1995年10月9日、東京ドームで開催された新日本プロレスvsUWFインターナショナルの全面対抗戦を指す。
史上空前の盛り上がりを見せた世紀のイベントであり、プロレスファンにとって非常に思い入れの深いワードである。
では、逆に悪夢の大会となった10.9をご記憶だろうか?
タイトルマッチのお粗末ぶりに北斗晶がブチ切れた、あのハプニングだらけの大会である。
早すぎたビール瓶暴行も!? 暗黒期を象徴するハプニングが続出!
2004年10月9日、両国国技館大会で開催された新日本プロレスの「PRO-WRESTLER’S BE STRONGEST」。
戦後最大規模の超大型台風が直撃した中での大会だったが、この日はリング上も同じく大荒れ模様。
反則や仲間割れなど、フラストレーションがたまる試合が相次ぎ、その消化不良ぶりに紙コップなどのゴミが投げ込まれる始末。会場の空気は最悪である。
最大の盛り上がりを見せたのは試合ではなく、休憩時間に出戻りの長州力が乱入したこと。
団体批判を繰り返していた長州に対し、反発する選手が多い中でのサプライズ復帰だったが、新日の選手にブーイングが飛び、長州に歓声が飛んでしまうのが当時の新日の置かれたシビアな現状。
暗黒期を象徴する皮肉な出来事だったと思う。
ちなみに、今や滑舌の悪さで有名になった天龍源一郎が、若手で伸び盛りにあった柴田勝頼の頭部をビール瓶でかち割って担架送りにし、反則負けとなったのもこの日だ。
天龍は大相撲出身。連日騒動が続く、日馬富士の暴行事件の真相を勘ぐりたくなるような、早すぎたビール瓶での可愛がりであった。
ボブ・サップに圧勝した藤田に健介がどう挑むか期待されたが……
積もり積もったモヤモヤを吹き飛ばすべく期待されたのがメインイベント、藤田和之vs佐々木健介のIWGPヘビー級タイトルマッチだ。
チャンピオン藤田は新日出身ながらPRIDE始め、総合格闘技の世界でブレイクした格闘技寄りのプロレスラー。
この年の5月には、K-1主催の格闘技イベント『ROMANEX』でボブ・サップと対戦。ピークを過ぎたとはいえ、勝ち星が圧倒的に上回っていた時代のサップを打撃で追い込み、わずか1ラウンドで撃破している。
そのインパクトは絶大であり、名実ともに日本人レスラー最強を体現する位置にいた。
対する健介は、新日退団、伝説の短命団体WJ(記事はこちら)を経て、フリーとなっての2年ぶりの新日マット登場。
妻、北斗晶&まだ幼い2人の息子との「家族の絆」を前面に打ち出し、プロレスラーとしてひと皮むける途中にあった。
リングアナは「観測史上最大の台風22号に負けない!最強が両国で決まる!」とアツい前口上で、ボルテージを上げまくったのだが……。
なぜ最低のメインイベントになってしまったのか?
しかし、試合はわずか2分29秒で終了してしまう。
しかも、胴締めスリーパーホールドを仕掛けた藤田自身の両肩が付いてのフォール負けという、納得しがたい結末だ。観客はブーイングどころか絶句するのみである。
藤田は強さを明確に打ち出したチャンピオンではあるが、プロレスの試合運びは二流。おまけに、新日にはスポット参戦しかしていない。連日、ハードな巡業をこなす他の選手たちからすれば、面白くない存在なのは間違いない。
かといって、総合格闘技で快進撃を続ける藤田の「格」を下手に傷つけては商品価値に響く。
となると、「プロレスが不得手な藤田がプロレスならではの3カウントルールで思わぬ敗北」となった結果自体は妥当なところだろう。
一応、同じパターンを一度はカウント2で返した前フリはあった。しかし、この短時間でそのまま試合を終わらせてしまうのは、あまりに観客不在の悪手だったとしか思えないのである。
観客の怒りを代弁! 北斗晶、激怒の大暴れ!
この異常事態に誰より憤慨したのが、健介を公私ともに支える“鬼嫁”北斗晶だ。2人の息子とともにリングサイドで旦那の戦いを見守っていた北斗が、当時の新日社長に食って掛かる。
「あれでいいのか?ふざけんじゃねーよ、テメーなめやがって!フリーだと思ってなめんじゃねー!」
1歳7ヶ月の次男を抱き抱えたまま、タンカを切って社長に蹴りを入れる北斗。台風以上に大荒れ模様である。
テレビに大写しになったその表情はマジ切れモード。女子プロ現役時代を思わせるド迫力だ。
北斗の怒りは収まらず、インタビュースペースでは「ふざけんじゃねぇー!」を連発し、勝利者トロフィーをも破壊。
観客や視聴者の声を代弁した北斗のむき出しの怒りが、この最低最悪の結末の唯一の救いだったのではないか。
どう対応していいかわからず、オロオロと困惑するだけの健介とは実に対照的だった。
ちなみに、不透明な決着にも関わらず、試合後うっかりコーナーに上って勝利をアピールしてしまった健介に対し、北斗は厳しくダメ出ししたという。
自分の立ち位置、与えられた役割がはっきりとわかっている北斗。後にバラエティ番組で引っ張りだこになるのもうなずけるエピソードである。
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