先ごろ、東京メトロが、東京メトロ沿線の絶景9スポットを紹介する「史上最安の絶景ツアー」なるウェブサイトを公開。「新宿御苑」や「東京カテドラル聖マリア大聖堂」など、よく知っている、あるいは聞いたことがあるようなスポットが並ぶなか、1カ所ものすごく異彩を放つスポットがあった。
東京メトロ有楽町線ほか新木場駅すぐそばにある「木材会館」だ。

知られざる東京の絶景スポット「木材会館」とは
どんな場所なのか、実際に行ってきた。


木材会館の正体は、「東京木材問屋協同組合」のオフィスビルだった。


今回、案内してくれた東京木材問屋協同組合事務局長の中原さんによれば、木材会館は東京木材問屋協同組合100周年記念事業として2009年に完成したものだという。
「木材は日本人にとってはなじみ深く、一般住宅では当たり前に使われていますが、ビルにはあまり使われていません。人口減などにより将来的に木材需要の低迷が懸念されるなか、もっとビルにも木材を使ってほしいという思いから、このビルを建てました」(中原さん)
このビルを見てもらうことで、一般住宅だけでなくビルにもこんなにも木材が使えることを知ってほしいそうだ。
ギスギスした会議も和やかになりそうな会議室
ビルは地下1階、地上7階、高さ35.73m。3~5階には一般オフィスも入居している。案内してもらいながら感じたのが、とにかく落ち着くということ。床や壁に木材が多く使われているため、温かみがあり、ホッと安らげる雰囲気。間接照明が多いのも、やさしい雰囲気をプラスしている。

木材会館の建設に使われているのは、基本的に町の材木屋さんで手に入る国産の規格材のみ。
オフィスには欠かせない会議室も、壁にさくらを使っていると雰囲気がガラリと変わる。

こんな会議室ならギスギスしがちな話し合いも和やかに進みそうだ。ほかに、くるみを壁に使った会議室もカジュアルな雰囲気でかわいらしかった。

なぜ、あみだくじみたいな外観なのか?

角材を組み合わせた外観はなんとなくあみだくじのようにも見えるが、中に入ってみると見えているのはウッドデッキの部分だとわかった。

ウッドデッキからは避難階段にすぐ出られるようになっており、燃え広がりを防ぐために避難階段近くには不燃処理を施した木材が使われている。構造躯体は耐火性能の高い鉄骨鉄筋コンクリート造。燃えやすいというイメージのせいで木材がビルに敬遠されることもあるため、防災対策にはとくに力を入れているそうだ。
利用者からは「森林浴をしているみたい」の声も
木材会館はビルに木材を使えることをPRすることが目的なので、見学も随時受け付けているし、会議室やホールは一般にも有料で貸し出している。

一度使うとリピートする企業や団体も多いそうで、「ここでの講演会は気持ちいい」「森林浴をしているみたい」など、反応もとてもよいとのこと。木材には調湿機能もあるので、物理的に心地よい空間を作るのにもひと役かってくれるのだとか。
7階の大ホール横のウッドデッキはとくに広く、眺望もすばらしかった。

驚くべきデザインの工夫が随所に
木材会館の特長のひとつが、木材の使い方がうまいこと。欲張って木材を使いすぎるとログハウスのようになってしまいそうなところを、木材の使用を絶妙なバランスにおさえることで、木の温かみと洗練されたデザインを両立させているのだ。
ところどころに使われているコンクリートも、木の型枠をあえて残すことで、コンクリートの冷たさがなくなっている。

檜のカウンターを備えたおしゃれな小ホールもある。



事前予約をすれば、誰でも無料で今回のように案内してもらえるとのこと(所要時間約40分)。設計士や建築会社の人をはじめ、公務員や一般の人、ときには海外の人まで、さまざまな人たちが見学にきているそうだ。

外観もかなりフォトジェニックだが、内部も見ごたえがあった木材会館。都会のビルにいることを忘れてしまうようなリラックス空間で、木材の魅力にあらためて気づくことができる穴場の絶景スポットだった。