連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第17週「ずっと、わろてんか」第94回 1月24日(水)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博
「わろてんか」94話。鈴木京香ハデに再登場、おお、ブラック藤吉覚醒か(違った)
イラスト/まつもとりえこ

94話はこんな話


藤吉(松坂桃李)のお母さん啄子(鈴木京香)が、世界一周旅行の途中で訪ねて来た。

ごりょんさんのサプライズ


てん(葵わかな)が寄席の番組づくりをしていると、キース(大野拓朗)とアサリ(前野朋哉)が、銭湯から帰って来た。
一日何回も風呂に入ってネタ集めした挙句、それをまとめるのはしんどいと音を上げる彼らをみかねた
てんは、万丈目(藤井隆)に書いてもらうことを思いつく。


その頃、「アイムホーム」「サプライズや〜」とすっかり洋装が板についた啄子がやって来た。
動作がさらに大きいのは、アメリカナイズされている設定であると同時に、昨年10月〜11月にかけて、玉木宏と共演した舞台「危険な関係」に出演していたからではないだろうか(93話に台詞で久々登場した新一兄さん役の千葉雄大も出演していた)。

羽振りがよく始末がしっかりしてるのでカリフォルニアに12軒店を出しているという。
女性向けのネタへのアドバイスをして、「さすが 元祖お気張りやすやなあ」と万丈目たちを感動させる。

突風のごとく、ハデに振る舞う啄子さん。
どうやら、彼女が突然やって来たのは、藤吉が倒れたと聞いたからのようだ。

それを最初に切り出さないのは、気遣いからであろう。

入院中のてんの働きに感謝し、(自分が死んだら)「スマイルやで」「わろて送ってな」と、
「笑いの大切さを教えてくれたのはあんたや」
「アメリカではいろんな人間が集まって暮らしている 笑顔だけはみ〜んな一緒」と言う。

名場面は縁側でできる


アメリカと日本、この時代は現代と比べたら、ものすごく遠い。
啄子も年だし、藤吉も病に倒れたし、これが最後の別れになるだろうと覚悟しているように思う。

孫の隼也(大八木凱斗)も交え、ご馳走を囲んだあと、
秋の月を見ながら、啄子と藤吉はしみじみ語り合う(てんも聞いている)。

「おおきにな いまのわてがあるのはあんたのおかげだ」と言い出す啄子。
広い世界を自分の目で確かめてほしいから、アメリカに来るように、息子に希望を持たせる。

「天下一の息子や「天下一のお母ちゃんや」とふたりは讃え合う。
最後に、藤吉は「ほんまにありがとうございました」と深く深くお辞儀する。

鈴木京香が活躍していた米問屋時代も、彼女の情感あふれるお芝居によって、ドラマが締まっていたが、
ほんの1話出ただけで、空気がガラリと変わった。

だが、これ、永久の別れ、パターンな気がする。
てんとてんの父(遠藤憲一)との別れも、実家の縁側だったから。

名場面は縁側でできる


物語とはいえ、人が死ぬのを待つのも、本当にどうかと思うのだが、藤吉の体調は悪化している様子。

頭がキーンってなって、うずくまっているところに、風太(濱田岳)が話しかけてくるが、元気を装う藤吉。でもその顔には、暗い影が。
松坂桃李には、こういう顔に影がかかる場面が似合う。俄然、ハマってきた。
でも、病気というよりは、なんらかの作用によって、ブラック藤吉が覚醒を始めたシーンかと思ってしまった。
実際、これから、松坂桃李は、映画「不能犯」(2月1日公開)、「娼年」(4月6日公開)とダークな世界観の主演作が続々上映されるので、そのイメージはあながち間違いではない。

このまま「わろてんか」からの退場よりは、“闇の藤吉”と“笑顔(太陽)てん”との戦いをはじめてほしい。
(木俣冬)