連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第17週「ずっと、わろてんか」第92回 1月22日(月)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博
「わろてんか」92話。藤吉の余命でドラマを引っ張る展開
イラスト/まつもとりえこ

92話はこんな話


病気が回復した藤吉(松坂桃李)は、新しい笑いを求めて、アメリカに勉強に行く決意をする。
ところが・・・。


それぞれの夫婦の形


92話は夫婦回。

トキ(徳永えり)と風太(濱田岳)が結婚した。
だが、風太は「飯」「寝る」ばかりだとぼやくトキに、藤吉は、膝枕で耳かきをして、たまには甘えさせてあげるといいと助言する。
そして、出かける藤吉に、てん(葵わかな)が世話を焼きだし、

てん「やりたいさかいやってるんです」
藤吉「あ、そう」

男は素っ気ないものだけど、内心では世話されたいと思っているわけですね。
この「あ、そう」の言い方が、素っ気ないからこその長年連れ添った独特の信頼感みたいなものがある。
こういうナチュラルな芝居をやらせると松坂桃李は抜群だ。

そして、冒頭のおトキのむかむかは、妊娠のむかむかだったことが判明する。

おトキは何歳なのか? 確かてんと同い年くらいだったはず。てんは1902年で9歳だから、昭和4年の1929年で36歳。トキはこの時代にしては、高年齢出産かも。応援したい。

もう一組の夫婦。
吉蔵(藤井隆)と時子(枝元萌)。

吉蔵の文才が注目され、新聞で小噺を書くことに。
どんな仕事でも、時子は夫を応援する(あんたの尻を叩き続けるだけ)と感動的な展開に(でもオチはどつかれる)。

こうして、それぞれの夫婦の形を書いたあと、藤吉の左手に異変が・・・。
病気して左半身が麻痺したのをリハビリして回復したものの、その後、バリバリ働き過ぎて、無理がたたったのか。
母(鈴木京香)を頼ってアメリカに行こうと張り切る矢先に・・・。

やられた。
夫の余命でドラマを引っ張る展開は、これからだった。
そういえば、「あさが来た」(15年)も、モデルとなった人物の史実では、夫が主人公より先に亡くなるが、いつ亡くなるのかとやきもきさせながら、最終週まで引っ張ったのだった。

今日の、目くじらポイント


長い連続ドラマでは、時々出てくるキャラがいる。

まずは何かと便利な楓(岡本玲)。てんの恋敵から新聞記者になった彼女は、今回は、万丈目に原稿を頼む役割を担っていた。

そして、予告ですでに出ていた、啄子(鈴木京香)。元祖ごりょんさんがいよいよ再登場する、その前フリとして、アメリカで再婚してクリーニング店をやっていると、てんの台詞で語られる。

さらに、親戚と世界一周旅行しているという手紙が来て、啄子さん、どれだけお金もっているのか驚きの連続。

てんの実家といい、啄子といい、離れた家族のやりとりがほとんど描かれないことは、「わろてんか」目くじらポイントのひとつ。
視聴者の多くは、連絡を取り合わないのはおかしいと、ネットで指摘する。
「わろてんか」の離れた家族の登場の仕方が、唐突過ぎることは確かだが、そこはドラマってことで。
“家”が大事な時代、家を継がずに別の家をもったら、関係はドライになるのかもしれないし、
むしろ、世の中、核家族が主になっても、そんなに血縁とのあたたかく密な関係性を大事にしているのか謎だ。

今日の、わろ点


久しぶりに、わろ点も書いてみる。


妊娠を報告に来た風太とトキの神妙な顔に、

てん「もしかして・・・」
藤吉「夫婦別れするんか」

大ボケをかます藤吉。
お約束ではあるが、松坂桃李が狙わず、ほわんと素朴に言うので、おかしみがあった。
このままおとぼけキャラでいってほしい。
(木俣冬)