亀梨和也主演のドラマ、フジテレビ系「FINAL CUT」(関西テレビ制作、毎週火曜21時~)が9日にスタート。

パルクールをしている亀梨和也は確かにカッコイイ。
運動神経抜群の軽快な動きは見ていて気持ちが良い。だけど、なぜパルクールをやっているのか、理由を早く提示してくれないと、ただただカッコイイだけのイメージビデオ感が出ちゃう。もう亀梨くんはそんな段階じゃないと思う。
亀梨和也「FINAL CUT」1話「てぇへんだてぇへんだ」藤木直人はどこへ向かうんだ
イラスト/Morimori no moRi

あらすじ


12年前、主人公の中村慶介は、幼馴染の野田大地(高木雄也)と共に、ワイドショー「ザ・プレミアワイド」番組関係者に復讐を企てる。

第1話のターゲットは、プロデューサーの井出正弥(杉本哲太)だ。慶介と大地は、江藤喜美子(矢田亜希子)のリークを元に悪事を隠し撮りした映像を編集して、井出に復讐を果たした。

ラスボス・百々瀬の極悪加減がキャラが濃すぎてよく見えない


井出はハッキリとした悪者だった。ちょっとしたことでタクシーの運転手を怒鳴り散らし、番組のためなら情報操作もいとわず、「どうにでもなるんですよ」と番組の力をチラつかせて困っている喜美子夫婦を脅した。
クリアーな悪、こんな嫌な奴なかなかいない。だが、そんな井出も悪の手先にすぎない。

現段階でラスボス風に描かれているのは、「ザ・プレミアワイド」のカリスマ司会者・百々瀬塁(藤木直人)だ。「放送協会賞 奨励賞」というなんだかスゴそうな賞を受賞した井出さえも、百々瀬には頭が上がらない。まさに最後の敵といった雰囲気を身にまとっている。

しかしこの百々瀬、カリスマっぽいエッジが効きすぎていて、結局どういう方向性の悪なのかがまだ不透明だ。


・クロスワードパズルをしながらの出勤

丁重に出勤を迎えた井出に、百々瀬は開口一番「異性に強く惹かれる様5文字」とクロスワードパズルのヒントを呟き、答えさせる。マイペースっぷりと絶対的な上下関係が描写されていて、百々瀬のカリスマ感が出ているシーンだ。わかる。

・新人の挨拶

企画会議で新人2人が緊張からか取り留めのない挨拶をしたシーン。百々瀬は若干食い気味に、笑顔で「はい、拍手~」と2人をテキトーに称えた。「どうでもいい奴の話は聞きたくもないし、注意するのも労力」と考えているのが伝わってくる。
わかる。悪いカリスマっぽい。

・生放送でのアクシデント

スタッフの不手際によりVTRの準備が間に合わず、生放送の冒頭から「繋いでください」とムチャ振りされた百々瀬。放送開始するも押し黙りカメラを見つめる。予測不能の行動にスタッフには緊張感が走る。やっと口を開いたかと思えば、急にアカペラで愛の賛歌を歌い始める。
しかも、ちゃんとフランス語バージョンで。

訃報の大物歌手に捧げるために歌っていたのだ。作中の視聴者やスタッフからは、「すごい!」「なんていう気の効いたアドリブ!」と褒められていたのかもしれないが、訃報と言われても、初登場の歌手の死は、ちょっとピンとこない。リアルの視聴者からすると、どうしても、微かに面白い。これで百々瀬は「カリスマ」という印象から、「カリスマが過ぎてぶっ飛んだ奴」になってしまったと思う。

・てぇへんだてぇへんだ

井出が慶介に脅されて喜美子夫婦に謝罪したことを会議で発表すると、百々瀬は激怒して井出の「放送協会賞 奨励賞」のトロフィーを叩き壊す。
その場にいた誰もが悲鳴を上げることも許されずに身をすくめた。百々瀬の番組での立ち位置が明確に描かれた。

しかしその直後、百々瀬はなぜか「さぁてぇへんだ!てぇへんだ!」と瓦版屋の口上を再現、1分半にも渡り大演説を始める。「ザ・プレミアワイド」が瓦版を謳っているところからの瓦版屋の口上なのだが、そんな理由はどうでも良くなるほどにブッ飛んでいる。

「怖くて凄い人」なのか「ブッ飛んでいて面白い人」なのか、そういう意味では、これだけキャラの濃い百々瀬は、いまだ不透明とも言える。今後はどっちに振れるのか、または両立しながら最後まで突っ走るのか、ボス的存在の百々瀬だけに、そこが物語を左右しそうだ。


社会派ドラマとミステリードラマが分断


現時点で、慶介の敵は大きく2つだ。百々瀬率いる「ザ・プレミアムワイド」と、もう1つは母親が疑われた「女児殺害事件」の犯人と見られている、「小河原法律事務所」の小河原家だ。

容疑者として浮上しているのは長男の祥太(まだ顔が出ていない)なのだが、妹の雪子(栗山千明)も若葉(橋本環奈)も、当時、祥太をかばうような言動をしているため、小河原家全員が慶介の復讐の標的となってもおかしくない。

復讐劇に変わりはないが、対ザ・プレミアワイドの時は報道のあり方を問う社会派ドラマ、対小河原家の時は犯人を探すミステリードラマといったように、復讐相手によってジャンルが少し変わってくる。

この2つの標的が手を結んでいるのか、それとも全くの無関係なのか、これに新宿中央署副所長の高田(佐々木蔵之介)などの警察陣が絡んできたとき、物語は大胆な展開を迎えそうな気配がする。

(沢野奈津夫)