会した弓神と猿渡(市川由衣)。犯罪から足を洗った元泥棒の猿渡は、児童養護施設で暮らす息子の実(吉沢太陽)と一緒に暮らすことを夢みていた。しかし、その数日後、猿渡は死体で発見される。
手には大金が握りしめられており、元泥棒だった猿渡は、銀行を定年退職した独居老人・沼田徹(小林隆)のマンションに盗みに入って転落したと判断された。納得の行かない弓神は、独自に捜査を行うも、別件の振り込め詐欺事件に駆り出されてしまう。しかし、その詐欺事件に猿渡が関与していたことが発覚する。
弓神らしくない言葉
いつもは羽生(神木隆之介)、前回は菅能ちゃん(稲森いずみ)、そして今回初めて弓神が事件に私情を挟んだ。
「眼を覚ますのはお前だろ。猿渡が窃盗の前科持ちじゃなかったらどうなんだよ。ただの母親だったらこんなに簡単に決めつけないでもっとまともに捜査しているだろうよ」
羽生に捜査を辞めるよう言われた時の弓神の言葉だ。普段ちゃらんぽらんな弓神が熱くなって羽生を説き伏せる姿は胸にくるものがある。これで羽生は考えを改め、猿渡が転落死した事件に本腰を入れる。
ちゃらんぽらん→熱くなる。この図式なんだからもちろん良い。
弓神らしい言葉「ヤッホイ見ているかー?」に込められた意味
だが、熱い弓神よりも僕がさらに感動してしまったのは、いつものテキトーな弓神が、引退が決定したマツリダヤッホイという名前の競走馬について叫んだ一言だ。
物語の導入で、署の面々は老後の不安について雑談していた。そこに弓神が登場「生きる希望を失った」とヤッホイの引退に肩を落とし、「早退する」と帰ろうとする。しかし、上司の菅能ちゃん(稲森いずみ)に「仕事舐めるな!」とケリを入れられてしまう。いつもの弓神と言った感じだ。その後もヤッホイの名前は、事あるごとに登場する。
そして事件解決後、競馬場でのラストシーン、弓神はヤッホイの弟マツリダワッホイのデビュー戦を観に来ていた。弓神は「よーしよしいいぞ!いけいけ!いけいけ!」と馬券片手に応援。見事ワッホイはデビュー戦を勝利する。
「やったー!ヤッホイ見てるかー?」
弓神はヤッホイの引退で悲しみにくれるも、弟のワッホイに新たな生き甲斐を見つけたのだ。
さらに、「見てるかー?」の部分には、死んでしまった猿渡に向けた言葉にも感じる。引退と死は違うが、残された息子の実は全てを乗り越えて前を向いたぞと、それを猿渡見てるかー?と。
「やったー!ヤッホイ見てるかー?」。弓神自身がどう思ってこの言葉を叫んだかはわからないが、見事に今回の話をまとめた一言になっている。よく「笑いと感動を呼ぶ」という謳い文句を聞くが、この弓神の一言は、「笑い“が”感動を呼ぶ」になっていたと思う。
「刑事ゆがみ」も残り2話。予告を見ると、本筋のロイコ事件に2話を費やしそうな感じだ。ということは、一話完結型の「刑事ゆがみ」はこれで終了の可能性が高い。色々な意味でシーズン2は期待出来ないだけに、とても寂しい。
(沢野奈津夫)