
腕利きの殺し屋、いきなり女になる!
ウォルター・ヒル。なんといっても監督デビュー作がブロンソンの『ストリートファイター』な男である。
映画は冒頭、拘束服を着せられて精神科医と対峙する医師レイチェルの会話から始まる。どうやら彼女は大きな犯罪を起こし、また彼女のスタッフは全員が射殺されるという事件に巻き込まれたようだ。そこから映画は回想という形で、なぜレイチェルが収監され拘束されたのかを解き明かしていく。
主人公フランク・キッチンは凄腕の殺し屋だ。得意先であるマフィアのオネスト・ジョンからの依頼でラスベガスでの殺しを請け負うフランクだったが、潜伏していたホテルをオネスト・ジョンに襲撃され負傷。意識を失ってしまう。
安モーテルのベッドで目覚めたフランク。全身には包帯がグルグル巻きにされたいような姿に戸惑いながら鏡の前に立つフランクは驚愕する。そこに写っていたのは、女の姿になった自分だったのである! 昏倒していた間に何者かによって性転換手術を施されていたのだ。
自分を女に改造した医師を探し出し、必ず報復を遂げることを誓うフランク。射撃の腕と女の色気を武器にオネスト・ジョンの手下の線からレイチェルの元に迫ろうとするが、そこには周到な敵の罠が待ち構えていた!
腕利きの殺し屋が性転換で無理やり女に! というアイディアの強さでまず先制パンチを入れてくる『レディ・ガイ』だが、映画自体の雰囲気はなんだかまったりめ。ウォルター・ヒル作品だけのことはあり、70〜80年代のアクション映画っぽいゆったりしたテンポの映画となっている。『ジョン・ウィック』シリーズのようなハイスピードでテクニカルな銃撃戦を期待するとちょっと肩透かしを食らうかも。「敵を1人ずつ殺す時は拳銃にサプレッサーをつけるが、大勢を一度に相手にする時はサプレッサーを外して銃声でビビらせる」みたいなインチキくさい銃器豆知識が挟まるのも、なんだか懐かしい雰囲気だ。
濡れ場がけっこうがっちりあるのも『レディ・ガイ』の特徴。手術後に行き場がなくなったフランクは、とあるきっかけで知り合った看護師の女の家に転がり込むのだが、そこでベッドシーンがあるのだ。「中身が男で外見が女の人間と、普通の女のベッドシーンってなんやねん……」という下世話な興味にも一応応えてくれるのである。
ミシェル・ロドリゲスさん、本当に頑張ってください
それにしても『レディ・ガイ』で凄まじいのは主演のミシェル・ロドリゲスだ。男前な風貌と今まで演じてきたタフな役柄から「兄貴」の異名で称えられてきたロドリゲス。
というのも、『レディ・ガイ』のロドリゲスはいろんなことにトライしすぎなのである。フランクが男だった時の姿もヒゲを生やして自分で演じているし、鏡の前で性転換手術を受けた自分に驚愕するシーンではあまりにも良すぎる脱ぎっぷりを披露。アクションシーンも大体自分でやっているっぽい(ロドリゲスは銃の扱いがけっこう上手いのである)。髭面のミシェル・ロドリゲスなんて、まさか生きてるうちに見ることになるとは思っていなかった。積極的に「髭面のロドリゲスが見たい!」と思ったこともないけども……。
さらに衝撃的なのが「男だった時のフランクの全裸」がはっきり映る点である。当然ロドリゲスの頭(髭面)と男性の体を合成したアイコラ状態なのだが、これがものすごいインパクト。なんというか「この時点ではちゃんと生えてまっせ!」というのをめちゃくちゃギリギリの画角で見せてくれるのだ。首から上は髭面のミシェル・ロドリゲスだけど首から下はムキムキのマッチョ、しかも生えている……。エイフェックス・ツインの「Windowlicker」のジャケの逆バージョン、という趣である。
というような、並々ならぬ仕事ぶりを見せたミシェル・ロドリゲス。
【作品データ】
「レディ・ガイ」公式サイト
監督 ウォルター・ヒル
出演 ミシェル・ロドリゲス シガニー・ウィーバー トニー・シャルーブ アンソニー・ラバリア ほか
1月6日より全国順次ロードショー
STORY
腕利きの殺し屋、フランク・キッチン。いつも通りマフィアのオネスト・ジョンから依頼を受けた彼だったが、そのオネスト・ジョンの襲撃を受け意識を失う。目覚めたフランクが見たのは、女の体に手術された己の姿だった。自分を手術した相手に復讐するため、フランクは巨大な敵に立ち向かうが……。
(しげる)