ホークス松田宣浩が語る同僚とのコミュニケーションと打撃 リアル野球BANは難しい!?

2017年のクライマックスシリーズを破竹の勢いで勝ち進み、ついには日本シリーズに進出した横浜DeNAベイスターズ。その勢いをもってしても、福岡ソフトバンクホークスの強さには敵わなかった。
そんなホークスのムードメーカーとして、チームメイトだけでなく観客の心にも火をつける存在となっているのが松田宣浩選手(34)だ。2014年から昨年まで同球団の選手会長も務め上げた。
今回は松田選手に、同僚とのコミュニケーションについて語ってもらった。また、松田選手を始めとするホークス主力メンバーで挑んだ「リアル野球BAN」についても話を聞くことができた。


松田選手が考える「チームワーク」の本質


今季のホークスは、日本一連覇を目指してキャンプ初日から気を緩めることなく、全選手が精力的に汗を流している。ホークスの強さの理由として、個々人の意識や能力の高さもさることながら、チームワークの良さがあげられる。ホークスは選手の仲が良く、役割の違いから分断しがちな投手と野手の間にも隔たりはないという。

そう指摘すると、「いいですね。まさにそこです」と松田選手。

「よくチームワークと言いますけど、そもそもチームワークとは何かと言うと、『助け合い』だと思うんですよね。プロなので全員頑張りたいと思って試合に出ているんですけど、勝つか負けるかの差はチームワークの差だと。ピッチャーが打たれた時はバッターがカバーしてあげるし、バッターが打てない時はピッチャーがカバーする。この助け合いの精神だと思うんですよ。
それがハマると強い。逆にうまくいかないとズルズル負けることになる」

松田選手がチームワークの大切さを身をもって体感したのが、オリックス・バファローズと優勝争いを繰り広げた2014年シーズン終盤のことだ。9月になってなかなか白星がつかず、2位オリックスとのゲーム差が縮まるなか、負の連鎖を止めるために五十嵐亮太、細川亨、内川聖一ら3選手の力も借りて、選手だけのミーティングを開いた。
どうやってチームを立て直すか腹を割って話し合い、皆であらためて同じ方向を向こうという狙いがあったという。
ミーティングの効果もあって立ち直ったホークスは、オリックスとの直接対決を松田選手のサヨナラ打で制し、シーズン優勝を決めた。
ホークス松田宣浩が語る同僚とのコミュニケーションと打撃 リアル野球BANは難しい!?

チームメイトとのコミュニケーション面で自身が心がけていることを聞くと、意外な答えが返ってきた。

「同じ目標に向かっていくだけでいいと思います。仲良くする必要はない。アマチュアならいいと思うんですけど、プロなんで。内野手なら内野手間でライバルだし、バッターとしては打順争いもあるし、そういった意味でそこまでチームメイトと仲良くする必要はない」

熱男のイメージを覆すクールな答え。試合中にベンチで率先して行っている声出しも、意識してのことだと話す。
「まあそれも導き出した答えのひとつで……。
勝ちたい! 優勝したい!という目標へ向かうなかでの僕の役割はそれかなと思ってやっています」

また、チームの後輩との付き合い方は、言葉でなく背中で語るタイプ。前回の記事では、失敗した時に気持ちを切り替えて前に進む思考法について話してくれたが、それを後輩に教えたり、失敗した若手へのケアをしたりはしない。一緒にご飯に行くことはあっても、野球の話題は出さずリフレッシュに専念するという。

「そういうのって、他人が教えるべきものじゃないと思うんですよ。自分で感じるものだと思うし、それができているのが試合に出ている若手選手なのかなと。やっぱり、試合に出させてもらっても結果が伴わない選手は反省もしない。
最悪な状態に陥っていたら言うけど、自分で見つけるのが大事だと思いますね。僕もそう教えられてきました」


チームメイトやスタッフも“打撃コーチ”に


逆にチームメイトは松田選手をどう見ているのか。
自著『松田宣浩メッセージBOOK マッチアップ』には、チームメイトが松田選手の印象を語ったコラムが掲載されている。内川聖一、本多雄一、柳田悠岐選手などが口を揃えて「頼りになる」「チームを引っ張っている」と明かしているが、長谷川勇也選手のところに気になる記述があった。
長谷川選手いわく、松田選手はチームメイトに「さっきのバッティングどうだった?」と聞きにいくことがあるが、参考にしているように感じられないため「あまり聞いてないんじゃないか」と思っているという。

「いや、聞いていますよ。僕は感覚の人間なんで、いろんな人間の感覚を聞いてます。
もちろんバッティングコーチもいるんですけど、選手だけじゃなくて裏方さんとか違う感覚の方にもどうなってる?と聞いていくと、新鮮な意見がスーっと耳に入ることがたくさんあるんですよ。だから僕にはバッティングコーチが十何人もいますね」

それは情報の取捨選択が難しいのでは……。

「いや、もうその時の状況だけです、ハイ」


「ケンケン打法」は「リアル野球BAN」と相性が悪い?


続いて年始に放送された『夢対決2018 とんねるずのスポーツ王は俺だ!! 5時間スペシャル』に出演した際の感想を聞いた。同番組の野球対決「リアル野球BAN」は、とんねるずの石橋貴明さん率いるチームと現役プロ選手チームが対決する名物企画となっている。

2016年に侍ジャパンのメンバーとして出場したことがある松田選手は、今回は内川選手、柳田選手、今宮健太選手、中村晃選手とともにホークスの一員として参戦。勝利を収めたが、実力差を埋めるため導入しているピッチングマシンを相手に8打数3安打2打点という成績だった(前回は11打数5安打3打点4三振)。

松田選手はなぜ苦戦するのか。もしかすると、人間と違ってピッチングマシンは完全に投球モーションが一緒だからなのか。それともデータがないからなのか……。そう疑問を投げかけたが、普段から打席ではあまり投手の腕の振りに意識を置かず、タイミングと感覚だけで打っているという。たしかに、どの球種でも腕の振りが変わらないと評価されているオリックスのエース・金子千尋投手を相手に、昨年は本塁打2本を含む21打数7安打と得意にしている。

理由は、松田選手が「前手ギュン打法」と命名(ケンケン打法とも)した独特の打撃フォームにあった。プロでも多くの選手が取り入れている、後ろ側に重心を残して体の回転で打つバッティングと違い、松田選手は体を前に突っ込ませ重心の移動で打つタイプ。

「前に行きながら打てないんすよ。打とうとすると、どこかでタイミングがずれるので」

放送のなかで石橋さんは、松田選手について「ストレートが打てない」と分析していた。

「ストレート好きなんだけどね(笑)。人間の投げるストレートであれば打てます。ただあのマシンが独特なんでね。攻略が難しいです」


今年の目標は継続することに重きを置き、チームの2年連続日本一、4年連続全試合出場、6年連続ゴールデングラブを掲げている。

「継続してそれを達成することができたら、またバッティング面などで新たに得るものがあると思うんですね。まずそこに重きを置いていこうかなと」

先日はキャンプのシート打撃でチーム1号を放った。若鷹軍団を引っ張る熱い男は、まだまだ進化の途上だ。
(茶柱達也)