
12月の忘年会シーズンが到来し、どんよりとした気分になっている人も多いのではないでしょうか?
忘年会では、仕事以外で関わりたくない人と関わらないといけない、「社内接待」が日常の仕事以上に気を使う、やりたくもないお酌や料理の取り分けをしなければならない、やりたくもない余興をやらされる、受動喫煙をもろに受ける、セクハラ・パワハラが高確率で発生する、お酒は飲まないのに高いお金を払わされる等、ストレスの原因が本当にたくさん散りばめられています。
また、昨年は一世を風靡したピコ太郎の物真似を忘年会の余興でさせられる「ピコハラ」がインターネット上で話題になりましたが、今年はブルゾンちえみさんの真似をさせられる「ブルハラ」が起こりそうということで、戦々恐々としている人は少なくないようです。
ネットのみんなも忘年会に行きたくない
昨年も忘年会への批判をTwitterで展開したところ、バズってライブドアニュースに取り上げて頂いたことがありました。バズるということは、それだけネットでたくさんの人の共感を得たということであり、依然として「忘年会ハラスメント」に苦しんでいる人たちがたくさんいることの裏返しだと思います。
実際に、Twitterで「忘年会」と検索すると、サジェストに「行きたくない」というワードが最初に出てきます。それほどまでに忘年会は嫌われているというのにもかかわらず、いまだにどこの会社でも当たり前に行われている日本の状況を見ていると、企業に対する帰属意識を高めて従業員のモチベーションを上げる日本のモデルが破綻している様子を垣間見ているようです。
もちろん、特に理由が無くとも気軽に不参加を表明できる社風の会社が自主的な忘年会を実施するのは問題無いと思うのですが、それ以外の会社であれば全てブラック企業だと思います。
忘年会の必要性を幹事に問う優秀な社員
一方で、忘年会ハラスメントに対する意識がようやく芽吹き始めた昨今の流れを受けて、一部ではあるものの、忘年会への参加に対する半強制的な雰囲気を弱めようと努力する会社も、少しずつではあるものの耳にするようになりました。
もちろんこれまで忘年会を当たり前のこととしていた人たちからすると、そのような変化は納得が行かない様子です。たとえば、産経新聞でも、幹事からの参加呼びかけに対して「目的は何でしょう?」「業務でしょうか?」と聞いてくる若手社員に対して呆れているコラムが掲載されていました。
「仕事とは関係のなさそうな無駄なことは避ける」という発想から飲み会に対して疑問を持つというのは、私には常識に囚われずに合理的な判断のできる優秀な社員としか思えないのですが、会社への帰属とお付き合いが己のアイデンティティーの根幹を形成している古い価値観の人にとっては、信じられない言動のようです。
飲み会離れを嘆く上司はまだマシかも
ただし、「最近の若者は全然飲みに行かない…」と嘆いているのならば、まだマシな上司なのかもしれません。自分は飲みたいと思っていながらも、結果的には飲みに行かないという部下が望んでいることを選択しているわけですから。上司の側が自重しているのならばその姿勢が評価できますし、仮に上司が誘っていたとしても部下に断られているのならば、部下が断れる関係性を構築していることは評価に値すると思います。
悪いのは、低姿勢ではないために部下が素直な気持ちを話せていないにもかかわらず、飲みに付き合わせている上司たちです。上下関係があったら断りにくいのも当然ですが、そのような相手の心理に対して配慮する意識がありません。残念ながらまだそのような人たちが多々いるのが事実でしょう。
このような上司は、部下から「断ったら悪い評価をされるに違いない」と思われているわけですが、それは単純に信用されていないことが原因です。ところが、誘っているほうはなかなか気がつきません。そのような人はたいてい偉そうにしているので、嫌われていることを誰も教えてくれず、いつまでも部下のストレスの原因であり続けるわけです。
くだらないマナー・因習・忖度だらけの飲み会
また、以前の記事「くだらないマナー・因習・忖度だらけの会社の飲み会は廃止にしよう」でも紹介しましたが、忘年会のような飲み会では因習と化した無駄なマナーや習慣がたくさんあります。
たとえば、大皿に乗った料理を小皿に取り分けることは平等かもしれませんが、個々のニーズを無視しているために、結局食品ロスの大きな原因の一つになります。ブッフェスタイルの場合でも、同じテーブルにいる人たちのために同じ料理を多めに取ってくることは気の利いた良いこととされていますが、テーブルに劣化版ブッフェができるだけであり、大変愚かな行為です。
お酌文化も要りません。自分が飲みたい分だけ自分のグラスに注げばいい話です。にもかかわらず、「上司や先輩のグラスを空にしてはいけない」という事実上のルールさえ存在する会社もあります。神経を研ぎ澄ませて常にチェックを怠らないようにしないといけないのですから、かなり神経をすり減らす仕事です。
これからの新しい忘年会のカタチ
では、これからの忘年会はどのような形が理想的なのでしょうか? 忘年会自体を夜開催からランチ会等に変更する会社が少しずつ増えていますが、それも良い案だと思います。先日、知人の会社が社内だけではなく、ステークホルダー全員を対象に希望者を募る「オープン忘年会」を開催しており、とても良い案に感じました。
また、慰労という本来の目的を達成するためには、年内最終出勤日をプレミアムフライデーのように早めに切り上げて、社内かつ勤務時間内で簡単な労いをするのも良いと思います。
個人の自由を大切にしなければならない時代においても、社員のコミュニケーションを深める手段はたくさんあります。働き方改革が叫ばれている中で、忘年会のような飲み会にもメスが入り、気持ちよく働ける職場が一つでも多く増えることを願うばかりです。
(勝部元気)